ジャズ喫茶がすごく楽しい話

 ジャズ喫茶が好きだ。

 もしかしたら、ジャズ喫茶に入ったことがない人のほうが多いかもしれない。

 ジャズ喫茶とは、その名のとおりジャズを本格的なオーディオシステムで聴かせてくれる喫茶店のことだ。

 音量は店によって違う。会話ができないくらいの爆音で鳴らす店もあれば、心地良い音量で鳴らす店もある。僕はどちらも好きだ。

 京都で僕が通うジャズ喫茶は、熊野神社の近くにある老舗のジャズスポット・YAMATOYAと京阪出町柳駅のすぐそばにあるラッシュライフだ。

 YAMATOYAは全国的にも有名な老舗で、1970年オープン。お店のホームページ情報では、スピーカーがVITAVOX KLIPSCHORN、アンプがMcINTOSH MA2275、ターンテーブルがGARRARD401だ。

 作家の五木寛之さんもかつて、この店の常連だったらしい。

 ドアを開けて、お店に入ると店内は少し照明を落とした暖色系で、内装や家具はとてもクラシカル。落ち着いた雰囲気の中に、コーヒーのかぐわしい香りが漂ってくる。

 ジャズの音はそれなりに大きいがとても暖かい音なので、耳に心地よい。

 ラッシュライフは、もともとは1966年にオープンした老舗らしいが、出町柳駅前の今のお店は1988年からで、カウンターのみの小さなお店である。

  スピーカーはALTEC 620A、パワーアンプがMcINTOSH MC30、コントロールアンプがMARANZ 7CとTechnics30A、ターンテーブルがLench L75とDENNON DP-1000である。

 この店は、古本屋巡りの途中に寄ることが多い。最近の僕の古本屋巡りのコースは、銀閣寺近くの古書善行堂から始まって、今出川通を出町柳まで歩く。その間にだいたいいつも5軒の古本屋を回り、1店舗につき平均2冊は古本を買うから、この時点で10冊だ。結構、重い。そして、銀閣寺から出町柳駅まで歩くと結構な距離がある。まっすぐ歩いても20分はかかるだろう。そのコースを僕は2時間くらいかけて歩く。

 出町柳駅に着いた頃にはけっこう疲れている。そんな疲れた体でラッシュライフに入ると、ジャズの音とコーヒーの香りに癒される。僕はだいたいビールでのどを潤してからブレンドコーヒーを注文する。

 そして、ジャズの音に包まれながら、その日買った古本をゆっくりと眺める。僕にとって、至福の時間だ。

 そうしてると、さあもう一回りするかという気力が湧いてきて、出町柳駅から京阪電車に乗って、三条周辺で中古レコードを漁る。

 これが僕の一番の趣味なんです。

 ジャズ喫茶は、日本独特の文化らしい。詳しい歴史は知らないが1960年代とか昔は、レコードやオーディオシステムが高くてそんなに気軽に買えないから、みんなジャズ喫茶に入り浸って、レコードを聴いていたという。

 僕はそんな時代に少し憧れている。もしかしたら、その時代の空気を味わいたいと思って、ジャズ喫茶に通っているのかもしれない。

 そういえば、クラシックもジャズも50年代から60年台のものを好んで聴くから、ぼくは50年代・60年代マニアなんだ。今初めて気づいた。

 ジャズ喫茶については、「ジャズ喫茶論~戦後の日本文化を歩く~」(マイク・モラスキー著・筑摩書房)という本が出ていて、けっこうおもしろい。


 日本全国のジャズ喫茶を取材して歩き、お店の主人にインタビューをしながら、日本のジャズ喫茶文化を紹介する本で、僕はこの本を読むと日本全国ジャズ喫茶巡りの旅に出たくなる。(もちろん、古本屋や中古レコード店も巡ります。)この本には、YAMATOYAやラッシュライフも登場する。

 著者は「全国の店主や常連客とのインタビューを踏まえて、「ジャズ喫茶とは何か?」という根源的な問題を冷静に、いろんな角度から見直してみる」という。これはもう、ジャズ喫茶の哲学書である。

 ああ、こんなこと書いてたら、また今出川通を銀閣寺から出町柳まで歩きたくなってきた。

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