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メッセージ

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 「メッセージ」という映画はとっくに紹介したと思っていたのですが、過去と未来がつながって、下書きのまま捨ててしまったのかもしれません。もう一度書きましょう。

(少しだけネタバレします)

 邦題は「メッセージ」ですが、英題は ARRIVAL (到来)、テッドチャン( Ted Chiang)氏の原作短編小説では「あなたの人生の物語(Stories of Your Life and Others)」です。まず、「メッセージ」という邦題はとてもよくこの映画の切り口を表現していて、ARRAIVAL というSFにありがちなタイトルよりもいいなと思うのですが、たぶん「宇宙からの襲来」などというこれまたありがちな邦題のほうが興行成績は良くなったでしょう。

 世界の12か所に突然宇宙船が現れます。宇宙人(6本足なので、ヘプタポッド)がなぜ来たのか目的はわかりません。攻撃してしまえといった乱暴な意見も出ますが、アメリカ軍の要請を受けた物理学者と言語学者がタッグを組んで、何とかしてコンタクトしようとする。それが、まさに「メッセージ」というタイトルで表わされています。SFによくある宇宙船レーザー兵器バトルも、狡猾そうな宇宙人の塩酸まみれの唾液も出てきません。緊張感はすさまじいのに、恐ろしいことはあまり起きません。

 一つ目の面白ポイントは、宇宙人の使う「ことば(logogram)」が徐々に解明されていくことです。われわれ地球人のことばはたいていが始まりと終わりをもっていて順序があります。しかし、彼らは円環の文を作るのですね。始まりも終わりもない。その絵のような文字が、言語学者によって解明されていきます。私たちの知っている「言語」というものと、全く異なる体系、形式をもった「メッセージ」です。思考は言語の影響を受けます。最近、X(旧Twitter)で「小3女子かのちゃん「心の中で考える時、言葉を使うけれど、言葉がなかった時はどうやって考えていたんですか?」」というNHK子ども科学電話相談を紹介するツイートが話題になりましたが、これを考えることと、この映画の主題の一つはつながっています。

 全く異なる形式の言語で考えると、どのような認識に到達するのか。それがこの映画の2つ目のテーマです。そして、この2つ目のテーマは、映画が始まったところに出てくる理解しづらい映像、はさみこまれる回想シーンのような映像に、全体としてその「流れ」の中で位置づけられています。この第2のテーマを理解できなければ、この映画の意図を掴むことは困難でありましょう。ですから、難解な映画であるとして好き嫌いがわかれるのもやむを得ない。かくいう私も、3回見ましたからね。


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