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かつて宝飾業にいた私の職歴/後編

前編はこちら↓

後半は、〈ジュエリーデザイナー)と名乗れるところまでやってきた話と、当時の出来事を書いてみます。
前半を公開して後半を書き終え、内容を最終確認していてびっくりしたんですが、実はもう1つ仕事をしていたのをすっかり忘れていました。

美容整形クリニックの受付

全く違う業界で働いてみたいという思いから、美容整形クリニックの受付で数年働きました。
このクリニックも今では無いです。院長が逮捕されてしまったと辞めた後知り衝撃を受けました。私が在籍していた時は違法な事してなかったのに。

クリニックの場所がら、芸能の仕事をされている方もいらっしゃっていたし、芸能事務所との提携もしていて、患者さんも多かったです。私はここで美容整形事情をたくさん知れて勉強になったし、社員特権で医療脱毛や美容施術を無料で受けられました。これは本当にラッキー。
元々体毛が薄い方で脱毛に興味も無かったんですが、社員がやっているのを見ているうちに自分もやりたくなり、顔、腕、脚をやりました。
VIOに手をつけなかったのは、当時ここはどうでも良かったから。VIOを綺麗に無くしてる社員が、毛が無いと楽だよ!と熱弁していてもそういうもんか~くらい。
そんな私がVIO脱毛に着手すのはもっと後になってからです。
もし、VIOやりたいのに迷ってる方がこれを読んでるならはっきりと申し上げます。
迷ってても毛は無くなりませんし、恥ずかしい気持ちもいりません。施術してくれる人は見慣れていますよ。70代のおばあちゃまになる頃には毛は老化による自然脱毛でだんだん薄くなりますが、それまで待つ気がないのなら、医療脱毛へ行って下さい。
医療脱毛の方がエステより料金高いですが、効果も高いです。
医療用と同等とかじゃなくて、医師免許や看護師免許を持ってる人のいるクリニックで扱っている、医療脱毛器。
最強です。グッドラック👍

豊胸(マンマバッグ挿入の手術) 
脂肪やヒアルロン酸はいずれ体に体に吸収されます。当時、クリニックにカウンセリングでいらっしゃる方のほとんどが選択するのは、シリコンバッグを入れる手術でした。
硬くなった(癒着でバッグ周りの組織が硬くなった)バッグ抜去、生理食塩水バッグ破裂、サイズ変更など、様々な理由で手術が行われていました。
何より私が驚いたのは、おっぱい入れたら一生ケアしないといけないって事です。異物を体に入れている訳ですから考えたら当たり前なんですが、
手術してダウンタイムすぎて落ち着けば、一生ものだと思ってたんです。
でもおっぱいは毎日マッサージしないと硬くなる。シリコン自体の耐久年数もあるので、結局抜去するか入れ替えるかになるんでしょうけど、オペして痛い思いして、マッサージも痛くて(抜糸後から激痛のマッサージが始まる。痛いから手を抜くと癒着して、またそれを剥がす作業をするので患者さんは絶叫します)シリコン寿命が来たらまたオペして痛い。ってなんの修行やねん!
脂肪吸引、顔のリフトアップなど、お電話で説明するのに必要な知識なので見学させてもらいました。

元々院長のワンマンで、社員や患者さんと合わないっていうのは多々ありました。(お給料はいいですが離職率は高い業界です。)先輩社員がどんどんいなくなり、私はまた主任という肩書だけ押し付けられました。(前の主任にお給料の話聞いた時、少し手当があると聞いてたので何にも無くてびっくり)忙しいのに人がいない、辞めていく、しかも院長のパワハラのせいで出勤して来ない社員に、出勤しないと給料支払わないぞと言え。という始末。
もう巻き込まれたくないという思いから辞表提出。
聞いた話だと、辞めた後もクリニック内はいろいろ大変だったようです。
最終的に違法医療によるの責任者逮捕という結末。
その後、個人経営の工房に転職しました。

宝飾製造の工房

3ヶ月で辞めた所以来の制作側になりました。
ここは職人のおじさん(以下、経営者)が1人で営業していて、教室と下請けメインの工房です。私の仕事はレーザー刻印がメインの雑用でした。
普段はジュエリーやアクセサリー加工の一部を依頼され、その工程だけやるというのが多く、原型を作る。とか、完成までやる。とかはほとんどありませんでした。

