見出し画像

テレビCMの新時代が始まった。

テレビCMの第三の選択肢、ASS*(アドバンス スポット セールス)開始から2年、当初からこの新しいCMバイイング方法に注目し、2019年4月に「枠ファインダ」が採用されてからは実際にクライアントにもご活用いただいている。ただ、枠ファインダをそのまま利用するだけでなく、(株)デジタルインテリジェンス(以下、DI.)独自の活用方法も模索してきた。当社はデジタルマーケティングのコンサルティングを生業としている。その中でテレビセカンドオピニオンとして従来の視聴率以外にも、サードパーティが提供する「CM視聴率」や「視聴質データ」など、幾つかの新しいテレビ視聴データを用いてこれまでに無い分析レポートやテレビCMの活用コンサルティングなどを数多く提供してきたからだ。

*ASSは2020年2月にSAS(スマート アド セールス)に名称変更されました。(以下、SASと表記)

SASの詳細はこちらでご紹介しています。

SASはコンサルティング会社としても悩ましかった「欲しい枠」を実際にそのまま買えることが本当に素晴らしい。分析すれど打つ手なし、故に分析もどんどん曖昧になる。そんなことの繰り返しだった広告主の方には、ぜひSASを試されてみることをお勧めする。

実はテレビCMは非常に安定した特性を持っている。例えば住宅メーカーがM2(男性35〜49歳)をメインターゲットにスポットCMを行う場合、全日型のCMプランでM2含有率は概ね45〜50%、少し%コストを上げて逆L型にすると55%前後までは獲得できる。(ここでの含有率とはM2視聴率を世帯視聴率で割った数値)投下GRPが過少の場合には少しブレが生じることもあるが、一定以上の投下量では大きな差は出ない。逆にいえば、従来のプランニングのままでは含有率は大きく改善されない。デモグラは比較的規模が大きいため含有率が平準化されるという側面もあるが、既存のCM取引では「欲しい枠」、つまりM2含有率が高い枠だけを買える訳ではないので、高低差が相殺されて一定の範囲に収まる。

しかし、実際の個々の枠(番組やCMタイミング)のM2含有率は20〜80%とその幅はかなり広い。図1は在京5局のM2平均含有率が50%以上で、年間のバラつき(偏差)が小さい時間帯の当社独自の比較表である。局ごとに特徴が少し異なるのがご理解いただけるだろう。「含有率」は個人全体視聴率や実数ベースでも指標化するが、いずれにせよSASではこれらの枠を直接選択してバイイングできるのである。(SAS枠は毎月変わり、在庫も常に変動する)

図1

画像1

DI.では「テレビCM×デジタル広告の統合プランニング」として、デモグラ視聴率以外にもSAS内で利用可能なVR CUBICデータなども使用する。例えば、自動車興味関心層から「普通車」と「輸入車」をそれぞれ500GRPでバイイングする場合。シミュレーション%コストは普通車セグメントが141,000円、輸入車が144,000円となる(2020年2月枠)。個人全体視聴率500GRPの場合は137,000円なので、輸入車が一番高くなる。(輸入車>普通車>個人全体)しかし、実際のCMプランでは土日枠が共に高い接触率(視聴率とほぼ同意)の普通車と異なり、輸入車では効率が低下する土曜日の昼間(8時〜17時)の枠を排除することができる。輸入車興味層が土曜日には必ずゴルフに行くとは考えてないがデータで効率が悪いことがわかる。個人全体視聴率やデモグラ別含有率だけでシミュレーションする場合とではCMプランもまたさらに変化する。そして、この「興味関心属性」のままテレビCMがバイイングできることが非常に重要である。

これまでテレビCMに限らず広告業界ではデモグラという間接的なターゲティングを行ってきた。ブランド側はターゲットプロフィールを作成したり、ライフスタイルや意識クラスターなども設定したりするのだが、メディア選択・バイイングの時点で、あるいは到達評価などを行うためには間接的なデモグラに一度変換しなければならなかった。しかし、SASでは連携される各種データから最適な枠を直接バイイングできる。当然、テレビCMはメインターゲット以外の周辺層にもリーチするので%(パーセント)から実数把握をすることで、メインとサブ、各ターゲットの評価指数を設定し、「総量価値」を試算してバイイングができるようにもなってきた。

かたやデジタル広告では興味や意識などのデモグラではないターゲティングでバイイングすることがすでに可能であった。しかし、より大きな予算を投下するテレビCMが、これまではデモグラでさえもバイイングできなかったため、テレビCMとデジタル広告を統合評価することはもちろん、プランニング時点でのアロケーション基準も曖昧になり、結果テレビCMとデジタル広告との統合はなかなか進まなかった。SASの登場は、この「テレデジの統合戦略」を推し進められる絶好のきっかけとなると考えている。

図2

画像2

DI.ではSASに搭載される標準的なデータをそのまま利用するだけでなく、従来はデジタル広告でしか使用できなかったセグメントをSAS側に連動させたり、SASのセグメントをそのままデジタル側でも活用できるようにしたりすることを行っていく。テレビCMとデジタル広告を「同一セグメント化」することは、テレデジ投資効率の比較面でも、運用面においてもよりわかりやすくする。

最後に、DI.がテレビCMにおいて正しいオプトインのパネルデータに拘るのは、企業の善良な広告活動では消費者が嫌がることはしてはならないという上位の理念からである。(テレビ視聴データと個人プロフィールを勝手に繋げることには問題が多い)まずはCMプランニングの精度を高め、GRP過多によるオーバーフリークエンシーなどを削減し、テレビやテレビCM(広告)離れを避けねばならない。その面でもSASを活用していきたい。


*本noteはGALAC 2020年3月号特集「劇変!視聴率 変革!広告ビジネス」(放送批評懇談会発行)への寄稿を再編集・加筆したものです。

画像3

Programmatica Inc.  
Yoshiteru Umeda


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?