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相手の個性も知ったチーム運営とは?「宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み」古野俊幸

最近自分が働く組織内で、将来を考えるワークショップを行いました。その中のトピックの1つで、チームメンバーの「生まれてからの歴史と大事にしてきたこと」をゆっくりと話す機会がありました。
私が話した方は5年近く一緒に働いており、雑談も良くするのですが、今回ほど昔をさかのぼって話す機会はなかったため新鮮な体験でした。会話の中で特に感じたのは、「この人は自分と価値観がこんなに違うのか」という気付きでした。

例えば私は自分の進路は自分で決めるタイプですが、その方は周りから求められた場所で生きていくタイプであると感じました。
私と価値観が違うのは別に悪いことではありません。ただ、「価値観が違うこと」を理解して関わっていくことで、この人とより良い関係を築けるのではないかと感じました。

相手の価値観を理解できていなかった場合、
色々と自分で決めたい私は良かれと思って、「あなたの思うように、自由にやっていいですよ」と言っているのに、
求められた場所で力を発揮したいメンバーからすると「放り投げだされた」と感じられるかもしれないな、と考えていました。

そんな考えが頭の片隅にあるときに本屋で出会ったのが、本書「宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み」でした。

本書ではFFS理論という自分の個性と相手の個性を理解するための法則を利用して、チーム内の関係を良くしていくための本です。FFS理論自体を初めて聞いたのですが、ソニー・ホンダ・リクルート・LINEなど800社以上で導入されているそうです。自分の無知が甚だしいですね。
こういった類の本はストレングスファインダーで有名な「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」などがありますが、本書はよりチームに焦点を当てている点が面白いと感じました。

「はじめに」において、成功するには自分の個性の理解だけでなく、相手の個性も理解することが大事ということが語られています。今の私の興味にピッタリだと思って読み始めることにしました。

この本を読み終えたとき、私はチームメンバーの個性をどう分類すればよいかを理解しています。そして個性に合わせてどう関わればより良い関係を築いていけるかも理解しているでしょう。

(ここまでの文章は本を読む前に書いています)

FFS理論とは何か

ではまずFFS理論とは何かについてです。FFS理論とは、「人間の強みが発揮できるかどうかは、ストレスの量によって決まる」という考え方です。

ではストレスというのは何かと言うと、刺激です。ストレスと聞くと少ない方が良いとも思ってしまいますが、ストレス(刺激)が少なすぎてもいけません。
まったく変化のない生活・食事・仕事のルーティンを死ぬまで繰り返すのは、それはそれで辛いですよね。そのため自分らしく生きるために、言い換えると強みを発揮するために、ストレスは一定必要なのです。

FFS理論ではストレスの量によって、「自分の強みが発揮できてているか」「弱い部分が出てしまっているとしたら、何が原因か」を考えることができます。

また個人だけでなく、対人関係においても使えます。目の前の相手が攻撃的になっているのは、悪意を持った行動なのか、その人の個性なのかを判断しやすくなります。
相手のタイプを理解していれば、誤解が生まれないようにあらかじめ準備することも可能です。また自分の弱みを補える相手に近づくことで、チームとしてのパワーを上げることができます。

一例として拡散性の人に仕事をお願いすると、「え?その仕事、興味ないんですけど」と言われる可能性があります。ただし、拡散性の人はあなたを攻撃したくてそう言っているわけではありません。
さらに日本人のほとんどが属する受容性の人にとって、拡散性の人はなくてはならない存在です。「その仕事、興味ないんですけど」と言われる前に誤解を解ければ、私たちは今よりももっと幸せになれるのです。

FFS理論の診断結果

本書はFFS理論でわかる個性に合わせた生き方の本なので、まずは何はともあれFFS理論の診断結果を紹介します。私の診断結果はこちらです。

1位 保全性11点
2位 受容性11点
3位 拡散性7点
4位 弁別性4点
5位 凝縮性3点

こういったものは診断結果が出るだけで楽しいですね。一目見た感想としては、「拡散性が1位だったら良かったのにな…」でした。
しかし、拡散性にあこがれるのは保全性と受容性の特徴ということなので、診断結果はどうやら正しそうです。ちなみに逆はないそうです。

宇宙兄弟のキャラクターで言うと主人公の南波六太に近いです。それについても読み進めると当たり前で、日本人のほとんどは保全性と受容性が高いらしく、本書の7割はこれらの人たちのために書かれています。
そのため「保全性と受容性が高い人が主人公である」ほうがネタも多くて、本が書きやすかったのかなと思います。

保全性は挑戦を恐れるのか?

