顧客の生の声を収集するための顧客検証計画【企画の道具箱 #16】
みなさん、こんにちは!
企画フェーズにおいて、「顧客の声を聞くのは大事ですよ」とよく言われるものの、どのように顧客の声を収集すればよいのか分からない、という方は多いのではないでしょうか。
この記事では、顧客検証を行う際に考えなければいけないことを整理するための、顧客検証計画の作り方をご紹介します!
顧客検証計画とは?
顧客の生の声を収集するための検証計画
顧客検証計画とは、何のために、誰に対して、どのように検証を行い、その結果を何に役立てるのか、を整理したものです。時には実際のお客様を対象に実施したり、ある程度のコストをかけて実施することもありますので、あらかじめ計画を立てておきましょう。
用途・こんな時に使える!
いつ誰に何を検証するのか整理しておくことで共通認識が持てる
顧客検証は、様々なタイミングにおいて実施することができます。企画フェーズだと、初期段階で「顧客像・顧客の課題に関する検証」を行うこともあれば、ある程度企画が固まってきた段階で「提供価値・収益性に関する検証」を行うこともあります。 実施するタイミングによって、目的や方法も異なるため、顧客検証計画を作ることで関係者間で共通認識を作ることができます。
また、顧客検証では社内/社外のステークホルダーへ協力を求める場合もあります。そのような場合にあらかじめ顧客検証計画が整理してあると、ステークホルダーの理解も得やすくなります。
作り方
顧客検証計画は下記の構成となることが多いです。この記事では、新サービスの「提供価値・収益性に関する検証」を行うことを想定して作り方をご紹介していきます。
検証の目的
検証ポイント
検証方法
検証対象者
作成物
検証スケジュール
評価方法
1. 検証の目的
まず最初に、何のために顧客検証を行うのか目的を設定します。
検証の目的としては以下のようなものがあります。
早い段階で企画の確度を上げ、軌道修正を行うため
企画のコンセプトや提供価値を早めに検証しておくことで、「後々コストをかけてしまってから顧客提供価値が無かったことが分かった」というような手戻りを防ぐことができます。軌道修正する際にも、闇雲に変更するよりも、顧客の生の声を拠り所にした方が確度が高いものになります。
上位層に何かしらの判断をもらうため
企画を実行に移す時に避けては通れないのが、上位層の判断です。企画から実行に進むかどうか(=実行判断)やこのまま検討を継続するかどうか(=Go/NoGo判断)を上位層に迫り、Goをもらうためには、いかに説得力のある企画を作れるかが重要な点になってきます。顧客検証で顧客の生の声を集めることで、説得力のあるデータや数値を収集することができます。
2. 検証ポイント
検証ポイントとは顧客検証で何を確認したいのかというポイントのことです。
顧客検証に至るまでの検討事項や作成物(コンセプトやカスタマージャーニー、ストーリー、画面イメージなど)において、企画の中核を成すような目玉機能やサービスが生まれたり、自信を持って顧客に提供できそうな点、反対に懸念点も出てきたと思います。検証ポイントにはそのような提供価値の核となる点や懸念点を設定しましょう。
提供価値・収益性の検証における検証ポイントとしては、以下のようなものがあります。
コンセプトは顧客に響きそうか、「使ったら便利になりそう」「購入したら○○という悩みが解消できそう」といった期待感を持ってもらえる
→ 架空の企画「体験型店舗」で言うと・・・
店舗とオンラインがシームレスに繋がるというコンセプトは響きそうか、「自分に合った商品が見つかりそう」といった期待感を持ってもらえそうか○○というサービスを利用した顧客は、次に△△という行動を取り、××という感情を持ってくれそうか
→ 体験型店舗を利用した顧客は、2-3回とリピートし、「商品探しのパートナーだ」と感じてくれそうか◇◇円という値段設定で、ターゲットとしている顧客は価値を見出してくれるか、リピートに繋がるか、など
→ 500円で体験型店舗内にリピート顧客だけが使えるラウンジを作ろうとしているが、価値がありそうか
では、どのように検証ポイントを見つけるのか具体的なストーリーを用いて説明します。
簡単にストーリーのおさらいをしておきますと、ストーリーとは、企画を構成する複数の要素を時系列で並べ、要素が組み合わせることでどのような差別化を生み、顧客をどのような状態に導くのかを整理したものです。
※ストーリーについては、こちらの記事も読んでみてくださいね
スターバックスコーヒー日本出店時のストーリーイメージを例にストーリーを組み立てていくと、線の繋がりが怪しい箇所(十分なエビデンスが無かったり、本当にそうなるのか?と疑問が湧くような箇所)やその線が成立しないと企画が成り立たない箇所(=ノックアウトファクター)が見つかってきます。そこが検証ポイントです。
ストーリーの例だと、「 [ 店舗の雰囲気作り ]が良いと [ 女性客の来店 ] に繋がるのか?」「 [ スタバ体験の提供 ] は [ リピート ] に繋がるのか?」といった箇所が該当します。
複数の要素が複合的に絡み合って価値を出していくためには、どこかの線が切れてはいけません。ストーリーの確度が低い繋がりは重点的に検証します。
また、複数の検証ポイントが見つかった場合は、より不確実性が高いポイントやノックアウトファクターを優先して検証するようにします。
どちらが不確実性が高いのか判断が付かない場合は、時系列がより前にある検証ポイントから検証します。まずは上流を固めてから、下流を検証しましょう。
3. 検証方法
企画の検討状況や検証の目的、かけられる期間、コストを総合的に考えて、検証方法を選択します。
