コンシューマとアプリゲームの「企画」「ゲームデザイン」の違い
ゲームプロデューサー、うきょうです。
この話は昔からよく取り上げられるのですが、久しぶりに改めて話題に登ったので、少し自分なりにまとめてみました。
コンシューマとアプリのゲームデザインや企画、コンセプトが「なぜ違うのか?」については、結論からだとビジネスモデルが違うため、ビジネスモデルに合わせた収益構造ができる設計にする必要があるから、ですね。
そのため、企画者としての知識の使い方、スキルの活用方法、開発設計そのものが異なる部分が多いということになります。
イメージとしては、コンシューマ(家庭用ゲーム)には職人気質のクリエイティビティが必要で、アプリゲームの場合にはマーケティングやセールスマン気質の要素が多めにある必要がある、ということが私なりの考えです。
●序文でのまとめ、整理するポイント3つ
❶ビジネスモデルが異なる。
❷ユーザーに体験してもらうゲームデザインのゴールや、実装するコンテンツ内容が厳密に異なる。
❸つまりは要求する内容物、発想の視点や観点が異なる
ということです。
意図して設計するものが違うので、求められるものも結構変わりますよというお話になります。
どういうことでしょう?
👨🏫 簡単に解説します。
🐶 教えてくれワン
唐突のいっぬ!
それはさておき、最初に整理するとこういう違いがある。
【図表】家庭用ゲームとアプリゲームの違い。課金要素、課金要素が与えるゲームデザインの部分など
話を戻して、❶つめからより詳しく噛み砕いていきます。
❶ビジネスモデルの違い
●家庭用ゲームの場合
プレイするためには、ハードウェアを購入し、そしてソフトウェアを6800円を出してから、初めてプレイが可能になります。
つまりゲームを遊ぶには初期投資が必要です。お金を払ってからプレイする。これが家庭用ゲームのビジネスモデルとなります。
▼お金の払い方、遊ぶまでの流れ
【購入】→【プレイ】
・課金率100%(プレイしている人は皆お金を払っている)
●アプリゲームの場合
原則無料の従量課金(ガチャ、スタミナ購入、コンティニューなどが一般的)式のアプリの場合は、ハードウェアはスマートフォンの投資は必要ですが、ゲームソフト自体は無料で入手可能です。
ゲームを遊ぶだけなら無料で楽しめますが、ゲームをプレイしているうちに課金させる、課金してもらう仕掛けを多分に散りばめており、プレイした後に課金をして収益を上げる。これがアプリゲームのビジネスモデルになります。
▼お金の払い方、遊ぶまでの流れ
【無料DL】→【プレイ】→【課金】→【継続課金】
・課金率は約1~10%前後
※フリーミアムの広告収益モデルはまた別の観点とスキルが必要になりますので、今回は除外します。ハイパーカジュアルのビジネスモデルはこの項目とはまた異なります。
●アーケードゲームの場合
おまけで1つ付け足しましたが、アーケードゲーム(ゲーセン用ゲーム)の事例も付け足しておきます。ビデオゲームをプレイするには、ゲームセンターに足を運び、さらに、そこで筐体を見て、100円を入れてビデオゲームをプレイするというビジネスモデルです。
基本的には連コインしてもらって収益を上げるビジネスモデルとなります。これはゲームの設計としては一番ハードルが高い収益モデルですね。
いかにして継続させるのか?という観点もそうですが、お店に足を運んでもらわなくてはいけないという物理的制約も高いので、正直今のご時世ではビデオゲームでのビジネスモデルとしては割りに合わないことが多いですね。
その代わりとしてはUFOキャッチャー、カードを利用したカジュアルビデオゲーム(子供向け筐体)、メダルゲーム辺りが比較的浸透しているほうですね。
▼お金の払い方、遊ぶまでの流れ
【ゲーセンに行く】→【100〜500円でプレイ】
・課金率は未知数
👨🏫ビジネスモデルが異なること=お金の払い方に違いがあることがわかったね。
🐶ビジネスモデルが異なることと企画が異なることとと、どう結びつくんだワン?
👨🏫そうだね。これだけではちょっとわかりづらいから、続いてゲーム内容(ゲームデザイン)についても触れてみよう。
それ以外でも家庭用ゲームとスマホアプリの違いなどを括るとこんな感じになる。
❷ゲームデザインの違い
👨🏫 続いてはゲームデザインについて。
ビジネスモデルが異なると、ユーザーに体験してもらうゲームデザインの優先度(ゴール)も異なるんだ。
🐶 どういうことかな?
