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【禍話リライト】甘味さん譚「お守り焼き」
以前にもリライトさせていただいている(下記)が、禍話のレギュラーに甘味さんという女性がいる。廃墟に泊まり込み、異形とのエンカウントを試むのが趣味という剛のものだ。甘いものが好きなので甘味さんと通称されている。
そんな甘味さんの短い話を。
【甘味さん譚「お守り焼き」】
甘味さんがある廃墟に足を踏み入れた時、物を焼く臭いがした。火事だったら嫌なので、確認をして場合によっては消防署へ通報と考えて、甘味さんはそちらに足を向けた。しかし、人がいたと思しき場所には、誰もおらず、火が消えかけていた。体重の軽い足音を聞きつけて逃げてしまったようだ。相手は一人ではなく複数人居た模様だった。建物の中で何かを燃やすというのも非常識だが、さらに問題は燃やされていたものだという。
焚き火には紙袋があったのだが、その中に燃え残った無数のお守りがあった。お守りの効能は「家内安全」「勉学成就」など様々で、神社もバラバラだった。
「気持ち悪いうえに、危ないなぁ」
結局、元からの予定通りその廃墟には泊まらず、中をぐるっと見て、自宅へ帰った。
その夜、普段通り、自室で眠りについた。
夜中、明かりが目に入って目が覚めたという。時計を見ると真夜中なのだが、室内の電気が点いている。甘味さんは、寝る前に電気を暗くして寝るので、煌々と明るいのはおかしい。
電気が点いているのはあり得ない。つい、今しがたまで眠っていたのだ。
『電球がおかしくなってんのかな』
ーーそう思ったものの、そんな訳はない。寝入ってしばらくしてから点く電球など聞いたことはない。
つまり、電灯の紐かスイッチに不具合があるのだ。ベッドからは見えにくい電灯の紐に手を伸ばして、ばさりといつもとは違った感触が掌に伝わった。思わず見ると、大量のお守りがぶら下がっている。
あまつさえ、いくつかが芋虫のように動いたような気がしたので、驚いて意図せずに再度紐を引いてしまった。
部屋が闇に包まれる。
「おいっ!」
外から入ってくる明かりだけを頼りに、部屋を出て台所へ避難した。
落ち着いてから戻り、よく見ても電灯の紐にも、もちろん部屋にもお守りはなかった。
「やりよる」
つまり、昼の廃墟のナニモノかが甘味さんが寝た後にお守りを電気の紐に着けに来て、その拍子に電気が点いたーーということなのだろう。
その廃墟は今なおあるので場所は明かせないそうだ。
〈了〉
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出典
禍話インフィニティ 第十四夜(2023年10月7日配信)
27:20〜
※FEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。
下記も大いに参考にさせていただいています。
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