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私のジャマイカ旅行記

 今から13年前、私は友人と2人でジャマイカ旅行へ行った。当時24歳、若気の至りという言葉そのままにノリと勢いだけで決めた旅行だった。
 友人も私もそれぞれ何度か海外には行ったことがあり、一緒に海外旅行をしたこともあった。「今度どこ行く?」「せっかくだからちょっと冒険してみたいよね」そんなやり取りをしながら、お互い南国が好きなことと私が大のレゲエ好きであることから行き先はジャマイカに決定したのだ。
 レゲエの本場ジャマイカに行くなんて、レゲエ好きとしては誇張ではなく本当に天にも昇る心地だった。出発するまで「女の子2人でジャマイカなんて危険すぎる!」と周囲から反対されたりもしたが、ジャマイカ旅行への想いはそんなことでは折れなかった。
 費用や移動時間の長さや現地の治安など、今だったら周囲の心配も理解できるし、熟考するところだが、「なんとかなるっしょ!」と思い切りよく旅立てたのはやっぱり若さとレゲエへの情熱ゆえだよなぁとしみじみ思う。

 憧れの国、ジャマイカは見るものすべてが刺激的だった。青い空、木々の力強い緑、日本では見ない鮮やかな色の花、赤・黄・緑のラスタカラーでペイントされたカラフルな家々。どこを見渡しても日本とは風景の彩度が段違いだった。

ラスタカラーの建物
色鮮やかな花
カリビアンブルーの海

 街中でもビーチでも車の中でもどこでも聞こえてくるのはレゲエミュージック。ビーチからの帰り道、車内のラジオから大好きな曲が流れてきて、この曲をジャマイカの空の下で聞けるなんてと喜びを噛みしめた。 

 ボブ・マーリーミュージアムではレゲエの神様ボブ・マーリーの在りし日の姿に思いを馳せた。このミュージアムはボブ・マーリーの自宅を博物館にしたもので、たくさんの写真や愛用していたギターや今でもそのままになっている寝室などボブ・マーリーの歴史がぎゅっと詰まった場所だ。伝説のレゲエアーティストが暮らしていた場所に自分が立っていることが夢のようで、感無量ってこういうことなんだなと実感した。

ボブ・マーリーのレコードレーベル
TUFF GONG のレコーディングスタジオ前
ボブ・マーリーミュージアムにあるボブ・マーリー像

 旅行の醍醐味は何と言っても食事だ。特に海外はそうだ。食事こそ、その国を知るベストな方法だと私は思う。
 ジャマイカはジャークチキンなど名物料理があり、現地で食べたジャマイカ料理のことは忘れられない。後悔しているのは写真がないこと。かろうじてジャークチキンの写真はあったが、寄りすぎてピンボケの到底アップできないような写真なため、アップは断念した。

 まずは有名なジャークチキン。複数のスパイスで味付けをして焼き上げるジャマイカでおなじみのローストチキンだ。日本でもレゲエが流れるダイニングバーなどで食べることができたりする。ジャークチキンは日本でも食べたことがあったのだが、本場ジャマイカで食べることが大事なのだ。
 実際に食べてみると、本場のジャークチキンは日本のものよりスパイシーだった。焼き上がったチキンのトッピングに赤いソースをかけるのだが、それが結構辛いのだ。友人も私も辛い物好きな方なのだが「辛っ!」と驚いたことを覚えている。私たちはジャークチキン専門店で買ったものをテイクアウトしたのだが、専門店らしく皮目はパリッと香ばしく、肉は柔らかくて美味しかった。

 私たち2人の旅行は現地のスーパーマーケットやお惣菜屋さんでテイクアウトすることが多い。そして買ってきたその土地ならではの食べ物をビーチや公園で食べるのだ。
 余談だが、私は海外に行くとその土地のスーパーマーケットに行くのが好きだ。見たことのないフルーツや豪快にカットされた肉や日本とはスケールの違う大きさのスナック菓子など見るものすべてが新鮮で、とてもワクワクする。食事と同様、スーパーマーケットもその国のことが知れてとても興味深いのだ。

 ジャマイカでは蓋付きのパック容器にご飯とおかずを詰めた日本のお弁当のようなものが売られていて、この旅の間に何度か買って食べた。このお弁当こそ、ジャマイカらしい料理の宝庫なのだ。
 まず、ご飯は白米ではなくレッドキドニービーンズを米を一緒に炊き込んだ「ライスアンドピーズ」という豆ご飯だ。ジャークチキンをはじめ、フライドチキンにも煮込みにも合う。
 次におかずはフライドチキンだったり豚肉の煮込みだったり選べるのだが、ジャマイカらしいのは「カリーゴート」だ。カリーゴートはヤギ肉のカレー煮込みのことでジャマイカでは日常からお祝いの席まで幅広く食べられている料理なのだ。
 友人がオーダーしたものをひと口もらったのだが、とても美味しかった。個人的にジャマイカ料理の中で1番美味しかったのがこのカリーゴートだ。クセがあるかなと懸念したヤギ肉はカレーのスパイスのおかげか食べやすく、歯ごたえのある硬めの肉質も「肉を食べている感」があって好みだった。
 コーディネーターさんいわく、ジャマイカは砂糖農場の季節労働者としてインドや中国から労働者がやってきたこともあり、ジャマイカ料理にはカリーゴートのようなインド風の料理が生まれたのだそう。実際に料理を食べるとそういった歴史的背景も教科書を読むよりもはるかにストンと腹落ちするから不思議だ。

 この記事を書くために、今は使っていないパソコンを久しぶりに起動させて写真フォルダを開いた。
 たくさんの思い出が詰まったジャマイカ旅行の写真フォルダはなんだかとても眩しかった。写真自体が南国特有の鮮やかなものが多いせいなのもあるけれど、陽に焼けた顔でふざけている若い頃の私たちがとてもいい顔で笑っているからだった。
 ジャマイカ旅行以来、仕事やプライベートにいろいろな変化があって海外旅行には行けていない。仕事や日常に追われて旅への優先順位があの頃ほど上位ではなくなっていたのだ。あれだけ好きだった旅への情熱が薄れてしまったのかと少し寂しくなっていた。
 しかしよく考えると情熱は薄れたわけではなかった。今、noteでよく読む記事は旅行の記事や海外で生活している方の記事が多い。そういった記事を読むことで、私は旅の疑似体験をさせてもらっているのだ。

 ふと、松尾芭蕉の辞世の句を思い出した。    
「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」
 松尾芭蕉は「奥の細道」など旅に生きた俳人として有名だ。この俳句は「旅の途中で病床に臥してしまったが、夢の中では今も自由に枯野をかけめぐっている」という意味だ。
 病に倒れても夢の中では枯野を駆け巡って芭蕉のように、日常に追われ旅から離れてしまっても私の心は今も世界のあちこちを駆け巡っているのだ。
 芭蕉が日本各地を旅するようになったのは40歳を過ぎてからだという。現在37歳の私が年齢を理由に旅から遠ざかったままでは、「何をやっているんだ」と芭蕉に怒られてしまいそうだ。
 そろそろまた、旅に出たい。
 さあ次はどこへ行こうか。
 

 

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