新規ゲーム開発時のリスク管理3点をゲームプロデューサー視点で書いてみる
創業3期目、まさに今私が直面していること、ここ2〜3年で改めて直面したことなのでメモがてら書いておく。
ゲーム開発をする際に避けたい3つのこと。
リスク管理3点を書いてみる。
書いていて思ったけど、
これは会社員時代からほぼ変わらなかった。
基本的にはどんな立場の方にも当てはまるが、中でも、独立していて、勝負をかけようとしている中小の方にこそお伝えしたい。
また、心折れた開発者や、何をどうしようという方のためにも参考になれば幸いである。
その前に結論から。
一番大事なことはこれ
❶資産を残せる工夫を心がける
ゲーム開発は多くの資産を消費する。だからこそ資産を残せるようにしたい。資産とは自分の知識、経験だけでなく、人、モノ、アイディア、お金も含む。プロジェクトの離散とともに毎回手放していてはもたない。
よくない事例としては法人であり大グループでありながらも知見やナレッジが一切共有されない縦割り組織の場合だ。
これはたまにIP(知的財産)関連を取り扱っているがゆえ、社内だけでもナレッジに守秘義務が課せられる場合があるが、それを除いても会社的な体制や派閥の問題でナレッジが共有されないこともよくあるのだ。
これは経営者からしてみたら無駄以外のなんでもないので改善したい一番の要素だ。人と人でつながることはあるけれども、シンプルにもったいない。
資産活用で世界随一なのがドラクエシリーズやポケモンだ。家庭用、スマートフォンなどでも横展開、シリーズ展開が多くされているが、データ構造の作り方やキャラクターデータの持ち方、管理方法がエグい!
❷世にある資産を活用する
中でもすべてを0から開発しようとする、いわゆる「車輪の再発明」はリスクが高い。多くの資本がない限りはそもそもこのチャレンジはやりづらい。できる限り世にある資産を活用したい。
未経験者ほど0から開発をしようとすることが多いができれば最初は既存のものを活用することから始めることがおすすめ。今やゲーム開発ツールもいろいろ揃っているし、Webで作れるものもたくさんある。
❸心をいたわれ。創作意欲こそ最大の財産
1度や2度の挫折で心が折れないように構えておいて欲しい。開発は思うようにいかないことの連続で、想像と違う部分を、想像したいところに起動修正していくことが創作だとも思っている。
では少しだけ本文へ。
ゲーム開発はリスクマネジメントが同居する
私はプロデューサーという立場で仕事をすることが多いからだが、ゲーム開発をする際、できる限り失敗を避けたいという考えがどうしてもよぎってしまう。
これはこれでとても重要なことではあるが、そうするとどんな弊害が起きるのか?というと、新しいチャレンジをできる限り避けようとしてしまうのだ。
これは何を指しているのか?というと、どうしても既定路線にある延長を考えがちになってしまうことである。
ここで1つの事例を紹介する。(読まなくてもOK)
日本のガラケーとiphoneが生まれた背景
例えば携帯電話で日本がスマートフォンを作れなかった理由の1つにマーケティングの弊害だとも言われている。
新製品を毎年出し続けないといけないという状況の中で、できる限りリスクを取らずにそこそこ売れる商品を作り続けたい。
その結果、既定路線のもの、市場を調査した結果から、リスクが少ない安パイなものを作り続けた結果、独自のガラケーというプロダクトが生み出され続け、バージョンアップばかりになってしまったという事例だ。
一方でAppleがiphoneを想像できたのはジョブズの功績も大きいが、本当に革新的で世の中を変えようという発想をし続けた結果のプロダクトが先にあり、それを世界に広めていった結果が今に至っている。
Appleの場合はプロダクトが先で、マーケットは後という考え方が強いが、ジョブズはプロダクトを得るためにソフトウェアやサービスの面でもロビー活動をしていたことは有名だ。
プロダクトの魅力を爆上げするために、重要なソフトウェアとサービスであるitunesに楽曲提供をしてもらうために大物を独自に口説きに行った話は誰もが知っているのではないだろうか。
それはさておきとしても、プロダクト単体で考えてみても、iphoneはガラケー全盛期の時代に日本で市場リサーチしても、恐らく出てこなかった、出てきたとしても、「こんなの売れないだろう」と相手にもされなかったのではないかと言われている。
実際、iphoneが発売されたとき、日本では「なにこれ?売れるの?」ととても懐疑的だったのは記憶に新しい。
新しいアイディアや世の中になかったものはいきなり市場で受け入れられることは珍しく、最初は誰しも懐疑的である。これはゲームでも同じで、ガラケーのゲームが出てきた時やスマホ向けゲームが出てきたときも、有識者ほど「誰がこんなものにお金を払うんだ」と馬鹿にしていたものだ。
ゲームの新しいアイディアも最初は受け入れにくい
話を戻すがゲームの場合はどうだろうか。
ゲームについては正直すでにゲームデザインとしては完成されているものが多いので、側やテーマを変えても「あぁ、こういうものなんだね」と気付けることが多いので、完全に新規で斬新で画期的というものはほぼ存在はしないだろう。
けれども開発の現場においては、新しいことをやろうとすると、途端にハードルが馬鹿上がりし、研究予算も嘘のように跳ね上がる。
ではこの資金的リスクをどうすればいいのか?ということになる。
リスクをできる限り回避するためには、既存の技術やアセットを使うこと
資金的なリスクを回避する上で必須の要素が既存の資産、アセット、技術を使うことである。
大企業の場合は今後数十年の繁栄を想定した上で、自社エンジンや技術を開発しようとすることもあるが、中小企業がこれをやると間違いなくリスクの方が優ってしまう。
そうするとそもそもの創作活動に支障をきたすため、基本的には自社の技術や知見があればそこを活用した方がいいし、既存のアセットなどを購入した方が遥かにコスパがいい。
中でも開発のランニングコストはできる限り抑えたいし、費用もできる限り抑えたいところでもあるからだ。
既存のアセットを使うとアイディアがひっぱられないか?
その通りでもある。
たとえば新しい表現をしたいのに、既存のアセットや技術がやりたいことを実現できないとしたらどうするのか?
だが、その時に初めて既存技術や資産に改良を加えて拡張をしていけばいい。
まとめ
ゲーム開発をされている方ならば誰しも避けたい失敗。できれば売れて欲しいし、できれば開発費は回収したい。
そもそも、ゲーム開発において失敗、大失敗は何を指すか?だが、大きく大別するとこの3つだ。
1:大きな負債を抱えてしまうこと
2:開発してきた知見、資産、人材が残らないこと
3:メンタルがやられて創作意欲を失うこと
「1」と「2」は会社としては致命的だが、個人単位でみると活動自体はなんとかやっていける。
一方で「3」は経営者としては別に構わないが(別事業をやればいいだけの話なので)、創作者としては致命的な傷を負ってしまうので、できる限り避けたい。
しかしながら、何かとお金の部分や事業的にうまくいかないことは創作意欲や心をへし折るには十分な破壊力を持つ。それでも強い心を持ち続ける秘訣としては「失敗はつきものである」ことを受け入れることに他ならない。
あと失敗しても死にはしないということだ。
余談
話がそれるが、プロジェクトが失敗傾向になると、なぜ人が怒ったり責めたりするのかについては、管理者の給与やボーナスが絡んでくるという部分が1つ原因としてあるからだ。
正直ここを取っ払ってしまえば、創作したい人って無料でもやりたい人が残るだけなのではないか?とか思ったりもするが、それは完全なる妄想の世界でもあったりするので、今回はこの辺で終わりにする。
開発、がんばろう!
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