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ゲームの点数レビューが与えた影響

昨日は数字に騙されてはいけない!いう記事を書きました。

世の中にある数字は嘘をつかないにしても、その数字を編集したり、見せてくる人が意識的、無意識に限らずバイアスがかかっているので受け取り方には注意が必要だということを書きました。

今回は、長きに渡って当たり前のようになった「ゲーム」というエンターテインメントを点数レビューしていることで世の中に与えた影響などについて書いてみたいと思います。


▼代表的なのはファミ通のクロスレビュー。泣く子も黙るクロスレビューだとは業界内では評判でしたが、本当かどうかはふれませんw


ゲームの点数レビューが与えた影響


ゲームの点数レビューは今に始まったことではありませんが、一番有名なのはファミ通のクロスレビューではないかなと思います。あえてクロスレビューとしている点が秀逸で、いろいろな編集者やライターが同じタイトルをプレイして、それぞれの感性、指標で数値化。+100〜200Wで簡単なコメントを添えるわけですね。


利点:客観的な判断が即時にしやすい


■商品特性にマッチ
ゲームソフトは買わないといいのかどうかが分からない

ゲームソフトというのは、5800円以上の購入をして封を開けてプレイしているみるまでその作品の品質や中身が把握できません。それゆえ、インターネットでのカスタマーレビュー等がない以前はそれしか参考指標がなかったわけです。

ユーザーにとっても、バイヤー側(小売店)にもありがたい。さらにはレビューする側も求められているので、誰も損はしない形が出来上がっていました。


利点:低品質のものをある程度選別できる


ゲームレビューについての利点として、玉石混交に発売される低品質な商品をユーザーに掴ませないという理由も機能していました。

そういう点でも流通、顧客層への指標としてはとてもありがたい基準としても活きていました。実際問題その作用はあるとも思っています。

実際、ファミコンブームの時もそうでしたが、プレステ、セガサターン大活況期の1995年以降は、1週間で30本〜40本の新作が出ることもあり、ユーザーは何を買えばいいのかの指標が難しいですし、小売店側も何を仕入れればいいのかの判別がむずかしく、そこに大きな工数を裂くことができませんでした。

それを1つ1つプレイしてレビューして点数化してくれていましたので購入者視点としてはとてもありがたいことでした。

レビューする方も大変だったと思います。

私も実際レビューに参加することもありましたけど、レビューってすげー時間がかかるうえに責任が重いので正直仕事としては割りに合わないw

実際、ゲームソフトの大活況時代の時は1日に6〜8本の新作ラッシュです。これを毎週レビューする?地獄っすw

<Playstation>
1994年(全17本)
1995年(全132本)
1996年(全415本)
1997年(全468本)
1998年(全580本)
1999年(全627本)
2000年(全512本)
2001年(全265本)
2002年(全226本)
2003年以降(03年全46本、04年全2本)

<セガサターン>
1994年(全8タイトル)
1995年(全144タイトル)
1996年(全319タイトル)
1997年(全351タイトル)
1998年(全215タイトル)
1999年(全17タイトル)
2000年(全3タイトル)

<スーパーファミコン>
1994年(全370タイトル)
1995年(全360タイトル)
1996年(全152タイトル)
1997年(全29タイトル)
1998年(全17タイトル)
1999年(全14タイトル)
2000年(全4タイトル)


デメリット:
新規参入で点数が低いものは今後も売れにくくなる


著名メーカーやブランドがある会社は仮に1本失敗したとしてもその後の復帰は相対的に容易いですが、新規参入メーカーがいきなり悪い点数をつけられた場合、再起不能になる可能性が高いというデメリットはあります。

これはレビューが悪いというわけではなく、そういうことが起きやすいというのは、昔も今も変わらないということです。

商品の特性上というのもありますが、ゲームは1本作るのに相当なお金がかかりますので、1本失敗すると再起不能になることも多いという点で、リカバリー(修正が効かない)不能な商品の一発勝負はかなり難易度が高いということですね。

画像1

ファミ通のクロスレビューで「3」「4」などが着いたものはほぼ致命的のお墨付にはなるものの、これを逆手に売れたタイトル、著名度を上げたタイトル、メーカーもある。
その一例が上の画像の一番左「デスクリムゾン」をリリースしたエコールソフトウェア。社長もこれを機会にメディア露出が増えたわけだが今も現役。鋼のメンタルを持つ人にはお構いなしか。

▼画像参照元


デメリット:
疑うことや考えることをやめる


これはそもそも人としての特性でもありますし、情報過多の弊害です。情報過多になると人は取捨選択が面倒になるので、基本的には右にならえで流行っているものや売れているものを買っとけばいいやという発想になります。

そうなるとどうなるのか?

