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2024年2月22日(木)の300字小説

 私の勤めている工場(こうば)には、猫がいる。名前はチビ太というが、もう成猫なので全然チビじゃない。オスのトラ猫だ。
 工場の仕事は和傘を作る仕事である。努めて6年目の私はまだまだ新人みたいなもので、重要な仕事は先輩たちに任されている。私の仕事は、掃除などの雑務が中心だ。
 チビ太に餌をやるのも私の仕事。いつも先輩に「役得だな」と言われるぐらいチビ太は工場で可愛がられている。
 ある日私が事務作業をしていると、チビ太が死んだ蝉を持って来た。一説によるとこれは猫のマウンティングで、狩りのできない人間に自慢をしているらしい。
「お~、でかいの取ってきたね、チビ太」
 頭を撫でてやると、チビ太は得意そうな顔をした。
おしまい

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