アーティストの物販用アクセサリーの加工もたまにあって、
覚えているのは5人の東方神起の初期のグッズと、イエモン吉井さんのグッズ(他もあったけど忘れちゃった)の刻印入れ。

私は高校からイエモン大好きで、(オックスフォード留学中にロンドンへ遊びに行った時、偶然イエモンがロンドンにツアー来るってライブポスターを発見したんです。対バン形式でロックバンド2組とイエモン。小さめのライブハウスの最前列で楽しかったな~)
こういった形で好きなアーティストのアクセサリー制作に携われた事は、人生の中でも相当嬉しい経験でした。
その後、東方神起も好きになちゃうんですが(元ビギスト)、この時はスルーでした。

そしてこの頃、経営者が事業拡大を狙って楽天でインターネットショップを始め、それに伴い新会社を設立しアルバイトから社員へ。オリジナル商品を制作し、ジュエリーデザイナーとしてデビューする事ができました。
わ~私おめでと~!
〈デザイナー〉って別に誰から認めてもらったから名乗れるとかじゃなく、自称でもいいと思っています。
私はこれでお給料稼いでる、という基準で〈ジュエリーデザインナー〉って言ってもいいなと自信が持てました。

商品

当時、K10地金の商品が比較的人気で(低価格だから)、流行りに便乗してリング、チェーン付ペンダント、ブレスレットをメインにK18のリングも少し揃え、鍛造でプラチナリングも受注生産していました。
当時流行っていた、地金板から切削で切り出すネームプレートも作っていて、どこのお店も似たようなフォントだったので少し変わったフォントで展開したんですが、個性的すぎてそこまで売れませんでしたね~。
どんなものかお見せしたいのですが、私の名前しか持ってなくて加工してみたけど使えませんでした😔名前を晒せない意気地なしをお許しあれ。

〈サンプル〉K10 PinkGold(チェーン付きペンダント)
作っておいて何ですが、全く着けません。
だって私のブランドではなく仕事で作った物なので、好み以外もたくさん作ります。

お花のようですが、ハートを4つ合わせたデザインです
割と厚みがあります
裏面こんな感じ

〈サンプル〉K18 Diamond Ring
正直載せたくないリング。見てわかるヒドイ出来です。
ダイアを留めている爪が、磨き工程で楕円になってしまっています。
ちゃんと円で作ったんですが経営者曰く、綺麗にしようとやると削れ過ぎてこうなっちゃうんだ・・・。
原型の爪を修正しました。

修正しようがこのデザインは良く引っかかるので着けません。
他にもいろいろありましたが私の手元には残っていないです

鍛造リングははっきり言って彫金教室で作れるものです。
良く言えばSimple is Best。丸線を甲丸にして指定サイズにリングに加工、綺麗に磨き、最後レーザー刻印でさっと磨いて検品し、綺麗に箱詰め。
素人からしたら決して楽ではありませんが、悪い言い方だと楽して利益を出そうという経営者の考えた商品です。

工程

デザイン→原型制作(ジュエリー専用3D CAD、樹脂で抽出)→シルバー原型/外注(ある程度の加工で重さを決め、K18、K10にした時の金額算出)→OKなら原型をゴム型でとり、WAXで鋳造へ/外注→鋳造に不備が無ければ加工して製品へ/外注→商品撮影、楽天ショップ掲載→顧客管理、新作制作など・・・これの繰り返し
(※外注はここで出来ない工程)

制作側になった事で、職人の日本での稼ぎの低さや(ヨーロッパは職人の給料は内容に見合った給料だったと、アメリカ・ヨーロッパで働いた外国人クラフトマンが話していました。自分が作りたいものを手造りして、それが見合う金額で売れて生活できている人なんてほとんどいないです)いかに低コスト、それ相応の加工で利益を出すかっていう、賃金の低いジュエリー製造業の悪い部分を痛感した時期でした。(他の業界も似たようなとこありますよね)

