毎日観察、自然農。

『そんなに食べきれないほど作ってどうするだ！』

僕が自分の畑をやっていた頃にいわれた一言。僕は畑で作物を作る時、家族で食べられないくらい作る。

何でそんなに作るのか？

そもそも、食べるだけの目的で作っていないんだ。

作物を育てる

栽培法を試す

土を育てる

自然と共に生きる

これが目的だ。

だから、食べきれようが食べきれまいが関係ない。
同じ作物を同じ時期に植えても、畝を変えて環境を変えてみたり、油粕、米糠などの施肥を変えてみたり、枝の切り方を変えてみたり、草を生やしまくってみたり。
それで全部うまく行けば、食べきれないほど出来る。
でも、うまくいかないパターンもあるだろう。
そういう時はちょうどいいだろうし、全く出来ないことだってある。

出来なければ、それは一つの経験だし、次に活きる。しかし、上手く出来てしまっては、何が上手くいったのかはよく解らない。

だから、たくさん作っても5割くらいでいいと思っている。

僕にとっては経験が一番大事なのだ。

年に1度だけのチャンス

作物の殆どは年に1回しか栽培できない。

と言うことは、年に一度しか経験できないのだ。

10年経験があっても、10回しか栽培したことがない、と言うことになる。

だから、同じ作物でも数パターン行うことで、数回経験できる。

勿論、気候も異なるから翌年全く同じことをしても上手くいかないことだってある。

でも、同じ時期に違うパターンでやっていれば、比較がしやすいから野菜の『表情』が見えてくる。
毎日、蹲って大地に顔を近づけ、草を鎌で刈り、土を弄れば土の『命』も見えてくる。
その距離が離れれば見えなくなり、機械を使おうものなら、見えないどころか感じなくなる。

作物以上に土を大切にしているから、土にとって喜ぶことをする。

畑に何かを投入することはあまりしない。

化成肥料なんか当然使わないし、牛ふん、鶏ふんの動物性肥料も使わない。

農薬なんぞは以ての外である。

時間はかかるが、土を良くすることが作物にとって一番と僕は思う。

自分が食べてもいいと思うモノを作る

僕は慣行農法をする気は全くないし、やれと言われてもやらないが、否定もしない。

広い土地があって、たくさんの作物を栽培できるのであれば、慣行農法を行うことで多くの人々の手に安価な野菜を届けることが出来る。

安く販売するためにはいろいろ削減しなければならない。

機械を使って人件費を削減し、化成肥料を使ってリードタイムを早める。

化成肥料を使う事で虫害等が出れば、農薬を使って駆除、対処する。

農薬は決められた残留農薬基準があり、一定の農薬の使用方法（使用時期、使用濃度、使用回数など）が決められている。

農林水産省HPより抜粋

しかし、これは必ず守られているのか？

そして、農家の方は、これを本当に信用しているのか？

僕ははっきり言って信用していない。自分の食べるものに農薬など使いたくない。自分で作るんであれば、絶対に使わない。

だから、農薬を使わないし農薬を使わない方法を模索する。

それだけの話である。

毎日観る

機械を使わず、化成肥料、農薬を使わない方法を実践するなら何をするか？

観察するしかない。土を見て、作物を見て、気候を見て、月を見て、自然を感じるしかない。

それは月に数回、週に1回見ればいいというモノではない。毎日観る。毎日観なければ変化に気付きにくい。

僕も自分の畑を持っているときは兎に角毎日観ていた。

畑仕事をしない日も畑だけ見に行くんだ。

ランニングのついで、『ついで』でなく、ただ見に行く。

毎日見ていても、気付けない日がある。

広い畑、多くの作物を栽培しているなら猶更だ。狭い畑で作物の種類も少ないなら毎日の必要もないかもしれないが、そうでないのなら、ぱっと見だけでなく、畝の土から見ることも大事だと思う。

畝に被せた刈草の下に生物の営みが見え、枯れた刈草から山の土のにおいがする。枯草菌が発生しているのだ。

バッタやカマキリ、トカゲ、色んな生物が畑を共有し始め、そこに自然の流れが出来る。

慣行農法は人の都合だけで作物を作ると、作物にとって害虫が出ても自然の流れが無いので、その害虫の天敵が居ない。だから、人の都合で農薬をまいて害虫を駆除する。

まぁ、そもそも肥料を使わなければ害虫もそれほど発生しないんだが。

楽をしたいからやっている

慣行農法を今までやられている方には時間と手間だけかかって実入りが少ないと思うだろう。

僕は逆で、時間はかかるけど、何でも買わないと、お金が無いと出来ない農業は疑問なのだ。

そもそも自然の流れを使って出来るモノでしょ？

機械も、肥料も使わずに、たま～に視れば出来る方が簡単でいいじゃない？

勿論、たまに視るだけで済む土壌にもっていくのが現代では大変なんだけど。

もっと楽に、『機械が無いと』『お金が無いと』といった、何かが無いと出来ないことから脱却したい。

簡単に、楽しく、気楽に、お金が無くても、機械が無くても出来る。

ここを目指したい。

ただ！売ることは目指せないけどね。

楽しく、気楽にやれないから。