見出し画像

攻略法が見つかるまで何度でも『サイケまたしても』


現在20代の人なら週刊少年サンデーで連載されていた「うえきの法則」を覚えている人は多いだろう。アニメ化もされたのだし。
その作者である福地翼さんが描いた漫画『サイケまたしても』が現在webアプリ、『サンデーうぇぶり』で無料配信されている。しかも全15巻。
3月14日までの期間限定なのでぜひ読んでくれと声を大にして言いたい。私自身これを書き始めた時12巻まで読み先ほど全巻読み終えたところなのだが、こんなにも面白い作品を無料で読ませてもらったからには微力ながら何か貢献したい。
あと2日しかないのだけれども。

葛代斎下は、将来の夢も特別な能力もない、どこにでもいる、ごく普通の中学三年生。
平凡で退屈な毎日を過ごすサイケだったが、ある日、幼なじみの蜜柑が事故で死んでしまう。
絶望したサイケが池に飛び込むと、蜜柑が事故で死んだ“今日”が再び始まった。
蜜柑を救うべく、問題の“今日”を繰り返すサイケだが…?
あなたにはやり直したい一日はありますか?

と、これが1巻のあらすじなのだが
この作品は作者の宣伝にもあるようにタイムリープ能力バトルものである。
本格的な能力バトルは2巻からスタートする

主人公、サイケの能力は『町の名所、モグラ池で溺れることでその日の朝7時に戻れる』という能力。幼馴染、蜜柑が交通事故で死に自暴自棄になり池に飛び込むことで目覚めた。サイケはその力を使い『ヒーロー』としての活動をしていく。
そしてその中で出会う自分以外の能力者。能力を悪用する者から人々を守るためサイケは立ち向かう。
しかし彼は腕力に自信があるわけでもなければ、目覚めた能力も攻撃に向いているわけではない。
朝7時に戻るという能力でどう対処するのか?

答えは何十、何百回とタイムリープを繰り返し、相手の能力を見極め、弱点を探るという戦法だ。

例えばある時間に相手が能力で骨を折るほどの奇襲をしてくる。サイケは1発目をくらってしまうが、苦しみながらも逃げのび、池に飛び込み1日をリセットする。
そのタイムリープにより、相手が特定の時間に奇襲をしてくるのは把握しているので、それを回避し、こちらから攻撃を喰らわせる。もしそれに失敗したらもう一回、成功しても倒しきれなかったらもう一回、相手の能力を見極め、どの選択肢を選ぶのが正しいのか、攻略法を見つけるまで何度となくサイケは池に飛び込む。

死にかけになりながら何度もタイムリープを繰り返す、作者自身にスナック感覚で死ぬ狂気と言わせてしまうその無謀なほどの自己犠牲は、能力を手に入れる前の殻にこもっていた、何も為さなかった自分への裏返しでもあり、その時折見せるゾッとするほどのヒーロー精神は仮面ライダーOOO、火野映司や仮面ライダー剣、剣崎一真に似た部分もある。

サイケとの戦いの中でそのヒーロー精神に感銘を受け
触れたものを発泡スチロール化させる能力を持つコワモテ男、氷頭栄治
触れたものからガムテープを引き出す能力ゴスロリ少女、アナ・エガートンが仲間となり、彼らはチームを組み他の能力者の悪事を暴いていく。
氷頭、アナが前線に立ちサイケがタイムリープを繰り返し攻略方法を探っていく。限定的過ぎる力でどう戦うかの魅せ方は、うえきの法則を知っている人ならご存知の通りさすが福地翼さん、とても上手い。

 更に面白いのはこの作品がヒーローものとして描けるテーマに数多く挑戦していることだ。

中盤、能力を消す能力者の登場によりサイケのヒーローとしてのアイデンティティ消失の危機に恐怖する描写や、『変えてはいけないから運命である』運命を捻じ曲げてしまう彼は悪魔だと突き付けられてしまう展開、
X-MENのマグニートーのように能力者達の組織を作り上げ、世界中の人間を能力者として覚醒させようとする敵、
仮面ライダー555のようにいくらその能力をヒーローとして行使したとしても普通の人々から怪物扱いされてしまう描写(劇中では能力者は都市伝説的にMと呼ばれている)など、サイケに降り掛かる受難は果てしない。

しかしそれらのテーマを描きながら、決して重くなり過ぎることなく着地点を見つけていくその手腕には思わず感嘆してしまう。
この作品がどういう結末にたどり着くのか
頼む、みんな見届けて欲しい。

そして15日からうえきの法則が無料公開されるとのことなので、こちらも楽しみにしたい。





この記事が参加している募集

#私のイチオシ

51,185件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?