例えば定価¥5.000-のアクセサリーを、どこまでしっかり検品するか。
どの程度のキズをNGにするかという所です。数十万円のジュエリーはそこまでする価値と報酬がありますが、加工賃や納期の少ないものはやるに値しないのでやるなと言われます。検品で戻って来たものだけやり直せばいい、手を抜くところは抜いて賢く仕事をしなくては、金額に見合わないのです。
それくらい安い工賃で巡ってくる仕事。この工賃でできないなら他行くよ、仕事欲しい所はたくさん知ってるから。とか言われちゃいます。
悲しいけど現実です。(その仕事を持ってくる人も、結局安い工賃で引き受けてる中間業者であったりする)自分の趣味ならいくらでも時間をかけ手間をかけられる。でも仕事は納期と工賃が決まっています。
単価安くても数をこなしどうにか会社の利益にする。そうしないとお給料も支払えません。

少し前に載せたリングはこの時制作したのもです。

これは自分の30歳の誕生日に自分へのプレゼントでデザインし、加工、石留までやりました。
脇のダイヤは多分他のリングとかから出したやつだと思う。ダイヤは買った事ないので。
値段は当時でトータル4万くらいでできたかな?K18も今より安かったです。
とっても気に入っている私の宝物です。
(クロスのモチーフデザインで温めていたモデリングを、応用して石まわりの飾りに使いました。この辺の記事も今後書きたいと思います)
石は国際宝飾展(IJT)で買ったルース、ロードライトガーネットです。

IJTはジュエリー好きにはたまらん展示会ですが、業者・企業以外の一般人は入場料が数千円かかり、私達関係者は招待状が届き無料です。
ここでそんな高くないルースをいくつか購入していて、自分の作品に使おうと思っていたのにそのチャンスが無かったルースも、今後記事にしたいな。

職人には適正工賃を払ってほしい

当たり前の話をしますが、手作りは高いです。
材料費だけではなく、作り手のスキルとそれに当てた時給が値段です。(もちろん内容が見合ってない金額なら誰も購入してくれませんが)

ここで働いていた時、ある女性がジュエリーリメイクの依頼で来社されました。彼女と経営者は以前からのお知り合いの様でしたが、あからさまに彼女を煙たがっていて、目の前でも仕事を受けたくないと言っていました。
彼女はお金持ちのお家の一人娘さんで(私より年上)、おそらくお母さまからお譲り受けたジュエリーのリメイクを、直で経営者(職人)に注文され、ものすごく工賃をケチるというのです。
その日も、大きな黒蝶真珠、大きな白蝶真珠、大きなアコヤ真珠とデザインの古いリングを持参され、
「この材料(地金も含め)を使って足りない分と手間賃で30万でお願い!これ以上出せないの、お願いよ!」
と全くひかず、経営者が押し負けて注文を受けていました。

手間賃とは工賃ですね。よく、ジュエリーの店舗でリメイクを受け付けていたりしますが、もちろお店の利益込みの料金なので、30万円以上はかかってしまうでしょう。無駄なお金を払いたくないという気持ちはみんな同じです。(中間業者を省けば安い。)彼女の場合、デザインや細かい事は何も言ってこない分いいと思うけど、経営者は相当嫌がっていました。
実際30万円でギリギリだった訳ではなかったと思う。単純に直接依頼してくるのが嫌だったんじゃないかな。私はむしろ好意的に受け入れていましたよ。社交的で来社するたびに何かお土産をくれましたね。

ちょっと脱線しますが、先日ヤフオクでハンドメイド刺繍(私のもう1つの趣味)作品、どんなもの出店されてるかな~と覗いたら、¥4.000-つけていいくらいの作品が¥2.000-くらいで売れていて、がっくりしました。
もっと高くていいよ!あなたの作品はその価値がある。
集客用の商品ではなかったし、自分のショップページへのリンクも無かったから、本当に趣味程度で販売してます・・・みたいな感じでした。
値段じゃなく作品を気軽に楽しんでほしい。とか、始めたばかりなので設定金額は低くした。とかなのかもしれませんが、もっと自信をもって販売してほしいなと思いました。

日本人の作る物は丁寧でしかも安い。もうそう言える時代ではなくなりつつあると思います。
いいものは高いんです。全てが値上げしてるのにお給料に反映されきってない。趣味にしろ仕事にしろ、しっかりと見合った金額でなければ稼げない仕事だというイメージがつき、人が育たないと思う。
いいものなのに安いのは、企業努力と大量生産です。中にはコスパ最高と思う商品もあると思いますが、必ず原材量費+利益の値段なので、大体はお値段通りです。

