笹の船で海をわたる 角田光代


こんなに主人公に腹が立つ小説、ある?あるか?
というくらい共感できず、何を伝えたいかも理解できず、
自分の国語力に萎える本は久しぶりに出会ったかもしれない、、

主人公である左織の人生を読んでいるようだった
幼少期の疎開先で共に生活したという、左織と風美子

大人になってから「偶然」の出会いを果たし、風美子に翻弄されていると思いながら進んでいく左織の人生。
頑固で柔軟性のない左織と、時代錯誤だと左織に声をかけつつ自由に生きる富美子は対極のように感じられる。
そこがまたいいのだが。

私は、風美子が主人公の話を読みたいな、と思った。

疎開先でいじめぬかれた自分を救う言葉をくれた左織。
疎開から帰りバラバラになったあと左織に会うためにいつどこでなにをするか調べあげ、さも「偶然」であるかのように出会い、関係を続ける。

左織はおこり得る出来事に無関心の癖にいざ起こると文句しか言わないが、風美子は起こすためにがんばる人なんだなぁ。
と、一冊読んでの感想。

世の中には左織のように自分が正義でそれ以外が不正解なのを認めたくがない故に諦めるということをするひとが多数いるが、はたして何が正解なのだろうか。
今ほど多様性の認められていない時代に、風美子はすごい進んだ思考、というか、自分だけが正義だと思わない様が終始素敵だった。

終盤、風美子が身近に存在するようになって起こった出来事を、「巻き込まれた」と表現した左織に、いるよなぁこういう、なんでもなんでわたしだけ?いつも被害者って面する女。とむしろ感心したまである。
こういう人は、自分の行動を省みることは一切しないくせに、そのくせ他人のそれには敏感なのだ。
腹が立って仕方がなかった、一週間返してほしい。
そんな本。なのに、読むのをやめられなかった。

角田光代、すごい。

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