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嘘と真実 MOAIは言う。妖精のことだ。誰にも罪はない。 レター5

2020年4月24日金曜日 22:35。僕は戸惑っている。いったいなぜそんなことがおこなったのだろうか。はじめは、MOAIが僕の飲んでいるお酒が欲しいというところからだった。キンミヤとホッピーの組み合わせが痛く気に入ったようで、僕とMOAIは二人で飲み続けた。確か、19時過ぎからだったと思う。もう、かれこれ3時間前の話だ。

程よく酔った僕が、妖精なんていないさ、お前は僕のココロだろ、と言ったのがきっかけだった。だってそうだろ、妖精なんているわけがない。いや、正確にはMOAIの妖精なんているはずがないのだ。めちゃくちゃすぎるじゃないか。100歩譲ってサンタだろ、と言った記憶もある。

いつものように馬鹿にした目で僕を見て、娘たちと、奥さんに、この人はココロが淀んでいる、とかなんとかを言いながら僕を批判した。それが何がどういうことでMOAIがいつ、その話を始めたのかは覚えていない。

でもMOAIが話し終わったとき、僕は茫然とした。妖精はいたのだろうか? 

我に返ったときには、キンミヤは一本、空いて、ホッピーの瓶が7本転がっていた。子供たちはもう布団に入り眠りこけている。浴室からは妻の鼻歌が聞こえてきていた。

22:19。僕はその記事を見つける。すぐにTwitterにツイートする。「コンティグリー妖精事件について 最後の1枚は本物だったのか」

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https://twitter.com/umebosh16309229/status/1253674707552894976?s=20

信じることができるかと言われれば、僕は素直には受け取れない。でも、もしかすると僕は大切なことを見過ごしているんじゃないかと思う。

「なあ、ほんまなんか~。ぜんぜん、信じられへんわ~。ウソちゃうん。なんもかんも。フェイクニュースちゃうん。なあ~、MOAI、答えろよ」。

「U、UMEKOSHIくん。わ、わかるとおもうけど、う、嘘はい、いけない。そ、そんなのせ、正論す、すぎる。せ、正論は、つ、つまらない。そ、そして、だ、誰もす、すくわない。ウィッ」

僕はおとなしく聞いている。MOAIは続ける。酔っているのか饒舌だ。

「ウィッ。い、いいか、U,UMEHOSHI。ウィッ。ゲフッ。エルシーと、フ、フランシスは、よ、妖精とあ、遊んでたんだ。か、川にう、映るす、姿をみてたり、は、花を、ウィッ。は、花をだね。あ、あつめあいっこ、し、してたんだ。ス、ステキな、あ、遊びだ。ゲフッ」

MOAIは夕食の残りのポテトをかじっている。ポテトが好きなのか、ポテトばかり食べている。

「た、たのしいことは、き、共有したい。だ、だろ。お、お前たち、に、人間は。『い、いいね!お、押してね!』。だ、だろ。ゲフッ。ゲフフッ」。

浴室から上がってきた僕の妻に、次はマッシュにしてくれないか、とMOAIが言う。妻は、ごめんね、マッシュが好きだったんだ。次からそうするね。もっと早くいってよ~。とかなんとか、ブラジル人にでも話しかけてるみたいに果てしなく陽気な声でMOAIに返事を返す。僕はそれを見ながらNHKの報道をみるみたいに無表情でやり過ごす。それから、携帯を手に取り、立花孝志を検索してコメントをとにかくリツイートする。23:09。また今日が終わる。

「か、彼女たちはお、大人たちに、き、共有したかった。た、たのしい、よ、妖精とのま、毎日を。そ、それだけ。で、でも。だ、だれもしんじない。グフッ。だ、だから、ち、ちょっと、さ、さいくし、したんだ。そ、それに、ド、ドイルはスキだった。グフッ。グブブ。ウッ、ウッ~。ふ、二人も、よ、ようせいもな」

「コナン・ドイルはさあ、なんで、あの写真を信じたん。推理作家やろ。それにいい大人や。少し考えりゃわかるやん」

「あ、あほ。U,UMEUME。ドイルさんは、し、しってたわ。よ、ようせいのし、しゃしんが、さ、さいくされたなんて。グフッ。わ、わからんや、やっちゃな。よ、ようせいが、お、おったらあかんのか」

「別にかまわんけど。妖精がおろうがおるまいがどうでもええ。でも、ええ大人で、影響力あるやつが、おるで、っていうたらそら世界はざわつくやろ。迷惑な話やないか」

「U,UMEKUSO。え、ええか。も、もうい、いっぺんい、いうぞ。グフッ。よ、ようせいとフランシスと、エ、エルシーはた、たのしかったんや。し、しあわせやったんや。ガフ~。グッ。だ、だから、い、いいね!、してほしかった、それだけや。だ、だからド、ドイルさんはい、いいね!した。グフッ」

「だから~」

「お、オイ。UME!き、きけ。よ、ようせい、お、おったらあかんのか?」

MOAIは顔が真っ赤だ。もう酔いがまわっている。奥さんがMOAIの頭を撫でている。馬鹿なのこの人は、という目で僕を時々みる。訂正する。救いようのない馬鹿なのよ、という目だ。

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もう寝ようよ。23:28やし。明日がきてしまう。僕はノートパソコンを持ち、自分の部屋に逃げるように入る。

妖精がおったらあかんのか?。知らんがな。だけどなあ。おまえみたいな妖精はいらんねん。

妖精がおったらあかんのか?。知るかボケ。おまえみたいな醜いMOAIはいらんねん。お前はなんでおんねん。渋谷のMOAIのほうがええわ。小さかったらやけどな。

妖精がおったらあかんのか?やと。妖精がおったらなんかあかんのか?。

妖精は何のためにおんねん。何のために存在しとんねん。クソッ。

なんやねん。おれはなんのために……。クソッ。クソッ。クソッ。

マル秘:妖精の生態報告3、「妖精がいいやつとはかぎらない。クソ野郎であることもある。また、酔うと僕の名前を間違えまくる。関西弁で話はじめる。人の妻を奪うオワコンである」

23:54。美女と野獣が民放放送されたからだろう。twitterのトレンド1位になっている。235,543件のツイートだ。美女と野獣の恋愛がみたけりゃみればいい。もう勝手にしろ。

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姉妹はきっと、自分たちの経験を信じてもらうためにほんの少し嘘をつけ足した。でも結局、それが彼女達をくるしめることになった。僕は、

よろしくお願いします!