とりあえず点数が高いものを買っておけとなるわけです。

だから情報が多い時ほどユーザー数も拡大するのですが、売れるものと売れないものの差がどんどん極端に広がっていきます。


影響:
政治支配力が高くなってくる


情報の強力性が高まるとどうなるのか。

これは一般論ですが、いつの時代も、影響力が大きいものが現れると、そこが業界基準となる指標やルールを作るようになっていきます。場合によっては権威性を誇示するものも現れます。

そして、自社の利権を支配するために、他社に対して駆け引きをするようになる。ということです。これが商慣習でも歴史であり、その通りになっていったというわけです。

そうすると一般店舗でもそうですが、取り扱う商品ラインナップなども異なってきます。これがメディア側に起きていったということになります。


情報革命と共にユーザーの教育レベルが向上
用途が変わる雑誌の立ち位置、ゲームのクロスレビュー


ファミ通を代表とするゲームのレビューは一般市場受けしました。

しかし、2000年頃からは、インターネットの本格的な普及や、購入経路の変化と共に、購入者側が自分でリサーチすることも多くなり、購入に関する意思決定の情報収集能力や、購買時の学習レベルが高くなりました。

Amazonのカスタマーレビュや、インターネットのレビュー、SNSの登場です。

その頃から徐々に購買者は雑誌のクロスレビューだけではなく、お友達が推薦するか、知り合いがプレイしているか、誰かと情報が共有できるかという観点などの比重も大きくなりはじめ、購買決定の判断としてのクロスレビューの価値が徐々に弱くなり始めました。

そのため、各ゲーム雑誌側はネット情報との差別化、または市場影響力を持つファミ通の路線とは異なるコンセプトの打ち出し、ポジショニング強化をしていくことになりました。


メリット:
コンセプトが別れた媒体が生まれる

その結果、雑誌媒体ではPlayStationとファン向けに強い電撃系(メディアワークス系列)、Beepからの血を受け継ぐSEGA専門誌+業界ネタが多めのソフトバンク系列、任天堂系の情報につよい雑誌と路線が確立。

それぞれのクロスレビューもより精細な情報が付属されるようになったり、各媒体のレビューに対するアンチテーゼとしていろいろな切り靴が現れました。

ファミ通は購入指標のわかりやすさが徹底されており、電撃系はファン目線やターゲット別にあわせてレビュアーが明確化。やり込み要素やキャラクター、シナリオ等に言及することが多く、ソフトバンク系列は徹底的にやりこんだライターのするどい分析+読者投稿によるレビューを分けて掲載といった感じです。


余談:レビューの点数は買収されていたのか?


ゲーム雑誌だけでなく、レビューの点数はお金で買収されているんじゃないのか?ということがどうしてもつきまとってしまうわけですが、それに関してはそういうことは一切ないことを松山さんが書かれています。

まぁ実際私自信もゲーム雑誌の編集をやっていたときにレビューもやっていましたけど、そういうことは一切なかったですね。



まとめ:点数市場が生み出したもの


1つは、点数を支配する人が出てくると、市場支配のヒエラルキーが生まれるということ。しかしこれはメリットとデメリットがあり、メリットとしてはこれをアンチテーゼとして、差別化するべく、新しいコンセプトのものが生まれる可能性があるということです。

2つめは、数字によって市場コントロールをしやすくなるということと、同時に、一部のユーザー自体の疑いの目も強くなるということです。

3つめは、数字や客観指標を用いない、ファジーな評価軸や判断軸が生まれるなど、新しいイノベーションが起きることもあるということです。シンプルに言えば商品利用時の感想とかがその一例ですね。


私たちがやること


そもそもレビューは偏った視点を避けるため、クロスレビューという複数の視点を取り入れているわけですが、それでも万能な評価は難しいわけです。

結局人が持つ価値観を感じることは千差万別なので、どんなにすぐれたレビューであっても1つの指標にしかならないよねということですよね。ただしそれがどうしても指標にはなりやすいですし、数字やランキングは人が動きやすいものでもあります。

そのため、よりよいレビューや参考になるデータを出すのであれば、レビューをする人の価値観や立場、どういった人なのかが補足されていれば、そのレビューする人に近しい人の購買決定材料にはなるのではないかと思います。

また、繰り返しにはなりますが、世の中に出ている評価、情報は自分の中で自己責任で受け止めるということが必要ですし、数字が出ることによる問題や不正が起きていることも事実です。

私たちはそういう情報に支配されないように情報を責任持って受け取ることが必要ですし、きちんとした情報リサーチ能力を高めることも同じように重要だということを繰り返しお伝えしたいと思います。

いただいたサポート費は還元できるように使わせていただきます! 引き続き読んでいただけるような記事を書いていきたいと思います。