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【読了】未明の砦・感想

どーも、ばぁどです。
7月に新しく発売された太田愛さんの新作「未明の砦」を読了しました。
せっかくの新刊でしたので、感想を置いておこうと思います。

太田愛脚本との出会い

「あなたが好きなウルトラマンは、どんなウルトラマンですか?」
長年、ウルトラマンオタクをしている私にはこのような質問が、とても苦でした。
理由としては一つに絞りきれず、数々のウルトラマンにはそれぞれの魅力があり、決して「一番好き」という自分の中でのTOPを決めることができなかったからです。

ただ、そんな中でもやはり質問には答えようと苦慮している時に閃いた回答。それが「太田愛さんが脚本を担当したウルトラ作品が好き」と言うものでした。

子供心に残る思い出のシーンは、人それぞれいくつもあると思います。
子供の時に行った家族旅行のワンシーンや、学校での思い出のワンシーン。中学高校の部活動の思い出も良いと思います。
そんな私の子供心に強烈に残っているワンシーン。それが太田愛さんが脚本を担当したウルトラ作品でした。

具体的に言うと、ウルトラマンティガ第30話「ゼルダポイントの攻防」、ウルトラマンダイナ第20話「少年宇宙人」、第41話「ぼくたちの地球がみたい」、ウルトラマンガイア第29話「遠い街・ウクバール」、ウルトラマンコスモス第57話「雪の扉」。
これらは幻想的なシーンの数々もそうなのですが、ストーリーの展開としてはウルトラマンにはよくある変化球的なお話であり、怪獣・宇宙人が暴れているからそれらをウルトラマンが倒して終わり、と言うものではないのが特徴です。
よく「ウルトラマンがいらないお話のウルトラマン」と言っていたのですが、これらのエピソードでは、ウルトラマンと言う番組でありながら、ウルトラマンと言う絶対的な存在が邪魔になる程人間の描写に主眼が置かれており、ドラマとして楽しんでいたのを思い出します。


高校生、大学生になると、自分が好きなコンテンツであるウルトラマンをより詳しく知ることになり、自分が好きなストーリーに共通して脚本家が「太田愛」さんであると言うことに気づきました。

個人的に、大田愛さんとの出会い、初めて大田愛さんと言う脚本家の存在を意識したのは、これらのウルトラシリーズのストーリーだったと記憶しております。

相棒の脚本、小説(犯罪者~彼らは世界にはなればなれに立っている)を経て

大田愛さんがウルトラシリーズの脚本から離れて、次に出会ったのはテレビ朝日系列のドラマ相棒の脚本家としてでした。
初代相棒亀山薫が、サルウィンへと旅立ち、新しく神戸 尊が配属された第8シーズンの第二話「さよなら、バードランド」において、お名前を拝見することになりました。

元からドラマ相棒は好きだったのですが、そこに自信の思い出のウルトラマンの脚本家である太田愛さんが加わったことにとても嬉しく思っておりました。

ウルトラマンから相棒へ。
全く共通点のないこのシリーズにおいて、脚本を担当されている大田愛さんですが、やはり話としては、人間ドラマを主軸として、登場人物の心理描写がとても繊細だと言う共通点は感じております。
相棒は刑事ドラマと言うことからか、そこから小説「犯罪者」、「幻夏」、「天上の葦」と同一世界観、同一人物が登場する三部作ではドラマ相棒のようなミステリーものとして話は進んでいきます。

犯罪者は、企業犯罪に巻き込まれる若者のお話。
天上の葦は、第二次世界大戦中のことを事細かに描き、現代日本が新戦時下に向かわないように必死に足掻く作品。

そして三部作後に執筆された、ファンタジー的な小説「彼らは世界にはなればなれに立っている」では、現実世界とは異なる架空の世界のお話で、どこかファンタジー的な要素があるにも関わらず、内容としては差別で苦慮する者たちと、終いには戦争へと向かってしまい消滅するとあるひとつの村(国?)と若者たちのお話でした。

また、相棒の劇場4作品目も大田愛さんが担当しております。
こちらの劇場4作品目でも、第二次世界大戦が話の下地として取り入れられておりました。
相棒で言いますと、2022年の元日スペシャル第11話『二人』においても、大田愛さんが担当しており、非正規雇用の若者の貧困がひとつのテーマとして取り入れられていました。

このように相棒以降の作品は、第二次世界大戦をはじめとする戦争へと歩まないための警鐘や、派遣労働による若者の貧困などがテーマとして執筆されていることが多いように思えます。

未明の砦・感想

今回の未明の砦。
テーマとしては、2022年の元日スペシャル第11話『二人』において描かれた「非正規雇用の若者」が挙げられています。

巨大大手企業に非正規雇用として雇われている4人の若者が、大手企業が隠す過労死問題や、雇用主側に有利な制度の制定など、それらの問題に立ち向かう物語です。

私自信、ITエンジニアとして働いていますが、IT業界にはSES(業務委託)と言う根深い問題があります。非正規雇用や派遣制度とは違う制度なのですが、抱えている問題として、根っこは同じであると考えています。
また、周りを見てみると既に結婚して子供がいたり、車を持っていたりなどしていますが、数年前までは誰もが当たり前だったルートなのですが、やはり給料が満足ではなく、不安定な立場からするとそれらは一種の贅沢品の一つであり、今では誰もが選択することができる選択ではなくなったと痛感しております。

実際に消費税も、10年くらいで5%から8%、10%へと引き上げられており、それだけでも本来は自身の消費へと動くはずだったお金が、政府へと吸い上げられています。お給料やボーナスを見ても、「え?こんなに税金で引かれるの?」と目を見開いてしまうことが多いです。
円安と言われて数年(来年予定しているイギリス旅行が怖い)。
また給料が上がらず、大学の初任給がいつまでも30年前と同じ。
100円ショップは、いつまでも100円のまま。
各種駄菓子などのステルス値上げ。

これらの最近言われているマイナス面の数々を、未明の砦を読んでいると感じざるおえませんでした。
日々のニュースを見ていたり、俗にいう「異次元の少子化対策」や、子ども家庭庁の某団体とのコラボしての値引きなど、「そうじゃないだろ」感が強いニュースばかり、飛び込んできて気が滅入る毎日ですが、未明の砦に登場した若者たちと同じように何かしらの行動をして、今の生活を変えていきたいなと、微かな希望を胸に抱きました。

今日は大田愛さんが脚本を担当したウルトラ作品でも見ながらお酒を飲もうと思います。
未明の砦、大変学びのある本でした。ありがとうございました。



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