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第13.5夜 デジタル機器への影響

 パソコンが動かなくなった。

 怪談とデジタル機器はそれほど相性が良くない、ように思う。過去にも何度か調子が悪くなったことはあるが、ここまでのものは本当に久しぶりだ。怪談を書き溜めすぎたのだろうかと思う。ハードディスクがまったく動かない。なじみの修理屋へ持ち込んだら、「残念ですが」と最低限のファイルだけ抜き出してくれた。

  世の怪談師の方はどのように話の保管、整理をされているのだろうか? やはりアナログが一番強いのだろうか。

 『新耳袋』にも、怪談を保存したフロッピーから黒い煙が出ていると電車の中で指摘された話が載っていた。

 さて、面白いのは、話によって相性があることだ。有名なところだと、中山一朗先生の怪談の場合、八甲田山関係のものは特によくないようだ。

 また、私の場合だと、何度してもプリントできなかったのは「小人」の話だった。せっかく新調したパソコンに不具合があっては嫌なので、その詳細は、また別の機会に譲る。

 最近では、ほとんど何でもスマホでできてしまうので、スマホに不具合が出るという話もよく聞く。

・誰も話していないタイミングでiPhoneのSiriが何度も「よく聞こえません」と繰り返す。

・保存用にとっておいた音声ファイルに何も記録されていない、あるいはその時は聞こえなかった何か(足音や声)が保存されている。

・怪談会で特定の話で皆のスマホのうちいくつかが自動的に再起動する。

等々。それぞれ単品だと説明がつくことなのだろうが、複合すると空気が一気に重くなる。心霊写真まで含めると収拾がつかなくなるので、こんな話で締めたい。

【そういうこともある】

 築四〇年を超えた自社ビルで働くAさんに聞いた話。

 「各階に幽霊が出る」と言うほど怪現象が多いビルだった。たとえば、四階のトイレは、人の動きに反応して電気がつき、トイレのふたが開き、水が流れる。しかし、夜中にトイレから水が流れる音がするときは、必ず電気はつかないのだそうだ。

 ある年度末のこと、Aさんは夜中まで報告書をまとめていた。2時頃にようやく最終のプリントアウトにとりかかる。部屋には自分と直属の上司しかいない。上司は、ようやく終わりが見えた仕事を横目に帰り支度を始めていた。

 もうデータは触る必要が無いので、プリンターの前でぼんやりと数えることは無しに枚数を数えていた。ページ数は全部で一五〇枚。両面印刷なので紙は七五枚だ。

「……七〇、七一、七二、七三、七四、七五」

 ホッチキスで閉じようとプリンタに手を伸ばしたとき、七六枚目が出てきた。見た目は白紙だ。疑問に思って、裏面を見ると、ぼんやりと人の顔が写っていた。

「うおっ」

 思わず大声を出し、その紙を放りだしてしてしまった。声を聞いて駆けつけてきた上司がその紙を拾い、一瞥すると、すぐ隣にあったシュレッダーにかけた。

「そういうこともある」
というのが、上司の言葉だったそうだ。

 そのまま、資料をつかんで二人で会社を出たという。

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