ここからは私の個性である保全性と受容性の内容について、他の個性と比較しながら話していきます。

保全性はやりたいことがあっても、「しっかりと準備してからやりたい」と考える。(拡散性はやりたいことがあれば迷いなく飛び込む)

確かに私も行動に移す前に、「目的は何か」「事前に誰と話しておかないといけないか」「やらなければならない施策は何か」など色々と整理してから行動に移したい人間です。
拡散性の高い人からすると「遅いなこいつ…」「やる気ないのか…」「もっと興味の赴くままにやれよ…」と思われているかもしれません。

ただ、保全性が高い人が挑戦を嫌うというわけではありません。何かを成し遂げたい情熱がないわけでもありません。
保全性は知識やスキルを積み上げていくのが好きであり、難しいことを好みます。そして一度やるときめたら粘り強く成し遂げようとします。

保全性は慎重すぎるあまり、行動に結びつきづらいだけです。会議で意見を求められたときに黙っているのは、何も考えていないのではありません。「正しくコメントしたい」「周りの意見を参考にしたい」と思っているのです。
周りのメンバーがそこを理解できていれば、言いやすいようにフォローすることや、少し待ってあげるようにできるのです。

保全性が高いのになぜ行動派と思われるのか?

この本を読んでいて確かに保全性の特徴として納得はできるところは多かったのですが、少しもやっとしているところがありました。私は会社の中では比較的行動的な部類として周りから見られているからです。
ただし、これも保全性の特徴が関わっているということが書かれています。

「僕はとても慎重で、誰かに指摘されることが不安で仕方ない。だから、徹底的に情報を集めて調べつくして、どんな質問にも完璧に答えようとしているだけです」(P.87)

このコメントには強く共感しました。「まさにその通り!」と。

私も大事な会議の前や偉い人と喋ろうとするときは、事前にしっかりと準備をしたいと思うタイプです。そして当日が近づくほどに、夜目を閉じたときに感じる不安の量が増えていきます。つらいですね。
これは私の心の弱みなのかなと考えていましたが、このコメントを読んでからは変わりました。不安は私が専門知識を武装していくための重要な強みなのです。そして不安が私を行動的にさせているのです。つらいですね。

保全性が高い人は「この領域なら誰にも負けない」と思えるくらいの知識を蓄積し、体系化するのが得意です。確かに私も無意識に参考書のマインドマップを書いたりしますので、まさに本で書かれた通りの特徴です。

この強みを活かしていくためには、「今やっていることは意味のあることか?」と自問することが大事です。
保全性の特徴は何でも吸収していくことにあるので、気づくと意味のないことまでコロコロと吸収しようとしてしまいます。いったん立ち止まって「何のために頑張っているんだっけ?」ということを考えたいです。

受容性の生きる目的は何か?

ではそんな周りからの影響で動いていそうな私たちは、何を目的に生きているのでしょうか。ここでタイプ別の生きる目的をお話しします。

凝縮性:世の中はこうでなければならない。
拡散性:とにかく面白いことがしたい。
保全性:楽にお金を稼ぎたい。
弁別性:夢の中身はどうでもいいから最短距離で達成したい。
受容性:人が喜ぶことをしたい。

私は保全性と受容性が強いのですが、残念ながら保全性の「楽にお金を稼ぎたい」という特徴はとても共感します。投資信託を買いまくって、40歳になる前にFIREしたいと思っているのですから、否定のしようがありません。

受容性の「人が喜ぶことをしたい」という特徴は、どうなのでしょう。壮大でキレイごと過ぎて共感するとは言いづらいです。
ただ周りのメンバーが苦しそうな状況だとフォローしたくなってしまうので、そういった面はあるかもしれません。ちなみに一番成功確率が高い目的は「誰かのため」という前提を置いた時だそうです。

受容性の人は自分の芯がないと思われがちで、「家族のために働いている」と言いがちです。
ただそれを気にすることはありません。自分の子どもの友だちが不幸だったら、自分の子どもも幸せに感じづらいです。そう考えていくと、家族のために働くことを頑張っていけば、自ずと「地域」「社会」へと輪を広げていくことができるからです。少しずつ広げていけばよいのです。

受容性の高い人は決められない?

意見が割れているとき、受容性の高い人は意思決定することが苦手です。「誰かのために」という気持ちを大切にしているので、誰かの意見を落とすことを苦しく思うからです。ただしこれも弱みではありません。
受容性の強みは人の話を聞けるということです。そして話を聞いていく中で、全員が納得する結果を考えていきます。最も多様な意見を尊重して進められるタイプが受容性なのです。ダイバーシティの極みです。

「全員が納得する結果」と聞いて、どっちつかずの結論を想像するかもしれません。ただそれは異なります。
受容性が高い人が目指すのは、「これだけ議論しても決まらないのであれば、AでもBでもどっちでも良いってことだよね」という状態です。

本の中では「公平なじゃんけん」という宇宙兄弟のシーンが描かれています。私もとっても好きなシーンです。

「この仕事、興味がありません」と言われたら?

