ストーリーで考える筋の良い企画の作り方 【前編】企画をストーリーで考える理由【企画の道具箱 #15】
はじめに
みなさん、こんにちは!今回は企画の作り方の話をします。
早速ですが、企画を立案するシーンを思い浮かべてください。企画と言っても様々ですので、ここでは”新たなサービスの企画”や”ビジネスの企画”と言ったシーンを想像してみてください。
例えば、あなたが新しいサービスの開発プロジェクトを任されたとしましょう。最初のミーティングで出た新サービスのアイデアはとても素晴らしく、プロジェクトのチームメンバー全員が興奮していました。
しかし、プロジェクトが進むにつれて次第に様々な問題が浮かび上がってきました。
悩み①:他と差別化ができずどこかで見たことあるような企画になる(サービスの悩み)
最初に出てきたアイデアだけでブラッシュアップをしていくと結局他で実施しているサービスや製品と同様のものとなってしまい、自分たちがなぜやるのか?他社との違いは何か?が見出せない。悩み②:リソース配分が困難となる(実行管理上の悩み)
開発リソースや予算が限られている中で、何を優先すべきか迷ってしまう。チーム内での意見が割れて、決定がなかなかできない。悩み③:アイデアが関係者に正しく伝わらずプロジェクトチームの一体感が欠如する(伝え方の悩み)
いざ着手しても、せっかく考えたアイデアが各組織やプロジェクトメンバーに正しく伝わらず、人によって思っていることが違ったり、どこに向かっているのか分からなかったりして、何を目指しているのか?を次第に見失ってしまう。結果、一貫性のないプロジェクトとなり、期待していた成果が出せない。
こういった問題は多くのプロジェクトで見られる悩みです。筋の良い企画を作り上げて実行に繋げるには、これらの問題を解決していく必要があります。
その解決策の一つになり得るのが、ストーリーで考える企画の作り方である「ストーリードリブン型プランニング」という手法です。
前置きが長くなりましたが、この記事では、「ストーリーで考える企画の作り方」を前編・後編の2回に渡り紹介していきます。
①前編:企画をストーリーで考える理由(今回の記事)
②後編:ストーリーで考える企画の作り方(ストーリードリブン型プランニングの進め方)
企画をストーリーで考えるとは何か
そもそも、ストーリーで考えるというのはどういうことでしょうか?
ストーリーで考えるとは、打ち出した企画が「静止画」ではなく「動画」の状態になるように進化させることです。
例えば「新たなコンセプトのカフェを新規オープン」というタイトルの企画書があるとします。「鮮度の高い豆を仕入れる」、「大き目のゆったりしたソファーを設置する」、「スタッフへ最高のおもてなしを教育する」といった検討事項が並んでいるだけでは、それは静止画の羅列であり動画とは呼べません。
個別の要素を検討すること自体がダメなわけではありませんし、企画を検討する上で個別の要素の検討は必要です。
個別の要素の検討でとどめず、個別の要素を立体的に構成して動画のようにイメージできる状態にすることがストーリーで考えるということなのです。
個別の要素を検討するための「リーンキャンバスの発展版!アイデア言語化ワークシート」はぜひこちらをご覧ください。
そのためストーリーで考えるには、
・時系列を意識して、
・複合的な要素(ユーザーを流入させ使い続けてもらう仕掛け・運用や教育といったサービス提供側の取り組み等の要素)でどういう効果が生み出され、
・利用者をどのような状態にして、
・その結果、競争相手との違いを作れるかどうか
を図示化し言語化していきます。
先ほどのカフェの例ですが、実は1996年にスターバックスコーヒーが日本に出店したときの事例の一部の要素です。このスターバックスの事例をもとに下記にストーリーで構成してみます。
※あくまで「ストーリー」という考え方をスターバックスに当てはめた事例であり、スターバックスがストーリーで考える企画の手法やストーリードリブン型プランニングを導入しているわけではありませんのでご注意ください。
企画をストーリーで考える理由
では早速、企画をストーリーで考える理由をさきほどのスターバックスの例を織り交ぜながら3つのポイントで説明します。