👨🏫 たとえば家庭用ゲームの場合は、プレイしながらだんだんと操作方法などを習得していき、「操作していることや、体験できていること、自分の操作がうまくなっていることが面白い!」というフロー体験をしながら、そのまま熱中して、クライマックスに突入。エンディングを迎えるゲームデザインになることが多いよね。
できるかできないかというハードルを、努力やアイディアで攻略していくというところが楽しい、達成感を得られるというゲームデザインになっていることが多いんだ。
👨🏫 けれども無料のアプリゲームの場合は、明確なハードルやストレスとなる部分が意図的に(わかりやすく)設けられており、目の前に提示された武器やキャラを入手して、指示された行動を取れば明確に攻略しやすくなるというゲームバランスやデザインが設計されていることが多い。
アプリゲームのデザインは、適度に与えられるストレスと、そのストレスを排除する方法が明確に用意されていることが多く、プレイヤーに自由度を見せてはいるけど実は少ないという設計が多い(厳密にいうと、特定の行動に誘導するための演出や行動を選択したことがあなたは正しい!というような過剰演出や優越感でフロー体験に持っていくことが多い)。
🐶 なんで「楽しい!」とか「爽快感」を体験させる方法を、家庭用ゲームとアプリゲームで違うのワン?
👨🏫 いい質問だね。それは、アプリゲームの方では、プレイヤーをいい気分にさせて(してもらって)、お金を払ってもらうためだよ。
そのため、アプリゲームの場合は、目の前にある特定行動を繰り返すことで目の前のストレスを排除したり、先に進んだりする爽快感が多く仕掛けられていることが多いんだ。
さらには、そこに相対的(誰かと比較した基準)な価値を感じさせる仕掛けもふんだんに用意されており、また、金銭的価値(レアな装備やキャラ)を運や努力で獲得する嬉しさ、感覚を刺激する仕掛けが多いんだ。
🐶 なんだかむずかしい話だワン
👨🏫 簡単にいうと、家庭用ゲームは買ってもらうまでが割と勝負ポイントで、買ってくれたあとはそのゲームが楽しかった! だから、次回作や、関連作品、または同じ会社のファンになって、次も買おうっていう心理的状態になってもらうことが1つのゴールだね。
一方でアプリの方は、入り口は無料なので、いかにしてこのゲームを良いものだと感じてもらって、お金を払ってもらったり、誰かに勧めてもらったり、継続してプレイしてもらうことがビジネスとしてのゴールなんだ。
ゲームという媒体を設計していることは変わらないけど、お金をいただくための工夫として何をデザインとして盛り込むべきなのか? どこでどういう価値を持ってもらって、どういう行動をしてもらうのか?という点が明確に異なる点がポイントなんだ。
●家庭用ゲームデザインの一例
家庭用ゲームの場合、たとえばswitch版のマリオオデッセイをプレイしているとする。全部でワールド17まであってエンディングが存在する。基本的には一度発売されたのちは拡張は行われず、パッケージ化されたなかで好きなように遊べるというもの。
プレイ方法は、いかに上手にマリオを操作をしてステージを攻略していくかという単純明快なルールではあるが、やれることと自由度は高く、攻略方法は多岐に渡ります。
最大の特徴は、繰り返しマリオを操作をしながら、プレイが上手くなるという点。プレイヤー自信も、マリオの操作が上手くなっていること自体も楽しい!と体感しながらゲームを楽しめるというゲームデザインになっていますよね。
攻略方法も数パターンあるので、ある敵は無視してもいいし、楽し方もいろいろと存在している。それを創意工夫して攻略方法を探すこともまた面白さの1つになっているよね。
適度な課題を試行錯誤とプレイの技術で攻略していく、まさにスポーツのような体験をしながら攻略とエンディングを目標にしていく、ということが家庭用ゲーム最大の特徴だと言えます。
●アプリゲームデザイン+課金の仕掛け1
👨🏫 アプリゲームの場合は、基本的に最初にできることが極端に限られていることが多い(誘導されるケースが多い)。
できる操作も自由度があるように見せかけて企画側が意図する行動をするように仕掛けられていることが多く、ハードルとなる課題も明確に存在している。
これはWebサイトで例えれば、いかにして商品ページの購入ボタンを押してもらうのかという演出が各所に用意されているということ。
ゲーム上で例えれば、プレイしてすぐに強いボスという壁が立ちはだかり、そこがクリアできなくなるシチュエーションが現れる。そうしたときに、この剣を入手することで超えられるんだ!だから、いろいろなことをしてまずはこの剣をゲットしましょうね! という演出が露骨に入ってくる。
これがアプリゲームの簡単なゲームデザインであり、次から次へと新しい壁が登場しては、それを超えるためには新しい剣を手にしなくてはいけない。
その新しい剣は課金で入手することがセオリーになっているか、膨大な時間をかけて入手するかの2択が用意されていることが多いが、その膨大な時間をショートカットするには有料サービスである。ということも多いよね。
剣を手に入れると、目の前の壁を超えられるという明確でわかりやすい設計になっていることが多い点が特徴的。
🐶 なぜそんなに自由度がないんだワン?
