見出し画像

涙があふれて止まらない

 私が文筆で対価をいただけるようになるきっかけを作ってくれた法人から原稿の依頼があった。文字数は300文字。はじめはたくさん書くことが難しかったが、今では短く簡潔に書くことのほうが難しい。〆切に間に合わせて入稿すると、返信のメールに「感動で涙があふれて止まらない」と感想の言葉をいただいた。

 子どもの頃の私は国語が大の苦手だった。武者ガンダムは好きだったから普段使わないような漢字だけは読めたが書くほうは全然で、漢字ドリルをサボって終わらせないまま小学校を卒業してしまった。句読点の打ち方はわからないから読点は一切打たない。段落の分け方もわからないから段落も変えない。当然読書感想文や作文で褒められた記憶なんてなかった。

 そんな私でも、書かずにいられない体験が、瞬間があった。書くことでしか表現できない領域を目の当たりにした。自分の実力では伝えられないかもしれないと、奥歯を噛み締めながら今でも必死に書き続けている。さながら”雨の中、傘もささずに踊っている”ような。

 ただのモノマネでしかない。どこかで誰かが既に書いていたようなことだと膝を折ったり、思いついて大事にとっておいたらミスチルやaikoの歌詞で先に使われてしまったり(ファンの方ごめんなさい)して。それでもめげずに懲りずに書き続けるしかない。まして飽きたからなんて理由でやめる権利なんてない。これは惚れた弱みだから。書くことは祈ることだ。誰に読まれることがなくてもそれだけで尊い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?