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【詩】わたくしの美しい娘よ

わたくしの美しい娘よ
作:hachi

醜く美しい わたくしの娘よ
あなたは醜さを知ることで
美しさを知りたがった
だから二つを『箱』に入れた。
大事そうに、しなやかな指で。

残酷でやさしいわたくしの娘よ
あなたは残酷さの深淵を覗きこみ
この手に慈愛を掬いとるのと言った
そして真綿でくるんだ二つを『箱』に入れた
愛おしそうに そっと

愚かで賢いわたくしの娘よ
時間と空間
制限と限界
そこでしかできない挑戦の崇高さを
あなたは深く理解していた
そして喜んで忘却の泉に身体を浸した

貪欲で無欲なわたくしの娘よ
忘却のゲームに夢中になりすぎて
己の一番の欲を思いだせずにいる
そしてあなたは頬杖をつき
宙(そら)を見上げて息をもらす

下と上
左と右
暗と明
空っぽと一杯

端と端を知らなければ「真ん中」はわからない
あなたはそう言い わたしたちに微笑んだ

不安と愛
喪失と獲得
罪と徳
恥と誇り

たくさんのカケラを鞄につめて
あなたは嬉しそうに手をふった

さて
わたくしの美しい娘よ

そこにいなさい

沈黙の中に

自分の真ん中に

そこにすべてはある


開きなさい

自分の手で





















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