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ストレスが地球をダメにする

私が外資IT系企業でやってきたビジネス・プランニングの仕事は、トップ(本社、およびカントリー・マネージャ)の意思決定を支持するという立場上、組織の中のマイノリティであった。

セールス・ファイナンスと言ってもいいし、売上目標設計と予実管理の仕事、と言い換えるとよりわかりやすいかもしれない。人数的にも、2~3人で数百人の営業メンバーが望むのとは違う視点から数字を捉え続けなければならない仕事である。

大きな組織のなかのトップ・ダウンとボトムス・アップはいわば作用・反作用みたいなもので、プランニングはその双方の接点に現れるファクトの推移を見極めていく。多くの人が関わるとそれは不安定で読みにくいものになるが、そこで嘘をつかない数字が共通言語として機能する。

「日本の企業にはそんな仕事はない」という話を聞くこともあるが、少なくとも上場会社は市場に対してコミットしている数字があるんだから、ハイレベルではないはずがない。

それを現場にもしっかり浸透させて、色んな人が同じものを見て動けるようにしましょうというのがいわゆるSFAとかCRMとかである。

ただ、最近のシステムは柔軟であるが故に、目標・ゴール・方向性といったもの(すなわちプランニング)があいまいなままに「みんなで力をあわせて、エイエイオー」とどんどん ”見える化” を進めた結果、現場はインプットに疲弊し組織は多すぎる数字に溺れて迷走するという現象はあるのかもしれない。「船頭多くして船山に登る」というたとえ話があるが、プランニングの概念なしに漫然とまわしている日報を置き換えたようなシステムを導入したら失敗するのは当たり前だ。

そこでつい流行のティール組織とか目標なし経営とかを標榜したくなったそこの大企業の経営者(そんな人はいないと思うけど)ちょっと待った!それは組織が進化した先の別の経営課題がある世界なので、今このレベルが出来ないことを言い換えたって、逃げ込める場所にはならない。

企業を辞めてから3年が経って、最近は全然違う種類の仕事をすることが多いのだが、まあ久々に、あれはやっぱり「みんなの気持ち」なんか構ってる暇がない…というか、そういうものによろめいた瞬間に役立たずになる、根源的にラディカルでストレスフルな仕事だったなあということを思いだした。当時は、タイムプレッシャーと心理的反作用との闘いで、常に丹田に力入れてないと放り出されそうな波乗り感が楽しくもあった。

そう、「ストレス」とは一概に嫌なこととは限らない。当事者としては克服した時に大きな達成感を得られる要素でもある。それに慣れると癖になるんだけど、無茶が過ぎると時差でボディーブローのように効いてくることもあるので注意。

まあ、控えめに言っても、心がふにゃっとしていて頭がぼんやりしている時間の多い今の私には、もうあのような働き方はできない。

本日のBGM: ザ・ストレス(このPVのどこが「中近東バージョン」?中華料理店に見えるが…とつっこみながらつい見入ってしまった)

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