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【禍話リライト】続・夢のおばあさん

 ということで、かぁなっきさんが下記を聞いたときに、「怒ってないけどキレそうな老婆の言」という様子が今いちピンと来ていなかったそうなのだが、それを実感し『話そう』と思った夢について。

【続・夢のおばあさん】

 今年(2024年)のある夜、かぁなっきさんは夢を見た。
 大学生時代に住んでいたアパート(K荘)には、珍しく内扉があったそうだ。
 そのK荘に、小学校時代の友人と、中学校時代の友人が訪ねてきた。二人とも現在は行方不明なのだそうだが、それは夢の中なので気づかない。
 アパート一階の玄関、内扉の前で声をかける。しかし、二人は、
「お前らどうしたの?」
との問いにも、
「ヤベェ、ヤベェ」
を繰り返すのみだった。
 アパートの入り口の扉はガラス製なのだが、文字が書いてある関係もあって、外が見えにくい。
 しかし外には文字の隙間から、おしゃれないでたちをした老女の姿が見える。そして、ずっと何かを言っている。
「その建物は良くない。使われていないし、入るのは不吉だ」
 耳を澄ますとそういう内容を繰り返している。確かに、もうK荘は潰れて違うアパートになっている。老婆はさらに「存在しない建物に入ってはいけない」と言う。
『あれ、この建物って存在しなかったっけ』
 そんなことを考えているうちに、どんどん記憶が蘇ってくる。
『とりあえず、今、自分は何をしようとしてたんだっけ、そうだ、内扉を開けて、郵便ポストにものを取りに……』
 内扉を開けると、新聞受けには手紙やチラシが刺さっていて、そこに立っていた老女は、中の二人だけでなくかぁなっきさんにも本名のフルネームを呼んで声をかけてきた。しかし口調は丁寧だ。
 無視をして、中へ入る。そもそもこの二人とは関係がない。
「じゃあな」
 二人に声をかけて、内扉に鍵をかけ、部屋に戻ろうとしたら、バタバタと音をたてながら慌ててついてきた。「しょうがねぇな」と1階の部屋に入れて、言う。
「おまえらが勝手に付きまとわれ……」
 そこまで話して、夢の中でだんだんと記憶が鮮明になる。
 目の前の小学生時代の幼馴染は行方不明だ。
 中学の友人は、長いこと連絡を取っていないうえに、周りの皆も近況を教えてくれず、どうやら遠くにいるらしい、そもそもこいつらと仲も良くなかったし……。クラスメイトで、同じ地域ですれ違うことがある程度だ。
 そんなことを考えている間に、老婆は回り込んできて同じようなことを言う。曰く、「存在しないものの中に居てはいけない」。
 かぁなっきさんはベランダ側の扉を開けようとする老婆に、打ち勝って、つまみ錠をかける。
 一息つけるかと思ったら、上の階から激しい音がする。リズムをとっているようにも聞こえる。2階の住人は老夫婦で年齢が音に見合わない。状況の不自然さだけが増す。
『これ、聞いてた話とまるきり同じだ。夢じゃない?』
 そこで目が覚めたのだそうだ。

 それまで、激昂しない老女の言葉に怖さを感じられなかったものの、夢の中で体験をして「老女の今にもキレそうな感じ」を実感したのだそうだ。
 だから、話してみようと思ったのだという。
                         〈了〉
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出典
禍話インフィニティ 第三十一夜(2024年2月17日配信)
25:45〜

※FEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。
ボランティア運営で無料の「禍話wiki」も大いに参考にさせていただいていま……

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