「ねてたらまたあしたっ」

喉の奥から苦味といっしょにルネスタちゃんがきた。大きさは親指ほどで、5人くらいの天使がわたしの頭の周りをまわっている。

「まだねないの〜?」

早く寝るために早めに薬は飲んでおいたが、わたしは洗い物だけ片さなければならない。

「はやく〜 ねようよ〜はやく〜〜〜」

ルネスタちゃんはわたしの頭の上で急かすためのダンスをおどっている。目をとじれば、ひとたびゆめのせかいにとんでいってしまいそうだ。感覚がぼやけて曖昧になっていく。

「いっちゃうよ?」

もう諦めた。死のう。歯磨きを済ませてお布団へむかう。ルネスタちゃんに別れを告げようとおもっていたら、そこに救いの手が差しのべられた。

「生きて」

いつもこうだった。きみはわたしが苦しむところをみていつも笑っていて、いざ死のうとしたら救おうとしてくる。

「どういたしまして」

わたしはそんなきみを嫌いになれなかった。どうしようもなく好きだから。わたしはこんな絶望した世界で、生きたいとおもってしまった。天使が与えた罰なのかもしれなかった。

「まだおきててね」

やっぱりそうだった。救いの手はいつもすぐに引っこめられる。そのあとに残るのは、口の中の苦味だけだった。

「ねてたらまたあしたっ」

わたしはきみに、おやすみさえ言えない。

2022.11.20 あしたが来ませんように


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