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はらへったら読む・ブリカマの塩焼き

近所のスーパーの鮮魚売り場で買ったブリカマを三本焼くのでキッチンに飛び込んだ。
ブーメランのようなカマは大好物だ。
調理が簡単な割には、とても旨い焼き魚である。

霜降り用湯の準備のため、電気ケトルに水を入れスイッチをパチンと入れブリカマの塩焼きの調理を開始することを告げた。
買ってきたカマをトレーから取り出してからヒレを料理ハサミで半分ほど切り落とし、ステンレス製ボールにカマ三本を投入して電気ケトルから蒸気が吹き出す前まで待った。
電気ケトルが沸騰を感知してカチンと鳴る前にスイッチをオフにして、カマにめがけて熱湯を投入。
シンクの中は真っ白になり、カマも何も見えなくなった。
そうか、自分の眼鏡が曇っているのか・・・気づかなかった。
面倒くさく眼鏡を頭にずらしてから、熱湯の中でトングを使ってカマを洗うように泳がせた。
ボールの中は白く濁り油が浮き、その一帯は魚屋さんの臭いがする空間になったが、すぐにボールの熱湯はすべて流し、水道水でカマを洗い始めた。

指先で、どす黒くなった血合いを取り除きながら水で流し、細かい部分は爪楊枝を使い、きれいにした。ウロコは付いてないようであったが、丹念に指先で確かめる。
油で汚くなったフライパンをきれいにするような集中しての作業だ。

風呂上りのようなカマを、キッチンペーパーでよく拭いてあげた。
ほんとうに風呂上りのように白くふやけて、のぼせている。
ガスコンロのグリルを引き出し、「くっつかないホイル」というものをひいてから、カマの皮を上にして三本並べたら密状態となった。
これが三密か? 違うな、まっ、いいや。
四人家族は大きなカマを四本どうやって焼いているのだろうか? そんなこともふと頭を過った。
料理酒をカマにチョロチョロ垂らしてから、両手を使って塩を適量まんべんなく乗せた。

グリルを点火して上下弱のガスに切り替え10分のタイマーをセットした。
少ししたら、パリパリ、カリカリ、ジュー、と焼ける歌が始まった。
・・・
ガスコンロが10分を知らせたので、一刻も早く焼け具合を知りたくてグリルを引き出して、腰をかがめて、骨董品の焼き物を見極めるように三つのカマを確認した。
軽く焦げ中まで火が通っていることであろうということが分かったので、再度グリルに押し込み、上下強のガスに切り替えて、いっときグリルからの歌を楽しんだ。
パリパリ、カリカリ、ジュー、が大きくなってきた。

この焼き物は間違いなく完成している。
再度グリルを引き出し、先ほどより更に焦げ目がいい具合になり、信楽焼のようになったのを確認しながら、熱々のカマを皿に乗せ配膳した。
配膳してからも皿の上では、その歌は終奏であるが、ジューと歌っている。

カマが食卓に上れば、他の皿には申し訳ないがカマから真っ先に箸をつける。
箸でカマの皮を少し裂くようにしながら真っ白な身をごっそり取り出し、口に運び一口目の味を楽しんだ。ふっくらとした身に、さらにしっとした脂が乗っている。
期待を裏切らなかったので、ひとりでこくりと頷いた。

次は、皮と真っ白な身をいっしょにいただくとする。
パリっとした皮付を食べると塩がガツンとくるので、真っ白な身と皮をふたつの味覚用アンテナで感じながら丁寧に咀嚼した。
真っ白な身と皮の調和は、鶏の唐揚げと共通するところがある。
おかずはこれだけで十分だ、白飯をたくさんかき込める。

鮭のパリパリに焼いた皮と比べても、かなりいい勝負をしている。
仮に雑誌で魚の皮おいしいランキングがあったら、鮭の皮が不動の一位としても、ブリカマの塩焼きの皮もかなり上位にランキングしているはずだ。
再び、ひとりでこくりと頷き、ビールを流し込んだ。

●ブリカマの塩焼き(三人前)
ブリカマ 3本
塩 豪快に適量に
料理酒 大さじ1~2
霜降り用熱湯 600cc

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