👨🏫 それは無料で全てを提供していれば、永遠にゲームへ課金されないからなんだ。
そのため、原則無料のアプリゲームというのは、常に達成感と明確な壁、壁を越える方法を繰り返し提示しては、購入してもらうように誘導する設計になっていることが多いということなんだ。
入り口が無料でプレイできて、クリア方法もいく通りもある場合、アプリゲームの場合は課金手段がかなり限られてくるので、できる限りシンプルにゴールまでの道のりを意図的に見せてあげることを多くしているのはそういう理由もあるんだね。
アプリゲームデザイン+課金の仕掛け2
👨🏫 そしてもう1つ画期的な設計なのが、相対的な価値観や達成感を感じてもらう仕掛け。一言でいうとランキング。他人からの称賛、自己満足度を披露する優越感を満喫できる仕掛けがあることだ。
人間は誰しも人より秀でていたいと思ったり、誰かよりも優位に立ちたいという欲求がある。これを上手に利用したのがアプリゲームのゲームデザインの1つにもよく用いられている。
これがアプリゲームデザインの課金の仕掛け1と紐づけることによって、さらに課金欲求を高めることができる悪魔の実がある。
ご存知、射幸心の実だ。
射幸心(しゃこうしん、射倖心とも)とは、人間の心理として「幸運を得たい」と願う感情のことで、「他人よりも幸せに恵まれたい」という心理状態をも含むこと。
これって、つまり、ガチャやrootboxのようなランダム型アイテム販売形式と最適な組み合わせの要素なのである。
上にも書いたけどアプリゲームの多くは、プレイヤーに対して相対的な価値を意図して作理出すことが多いため、プレイヤーの感情をぐらぐら揺さぶってくる。
👨🏫 あと少し頑張ればあの人よりも先にいけるよ。これをクリアするにはこれがオススメだよ。誰かよりも優位に立てるよ。どうする? 今だけ、ここだけ、あなただけ!
🐶 あ〜〜〜〜!ポチっ(ガチャ10連、3300円)みたいな?
👨🏫 そういう仕掛けになっていることが多いよね。
❸家庭用ゲームとアプリゲームの基本設計が違う
👨🏫 ある程度ハードウェア自体の制限によってゲームデザインが異なるという違いはあるかもしれないが、結論としては、ビジネスモデルの違いはゲームのコンセプトや企画そのもの(ゲームデザイン)にまで影響を与えることが多く、もとめられる設計、バランスなどがそもそも異なることが多い。
たまに家庭用ゲームをそのままアプリゲーム風に課金要素を入れてみたり、アプリゲームのノウハウを家庭用に入れてみようというタイトルがいくつかあったがうまくいったものをあまり見たことがない。
逆もしかりで、家庭用ゲームの要素をそのままアプリにもってきて、システムや装備などをガチャ販売したり切り売りしたが、それもやっぱりどれも成功はしていない。
これはそもそもユーザーに体験してもらうフロー体験や、達成感などの体験の仕方、操作することによって得られる快感がまったく違うからである。
さらにはビジネスモデルの影響もあり、それによってユーザーに伝えるべきメッセージ、感情の動かし方、課金誘導の方法も全く異なる。
👨🏫 そんな感じで、家庭用ゲームとアプリゲームの企画者、企画に求められる要素やシステムはかなり違うという点もあり、ビジネスモデルから設計も異なる、だから使うスキル、求められる企画も違うよねってことなんだ。
繰り返しになるけど、アプリの企画者はどちらかというとマーケッターよりの企画者が向いており、家庭用ゲームの企画者は本当のクリエイティビティ寄りの人が向いているのだと思うよ。
だからアプリのゲーム企画者は、家庭用ゲームの分野で能力を発揮するとしたら、販売までのマーケティングやセールスのフローではないかなと思うし、それ以外では、継続してプレイするためのイベント、キャンペーンの設計、運用かもしれないね。
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