ここからは保全性・受容性の人が部下を持った時の話です。
もし拡散性の高い人を部下にもった場合、「この仕事、興味がありません」と突っぱねられる可能性があります。これは保全性と拡散性の仕事スタイルのミスマッチに原因があります。

保全性の仕事スタイルはコツコツと積み上げていきます。取り組み方をまず整理して、マニュアルを適宜読んで進めます。
一方で拡散性の仕事スタイルは直感的で高速です。マニュアルはゴミ箱に捨ててトライ&エラーを繰り返します。そして「トライ&エラーする価値がない、結果がわかりきったもの」はやろうとすらしません。

こんなメンバーが現れたらどうしようかなとは思いましたが、なんてことはありませんでした。何も言わなければ良いのです。
拡散性の高い人はとやかく言われるのが嫌いで自分でやり方を決めたいタイプなのです。であれば好きにさせるのが一番です。それがその人の一番高速な働き方なのですから。

もしルーティンワークな仕事を拡散性の人に渡すときは、より自由度を持たせて面白く見せる工夫をするのが良いです。「結論が同じであれば、より最短経路で実行できる策を探してもらっても良いよ」などと。

受容性・保全性のリーダーシップとは?

今までの中で受容性と保全性の人には想像しやすい「強い」リーダーシップがないように見えます。しかし、リーダーシップには色々な形があり、受容性・保全性の人にはその人にあったリーダーシップがあるのです。

最近のGoogleによる研究で、「成果を出すチームでは心理的安全性が担保されていた」という結果が出ています。心理的安全性とは、チーム内で自分の弱みをさらけ出すことができ、自由に意見を交換できる状態です。
「このプロジェクトは失敗する気がするから本当は反対なんだけど、上司が怖いから従おう」と進めた結果、予想通り失敗してしまう話はよく聞きます。業務を一番理解しているのは現場のメンバーなので、メンバーの勘が当たるのは当然です。メンバーの意見が自由にチーム内で交換できる組織であれば、このような失敗は減るはずです。

そしてこの心理的安全性が高い組織を作るために重要な要素が、保全性と受容性の強みなのです。相手の話をよく聞く、相手の気持ちを考える。そういったことができる私たちは、チームの心理的安全性を作れるリーダーになれるのです。
本では宇宙兄弟のエディの話が出てきます。この話も好きです。

受容性が高くても、メンバーを助けてはいけない?

面倒見の良い受容性が高い人には気を付けないといけないことがあります。それは助けすぎてはいけないということです。
受容性は相手を助けようとしてしまいます。面倒を見ることで相手を助けることが嬉しいですし、「自分は役に立っている」という自己承認も持ってしまうからです。

しかし助けすぎては育成の観点から言うと逆効果です。人は自分の限界を感じたときに、一番成長します。限界を経験することは辛いですが、それを乗り越えることで一皮むけるのです。
受容性を発揮して助けすぎると、成長を奪ってしまいます。目の前で困っているメンバーがいればフォローしたくなるかもしれませんが、長期的に見るとメンバーにとってマイナスだ、ということも理解しないといけません。

受容性にとっては辛いことですが、「今は助けずにメンバーを信じて待つ」ということを強く意識する必要があります。答えを教えるのではなく、気づかせるのです。
ここら辺の話はコーチングにも近いと思いますので、今度はコーチングの本を読んでみようと思います。

受容性の勝ちパターン

保全性の人には魅力的な目的を設定してメンバーをぐいぐいと引っ張っていく強いリーダーシップは苦手です。ただし強力な勝ちパターンがあります。

受容性が高い人は人と良好な関係を築くことが得意です。今まではチームの関係をよくする話ばかりでしたが、このチームを築いてきたことを駆使することも考えていきましょう。

私自身、最近思うことがあります。自分個人の能力がそんなに高いとは思えなくて、周りにいる「バリバリと1人で開発できるエンジニア」にあこがれを感じます。
ただ私の強みはそこ以外にあると思っていて、どこかというと「人に頼れる」という部分だと思っています。最近も組織外の人にフォローをお願いしたり、同期に技術的な内容を教えてもらったり、1週間の内に色んな人にお願いをしています。

お願いすること、お願いできる関係を作ることは、割と難しいことだと思います。昔の私はそれが苦手だったから、よくわかるんです。

この「人に頼れる」という特徴を強みと認識すると、割と強いと感じます。なぜなら周りの脳みそを総動員して戦えるからです。これはかなり強い状態と感じます。
この強みを最大限に発揮するには、自分が苦手な人も周りに集めることです。特に私からすると「好きなものを追求できる拡散性」の人と付き合えるようになると、お互いの強みを把握して進められるようになります。

本を読んだ後に、この行動を実施していく

今回は気に入った箇所がとても多かったので、かなりの大作になってしまいました。いくつかあげましたが、直近で意識したい行動を3つ列挙します。

・受容性の「誰かのために」という目的を、周りに広げて考えていく。
・受容性が高いけど、メンバーを助けすぎずに黙って気づいてもらう。
・拡散性の高い人と関わっていく。

宇宙兄弟も久しぶりに読み直してみます。


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