下図は、検証方法を「コスト」と「エビデンスの強さ」の2軸で整理したマップです。右上に行けば行くほど、得られるエビデンスは強固になりますが、その分必要なコストも高くなります。企画フェーズでは、かけられるコストも時間も少ない場合が多いため、コストをかけずスピーディに検証できるアンケートやパンフレットを用いて検証することが多いです。
複数の検証ポイントが見つかった場合、全ての検証ポイントを同じ方法で検証できるとは限りません。先ほどの例ですと、「[店舗の雰囲気作り]が良いと[女性客の来店]に繋がるのか?」という検証ポイントに対しては、店舗のコンセプトアートなどを作成してみてアンケートを取るといった方法だとスピーディに検証できます。
しかし、同じ方法で「 [ スタバ体験の提供 ] は [ リピート ] に繋がるのか?」という検証は難しいかもしれません。なぜならリピートしてもらえるかというのは、ストーリーで言うところの店舗の雰囲気×出店立地×メニュー×スタッフという複合要素で成立するか決まるからです。期間限定店舗やテスト販売といった検証方法が適切でしょう。
また、検証方法によっては定量的にデータが取れるものもあれば、定性的な結果しか得られないものもあります。例えば、上位層の承認を得るために行う場合は、定量的データがあった方がより説得力が増したりします。検証の目的達成に必要なデータを集められる検証方法を選択することも重要です。
4. 検証対象者
一般顧客向けなのか、優良顧客向けなのか、はたまたサービスを支える従業員向けなのか、どのセグメントを対象に検証を行うべきなのか考えます。複数のセグメントに対して検証を行うこともあります。
特定したセグメントに応じて、具体的な対象者を設定していきます。可能であれば実際の顧客やユーザーに協力してもらうのが望ましいですが、企画段階で社外に検証を実施することが難しい場合もあるかと思います。そのような場合は、社内有識者(営業担当など実際の顧客やユーザーと日頃から近い位置で業務をされている方)を対象に実施しましょう。
セグメント分けに関する参考記事はコチラ↓
5. 作成物
決定した検証方法に応じて、必要な作成物を定義し、準備します。
顧客インタビューであれば、検証対象者に何をインタビューしたいのかを明確にしてインタビュー項目の設計を行います。デモ動画であれば、検証ポイントを中心に商品やサービスのデモ動画を撮影します。
パンフレットを用いる場合はパンフレットを作成するのですが、何を作ればよいのかぴんと来ないという方も多いと思うので、参考までに紹介しておきます。
パンフレットの内容(例)
解決したい課題・・・顧客課題があると想定しているシーンに共感してもらえるように具体的に記載する
提供価値・・・コンセプトイメージなどを交えて、提供価値や顧客にどのようなゴールを達成してほしいか記載する
サービスの特徴・目玉機能・・・ストーリーボードや画面イメージを用いながら、核となる体験や機能を顧客に具体的にイメージしてもらえるように記載する
提供価値の根拠・・・なぜ提供価値を自社が提供できるのか、という根拠を記載する
サービス仕様の詳細・・・提供価格の想定やその他決まっている仕様があれば記載する
6. 検証スケジュール
作成物の準備、検証対象者への協力依頼/リクルーティング、検証実施、結果の取りまとめ、評価、といった一連の流れをスケジュールに落とし込みます。
気を付ける点としては、以下の点があります。
作成物の決裁プロセスは事前に確認する
社外に顧客検証を行うケースですと、作成物も社外に出ていくものになるため、想定していたよりも上位層がレビューや決裁をする可能性があります。その場合、想定よりも時間がかかりますので、決裁プロセスは事前に確認しておきましょう。
検証実施期間は長めに取る
検証対象者の都合に合わせられるように期間は長めに取っておきます。また、途中で検証対象者の都合が悪くなってしまった場合や追加で検証が必要になった場合にも、バッファ期間があると対応しやすいです。
7. 評価方法
検証結果で得られた顧客の声を、どのように取り扱うのか、検証計画を立てる時点で認識合わせしておきます。
定量評価が可能な場合は、具体的なアクション案を認識合わせしておくことができます。
体験型店舗の例で言うと・・・
休日ピークタイムにラウンジ利用の待ち時間が20分以上発生した場合は、休日利用料の設定を検討する
店舗購入3か月間のオンライン購入者の割合が40%以下だったら、「店舗購入後3か月以内にオンラインで使用できるクーポン券」を検討する
定性評価の場合は、定量評価と異なり具体的な基準を出すことが難しいです。そのため、顧客の声が想定と異なっていた場合に企画フェーズのどこまで戻って考え直すのか事前に認識合わせしておくと良いでしょう。顧客の声を反映することが最善だとは言い切れない場合もありますので、検証前にどこまで顧客の声を反映するのか目途を付けておくと良いでしょう。
体験型店舗の例で言うと・・・
会員登録時に求められる情報が多いという顧客の声があるかもしれないが、求めている情報はパーソナルなサービスに必要なものなので、極端に減らすことはしない
混雑時に入場制限がかかることを懸念する顧客の声があるかもしれないが、通常の店舗とは異なるラグジュアリー感を醸成したいと考えているため、入場制限の廃止は検討しない
ここまで書けたら顧客検証計画は完成です。
検証に必要な作成物を準備し、顧客検証を実施していきましょう!
おわりに
今日は、「顧客検証計画」の作り方をご紹介しました。
顧客の生の声を聞くことでしか得られない情報があるため、顧客検証は非常に重要な活動です。顧客検証計画をしっかり立てて、効率的に実施できると良いですね!
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