💡Point1. 複数の要素を洗い出すため(サービス)
スターバックス日本出店時の事例では、直営展開を起点として細かいコントロールを効かせることで「店舗」「立地」「メニュー」「教育」という主要な要素をスタバ品質で作り込むことができます。
他のカフェとは異なる、高級志向と全面禁煙といった差別化を図り、ターゲット層を女性客として他との違いを明確にしました。
これらの要素を組み合わせ、サードプレイスを実現し顧客へスタバ体験を提供しながら、リピート・口コミへ広げ、当時目標としていたWTP(willingness to pay製品やサービスに対して消費者が自ら喜んで支払う価格)の向上を実現しました。
単発の要素で生み出される価値や効果は限定的になりがちです。たとえユーザーに見えている部分の提供価値がシンプルであっても、その裏には複数の要素が組み合わされていることが多いです。スターバックスの例以外にも、巷で流行っているサービスで、単一の機能だけや単一の要素だけで成り立っているものはごく稀です。成功するサービスは、多様な機能や価値を組み合わせることでユーザーに支持されています。
ストーリーで整理していくことで企画を成功させる複数の要素を出しやすくなります。そして複数の要素を組み合わせて整理することで、他社とは異なる自社優位な違いを創り出しやすくなります。
💡Point2. 障壁を見つけやすくなりリソース投下ポイントを明確にするため(実行管理)
引き続きスターバックスの事例です。禁煙化し雰囲気のよいおしゃれな店舗を作ったとして、本当に女性客が来店してくれるでしょうか?また、サードプレイスの実現がうまくいったとしてリピート顧客は増えていくでしょうか?
日本市場に参入するため、スターバックスは当初、日本市場を深く理解しているサザビーリーグという日本の小売企業と合弁会社を設立し協働することで、日本独自の文化に適応したと言われています。また、スターバックスは徹底した市場調査をしながら商品開発の工夫、アプリの提供等で顧客が離れない仕組みを作り続けています。
要素の繋がりには重要度の濃淡があります。この繋がりの調査や検証をする際、貴重なリソースをどこに投下するかの判断が必要です。ストーリーで重要なつながりを図示し明示することでリソース投下の判断に対する合意を得やすくなります。
💡Point3. 当事者意識を高めてプロジェクトチームの一体感を醸成するため(伝え方)
スターバックスでは接客のマニュアルは存在しないと言われています。全国で4万人と言われるスタッフが4万通りの接客スタイルで顧客を出迎えます。
接客スタイルが4万通りあるにもかかわらずどの店舗へ訪れても顧客はスタバ体験を受けられます。これは、各スタッフが「スタバ体験の提供」を実現するための接客を考えお互いに教え合うことで、各々の活動を自分事化しながらサードプレイスを実現しています。
もちろん接客するスタッフだけでなく、メニュー開発する担当者も出店場所を探す担当者も目標とする活動が明確になっていることで自分の活動が次の何につながるか?をイメージしやすくなります。
新規サービス立ち上げや新たな企画を考え実行する際、取り組みを実行するのは組織であり個人です。目指す方向を示して活動と成果の繋がりをストーリーで明示することで、現場で動く個人が当事者意識を持って活動することに繋がります。
ストーリーは人々に共感を呼び起こすとともに、複雑な情報を簡潔に伝えることができます。それは、いま目の前で取り組もうとしていることが、将来何に寄与するのか?を意識させることに繋がります。ストーリーがあることで、プロジェクトの進行中もしくはサービス展開後であっても目的を見失わず、一貫性をもって活動を進めていくことができます。
おわりに
今回の記事では企画をストーリーで考える理由を中心にお伝えしました。
ストーリー考えることのメリットを実感していだけたでしょうか?
後編ではこのストーリードリブン型プランニングの実施手順として、事例を交えた記事を公開しています。下記リンクよりぜひご覧ください。
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