御徒町で小売りしている店舗の商品は、ほとんどが大量生産でしょう。予算が決まっていて良いジュエリーが欲しいのなら、職人に作ってもらうのではなく、お店で購入をおススメします。職人に作って欲しいならしっかり工賃を支払ってあげてください。しっかり値段の相談をすればお互いが納得できる形にいきつくと思います。

さて話しを戻します。
経営者のモラハラが目に余るようになり、(初めからからセクハラモラハラ発言はあったが無視したり我慢していて、それも良くなかった)それに対し言い合いするようになりました。
経営者への不信感はどんどん増していき、交友関係を否定してきたり、私の後をつけたとか言い出しました。(え?何のつもりだろう)私のいないところで知人に対し、私に手を出すなとか(出されてない~)、俺にはヤクザの知り合いがいるんだ。とか気持ち悪い事言っていました。
ヤクザだから何だ?私は警察官の知り合いがいるよ。だから何だと思うだろう?同じだよ!!
限界も近いなと思っていたある日、勝手な妄想で友人関係を否定してくる事に我慢できず、何度も言ってますがそれは違いますし関係ないです。だからやめてください。次またそれを言ったら辞めますね。と宣言し、翌日言われたのでその日辞めました。

辞めたいなと思っていた頃、仕事で取引のあった会社の方にセクハラの相談していて、それならうち来なよと誘っていただけたのでそのまま転職。
そして工房も後に廃業してます。🤬(XXXX!)

最後は最悪な辞め方になってしまいましたが、実際ここで習得したスキルは多かったです。
・3DCAD/ 3Design
・ライノセロス
・Draw

レーザー刻印の人

この会社は原型から完成、大量生産まで一貫して製造していました。
厳密にいうと私は職人ではなかったです。レーザー刻印や他の作業を担当する人でした。なので、WAX取りとか検品とかできる事なら何でもしました。
朝から晩まで(遅い時は24時まわる)働いていたので、お給料を趣味や娯楽に使う暇がなく、どんどん貯金できたのは良かったです。
ただ全部をやっていた会社なので仕事量も多く、内容としてはすごく大変でした。
朝9時から始まり(掃除や準備があるので30分前くらいに出勤)早くて19時くらい終わりだったかな?(滅多に無いけど)社員は私含めて7人程。

K18 Pink Gold Diamond Ring
自分用に作ってもらいました。


K18 White Gold Diamond Ring
私のお気に入りリングです。

Pt950 Diamond Ring

リングの内側に石を留めるっていう、当時からの流行り。
着けてる時は見えないのにこういう加工って粋ですよね、ピンクダイアです
対面にはブルーダイアです。ダイアの台座は横にハートの穴が開いているデザイン

楽しい職場だったし一番長い期間在籍していました。お世話になった社長家族もとっても親切でいい人でしたが、最終的に倒産・・・。
倒産に至った経緯も知っていますが、もしその問題を当時明確にしていたら、会社は続いていたのかな?そうだとしたら私は今も独身だったかも。だって夫とは、その後職種を変え勤務先で知り合ったんですから。ですがそれはまた別のお話。

リーマンショック、東日本大震災、宝飾業から離れてしばらく経ってコロナ、景気のいい話は当時全く聞かなかったし(実際無い)、悪い環境は急に改善はしないでしょう。パワハラ、モラハラ、マタハラ、ブラックが当たり前の時代から働いている人にとって、何が悪いのか?どうしてハラスメントとして受け取られるのか分からない。だって相手の事考えてないからです。相手の立場になって考えたらそんな言い方しないし、そうならないようにしっかりコミュニケーションを取ると思う。
人間関係って難しいですが、間違えたら素直に謝る、小さな事でも相手に感謝を伝え、話し合い、相手の意見を否定しない。また、相手に過剰な期待をせず、自分の価値を他人に決めさせないで、自分と周りにいる人を大切に誠実に生きていきたいなと思っています。



こうやって昔の事を書く事ってなかったので、忘れてたのにどんどんその当時の事を思い出せて自分でもびっくり。いい出会いから二度と顔も見たくない人、嫌な出来事も今なら笑って話せるし、あの時こう思ってたけど今考えるとこうだったかもな~と、改めて客観的に整理するができました。

前編・後編と最後までお付き合いくださった方、ありがとうございました。

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