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楡木の下で

楡木はそこにある

静かにただ一本立っている

彼はそこに住んでいる

木に登り幹に背を預け

木陰の中で歌を歌う

彼が歌うと

楡木はおかしそうに葉で音を鳴らす

そうして時期に歌うのやめると

あたりはすっかり静かになる

静寂の中

夜が訪れる

闇はゆりかごのように

眠りに誘う

閉じかけた目蓋を薄く開くと

彼が近づいてくる

双子の彼ら

もう一人の彼だ


彼がわたしの手を取ると

安らぎが訪れる

恐怖などなかった

楡木の下で眠りについた

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