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地方を救いたい人は多いけど、救ってほしいと思う人は少ない

僕はいわゆる地方で5年ほどビジネスをしています。

その中で、地域課題をテーマとしたビジネスで相談にのることが多いです。例えば「地域の〇〇問題をビジネスで解決したい!」とか。地方の人の困りごとを解決したい、そういう気持ちは大切ですが、大きな勘違いをしているかもしれません。

なぜなら、いざ地方の人や経営者を見てみると困っていないんです。なんなら満足しているようにも思えます。

ちなみに、僕自身も同じ勘違いをしていました。福島県に来る前は都内で働いていて、当時は地方が「なぜこんなに時代から遅れているんだろう」だったり、「もっとITを取り入れれば発展できるのに」と思ってたりしました。

でもそれは一方的なエゴでした。

今の現状で事足りているから、それ以上のことは望んでいないんです。つまり、ビジネスとしてのニーズがない。

もちろん、すべての人がそうだとは言いません。ただ、少なからず都内で見ている地方と現地では大きなギャップがあります。

ここを理解せずに「困ってるんでしょ?解決しますよ!」と乗り込んでも、うまくいきません。

満を持して進出してきたものの撤退する法人や地方に絶望する人が多いのは、ニーズの見誤りが大きな理由だと思います。

近い例として、メキシコの漁師とMBAコンサルタントの話があります。

とても魚釣りが好きな漁師がいました。
漁師は好きな時間に起きて、釣りをして、子供や友達と遊んで楽しく過ごしていました。

ある日、あるビジネスマンがその漁師のそばにやってきて言いました。

男:「やあ、すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの?」

漁師:「そんなに長い時間じゃないよ」

男:「へぇ、君は魚釣りが得意なようだね。せっかくならもっと働いてみたらどうだい?」

漁師:「自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だよ」

男:「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの?」

漁師:「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、
女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」

男:「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、
きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。
部下を雇ってもっと売り上げがでたらボートも買おう。そうしたら仲介人に魚を売るのはやめて自前の水産品加工工場を建てて、ビジネスを大きくする。
その頃には村を出てロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ。そうすれば老後もお金ができるよ」

漁師:「なるほど、そうなるまでにどれくらいかかるのかね?」

男:「20年、いやおそらく25年でそこまでいくね」

漁師:「へぇ、それからどうなるの?」

男:「そしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、
奥さんとシエスタして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。 どうだい?すばらしいだろう」

【原文】メキシコの漁師とMBA持ちの男の話(和文・英文)


この話では、豊かさの違いについて語られることが多いのですが、僕が感じるのは認識の違いだと思います。コンサルタントは経済合理性を問題視していますが、そもそも漁師にとっては魚の漁獲量は問題じゃないんです。

地方の茹でガエル理論

望んでいないからといって、問題解決が不要なのかと言われるとそうでもありません。

なぜなら、そもそも問題に気づいていないことが多いからです。当然、問題に気づいていなければ、課題も見えてないので解決のしようがありません。こうした潜在的な問題を抱えている組織、ひいては地域がたくさんあります。

例えば、地域の企業でも頻繁にこんな事が起きています。

・長年の手法や技術に固執し、気がついたら競争力が低下していた
・労働環境の変化を鑑みない結果、退職者は増えるも求職者が増えない
・後継者不在によって未だに現役のシニア経営者

いずれも突然起こった問題ではありません。以前からあった問題であり、それが顕在化して「やばい、大変だ!」となっているにすぎません。

この現象は「茹でガエル」という例えがぴったりだと思います。

「カエルは、いきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくと逃げ出すタイミングを失い、最後には死んでしまう…」

引用:HR pro


こんなニッチな画像があるなんて…

つまり、今のままでも困りはしないけれど、いつか将来的に(かつ徐々に)取り返しがつかなくなるということです。このリスクに気づいていないことも問題の一つだと考えます。

地域全ては救えない

前述のお話に加えて、地域課題をテーマとしたビジネスで勘違いしがちなのが「誰の課題なのか」ということです。

よく地域全体にまつわる課題かのように考える人が多いのですが、

本当に地域全体で認識されている課題ですか?

実際は特定の誰か、なのではないでしょうか。それを拡大解釈して「地域全体」に広げると本当の課題を見誤る可能性があります。

なにより救ってほしいと思っている人は少ないですし、助かりたい人はすでに自分で動いているはず。

つまり、地域全てを救おうという考えは大きな勘違いです。

だからこそ「誰の課題なのか」をしっかり特定することが後々の後悔をなくすうえでは、とても重要なことだと考えています。

真のニーズは現場でしかわからない

ここまでお話してきたことは、ニーズの特定というところにあります。自分も同じ経験をしたからわかりますが、結局は物理的な距離があるとニーズの特定は難しい。

遠巻きに見ているだけでは、前述のように妄想ばっかり膨らんで真のニーズを掴むことはできません。だからこそ、現地に足を運びましょう。

そして、現地の人にお話を聞きましょう。価値ある情報は現場にしかないのです。

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