現場で使える!5ゲン 【PMの道具箱 #5】
みなさん、こんにちは!
今日は、プロジェクト管理における「5ゲン」についてお話しします。
プロジェクト(とりわけ、ITプロジェクト)では、様々な問題が発生します。外部環境の変化が激しく、オンラインミーティングが当たり前になっている昨今、対面コミュニケーションの減少による弊害が発生している場面を皆様も実感しているのではないでしょうか。そこで、「5ゲン」の出番です。
5ゲンとは
ものづくりの現場を中心として、「三現主義」が広く使われてきました。「現場」「現物」「現実」の3現に、「原理」「原則」の2原を加えたものが「5ゲン」です。
5ゲン主義は、三現主義を否定するものではなく、むしろその考え方を進化させたものと捉えるのが適切です。この2つを追加することで、基本的なセオリーから外れている事象は何で、その原因が何なのか、より具体的に原因究明と解決策を見つけることができます。
現場を確認する際に、闇雲に観察するのではなく、どういった原理・現物が用いられてる現場で、どのような問題が発生しているのかを把握することが5ゲン主義に基づく考え方です。これにより、迅速で的確な判断を行うことができること、周囲からの理解を得られること、論理的思考が身に付く、といったメリットがあります。
この記事では、「5ゲン」を実際に活用できるシーンを紹介します。
活用シーン
1.初めて関わる業種・業態のPMを行う場合(「2原」の活用)
プロジェクトマネージャ(PM)は、様々な業種・業態のお客様からご相談をいただきます。初めて関わる業種・業態のお客様からご相談を受けた場合、PMは最初に何をやる必要があると思いますか。
ここで、5ゲンの出番です。業種・業態により、特有の商慣習や法規制などが存在することがあります。このため、対象業界の標準的な業務フロー、代表的な企業の業務フロー(書籍等で把握できる場合)、関連法規や商習慣等、業界の原理・原則を事前に把握してからプロジェクトに携わることが有効です。プロジェクトが、これらの原理・原則からどの程度外れているのか、といった視点で現状分析を行うと、その企業特有の強みや改善が必要な弱みを浮かび上がらせることができます。
原理・原則を押さえずに現状把握や課題分析を行って、結果をお客様に報告しても、「言っていることは正論だが、我々の業種の商慣習を理解しておらず実態を把握できていない」とダメ出しを受けてしまうこともあります。是非、それぞれのビジネスの場面において基本的な業務の進め方・流れ(いわばセオリー)を事前に把握する際に、5ゲンのうち「2原」を活用しましょう。
2.業務の実態を的確に把握する場合(「3現」の活用)
業務プロセスの見直しを行う際に、ドキュメントで業務フローのみを確認するのではなく、実際の担当者へのヒアリングや、現場業務の視察など、仕組みや人の動きをコンサルタントの目・耳・感覚など、五感を駆使することで、的確に業務の実態を把握し、見直しのポイントを明らかにします。「3現」つまり「現地」「現物」「現実」を的確に押さえることで、最適な業務プロセスの姿を描く場面で活用することができます。
昨今、リモートで仕事を行う場面が多々あります。リモートで的確かつ網羅的に業務の実態を把握するのは至難の技です。というのも、リモートでは、資料とオンライン会議など、限られた場面での情報を頼りにせざるを得えません。このため、実際の業務の流れや、打ち合わせ等でやり取りする以外の人達の働く姿や会議での会話など、ふとした場面で情報を収集する際に「3現」が威力を発揮します。迷ったら、現場を見ることがおすすめです。
3.課題を抱えた進行中のプロジェクトで深い分析を行う場合(「2原」+「3現」の活用)
進行中のプロジェクトでは、様々な課題が発生します。現場が抱える課題が何か、潜在的なニーズが何かを考える場合にも、5ゲンが有効です。
5ゲンを意識せずに現状把握・課題分析を行うと、断片的な整理に留まってしまい、真の原因・背景を踏まえないものとなってしまう可能性があります。例えば、プロジェクトの会議に提示された資料・議事録など、書面ベースのみで現状把握を行うと、その会議で扱わない情報や会議に参加しない人達が抱えている課題を見逃してします。
ここで、5ゲンをフル活用します。
まず、「2原」である「原理」「原則」にて、対象業務のを押さえます。進め方は活用ポイントの1点目と同じで、対象業務の業種・業態における業務フローや関連法規や商習慣等をできるだけ事前に把握しておきます。また、対象プロジェクトの特性を踏まえて、システム開発プロジェクトであればPMBOK(プロジェクトマネジメントにおける知識体系)や、業界団体が公表している生産性・品質に関する情報を押さえておきます。同様に、システム運用・保守プロジェクトであれば、PMBOKに加えITIL(ITサービスマネジメントにおける知識体系)等の標準をベース知識として備えておくことが有効です。
実態のプロジェクトが、これらの原理・原則からどの程度外れているのか、といった視点で現状分析を行うと、そのプロジェクトの特徴や課題を浮かび上がらせることができます。
そして、「3現」である「現地」「現物」「現実」を続けて活用します。
プロジェクト資料等のドキュメントに加えて、プロジェクト関係者へのヒアリングや、業務の現場を観察することでを網羅的かつ的確に把握することが有効です。プロジェクト関係者へのヒアリングは、特定の人の意見に引きずられないよう、幅広くステークホルダーを対象として行うことが有効です。社内のプロジェクト関係者のみではなく、協力いただいているベンダーや、可能な場合はお客様も対象としてヒアリングを行うことで、様々な視点からの意見を集めることができます。収集した情報を多角的に分析し、プロジェクトの実態を最も的確に示すことが、関係者間での合意形成に役立ちます。
また、現場の繁忙等によりヒアリングが行えない場合に、プロジェクトの現場を観察するだけでも、人の動きが滞っているところや、雰囲気が良くないところ、殺伐とした状況など、様々な情報が入ってくるため、補足手段として有効です。
終わりに
いかがでしたでしょうか。多くの場面で、5ゲンの一部を自然と使っているかも知れませんが、5ゲンの特徴を理解して現場にて実践することで、初めて関わる業種・業態でプロジェクトマネジメントを行う場面や、深い課題分析が求められる現場において、現状把握・分析の精度を高めることができます。5ゲンを活用し、プロジェクトの成功率を高めていきましょう。
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