見出し画像

黒字なのにリストラ?! 業績に関係なくリストラが起こる理由と回避法

昨年のリストラによる退職者数は、6年ぶりに1万人を超えました。過去、リーマンショックがおこった際のリストラとの大きな違いは、「企業の業績は好調なのにも関わらずリストラが断行されている」というところです。では、黒字リストラが起こる理由とターゲットになりやすい人の特徴は一体なんなのでしょうか?


◆黒字リストラ、どうして起こる?

今回のこのコラムのテーマは「黒字なのにリストラ?!」です。

一昨年あたり前からまた、大企業の人員削減のニュースをよく聞くようになりました。今までの「不景気のための人員削減」という状況とは違います。企業の業績自体は好調でも人員削減を行うタイプで、いわゆる黒字リストラと呼ばれるものです。

コロナ禍が拡がる直前に、大手コンビニエンスチェーンのファミリーマートが希望退職者を募ったところ、800名の枠に1,000名を超える希望者が出たとのニュースが飛び込んできました。

対象者は40歳以上とのことでしたが、全社員(約7,000人)の約15%が3月末で退職したことになります。このリストラクチャリングで年間約80億円の経費が削減できるとのことで、今後はこの経営資源を加盟店支援等に振り向けるそうです。


コンビニ業界2位のファミリーマート勤務であっても、こういった環境変化は起こり得るのです。

思い切ったリストラを行う際、社内のリソースだけで対応するのではなく、外部の人材コンサルティングが介入することが多いのですが、今回は親会社の伊藤忠商事が経営企画部門や人事部門に人材を送り込んで実施していたようです。親会社の意向が強く反映されている施策のようですね。

一見、安定していると思えた大手に所属していたとしても、いつ降りかかってくるかわからない「リストラ」等の急な環境変化が起きた時に、柔軟に対応できるような「キャリアの鍛え方」を、今後もお伝えしていきたいと強く思ったニュースでした。


■2019年、リストラによる退職者数は、6年ぶりに1万人を超えた


昨年のリストラによる退職者数は、6年ぶりに1万人を超えました。東京商工リサーチの調べによると、昨年1月~9月に希望退職や早期退職者を募集した上場企業は、27社。対象人員は1万342人。昨年全体では、リーマンショック後の2010年の1万2,232人を超える勢いだったとのことです。

過去のリストラとの大きな違いは、「企業の業績は好調なのにも関わらずリストラが断行されている」というところです。先述の27社のうち3分の1の会社の業績は好調に推移していました。業種も製薬メーカーや銀行、飲料メーカー、電機メーカー、IT企業と多岐にわたっています。

どんな理由で、業績好調にも関わらず大企業はリストラを断行するのでしょうか。
また、どのような層がターゲットになりやすいのでしょうか。


◆黒字リストラが起こる理由は?
主なリストラ理由を4つ挙げてみます。


■在籍社員のいびつな年齢構成解消のため
とくに1986年から1991年のバブル期入社組の50~55歳の世代はターゲットです。この年代は突出して人数を多く採用していて、年齢構成ピラミッドを歪ませていることに加え、彼らの人件費が会社経営に重くのしかかっていることも多いのです。この層にメスを入れることによって、人員の適正化を図ろうとする企業は多いです。

■新規事業参入等、企業の中長期戦略を見据えた際戦力とされない社員の放出のため
既存のビジネスから新規ビジネスにシフトする場合、能力的に追いついていけない人、新しい技術をキャッチアップする意欲がない人、これまでの自分の職務に強いこだわりを持ち過ぎて配置転換に消極的な人。これらもリストラターゲットになりやすいといえます。

■AIやRPA技術の発展に伴う業務効率化
いわゆる「AIに代替されやすい仕事をしている人」です。
例えば銀行業務がIT化でスリム化された結果、今回のメガバンクの大型リストラにつながったといわれています。銀行業務が、いわゆる「AIが得意とする領域」に親和性が高かったからです。アドバイザリー・融資審査業務の代替等がその代表例といわれています。(…半沢直樹がAIにとって代わられるような気は全くしませんが…)

わざわざ店舗で振り込み手続きしなくても、インターネットバンキングで事足りている。日頃の買い物は電子マネーで決済している。「そういえば最近銀行の店舗には行っていないわ」と思い当たる人もいらっしゃるのではないでしょうか?
この現象は、もちろん銀行業だけに留まらず、幅広い領域に今後どんどん広まっていく傾向にあります。そして、その流れは誰にも止められません。


■『高年齢者雇用安定法』の法改正を見据えたリストラ
あなたが今お勤めの会社の定年は何歳ですか?
日本政府は今、70歳までの就業を目指した『高年齢者雇用安定法』の法改正を行おうと検討中です。ある一定以上の規模の会社に努力義務を課す内容ですが、いずれ義務化されるようになるでしょう。何といっても「一億総活躍社会」です。

年金の支給時期を延長させたい政府の意図によるこの法案、一見「労働者の雇用安定につながり」、「年金受給時期まで安心して働ける職場づくり」に役立つように見えますが、企業側としては(70歳まで雇用するなど)予期していなかった重い人件費負担が課せられることになります。できれば避けたいのが大企業の本音でしょう。

結果、45~50歳前後の社員を対象とした「キャリア研修」が増えているのをご存知でしょうか。今後65歳、70歳まで働くことを見据えて、これまでの自分自身の経験を今後のキャリアにどう生かしていくか見つめなおしてみる研修。外部講師を招いて、人生後半戦についてじっくり考えてみよう。という趣旨の研修を行うのです。

その中には『セカンドキャリア支援制度』『キャリアチャレンジ応援制度』などという名称で外部での第二の人生を検討させるもの、「今なら退職金割増制度適用!」として退職を促すものも多いです。

ここまで読み進めてきた方なら、私たちは「大手企業に就職すれば安定」とは到底言いきれない、長年企業に貢献してきたビジネスマンでも企業からあっさり切り捨てられる時代に生きていることがお分かりになったと思います。


◆リストラターゲットにならないためにできることは?

もう一度、リストラの理由を眺めてみてください。
1つめの「在籍社員のいびつな年齢構成解消のため」、と4つめの「『高年齢者雇用安定法』の法改正を見据えたリストラ)」は、年齢によるものです。
時間は平等。人は誰でも年を重ねていきます。この世代になるまでに、できることを考えましょう。

AIに代替されにくいスキルを身に着けることを検討してみても良いかもしれません。

次回は「AIに代替されにくいスキル」について考察したいと思います。
既にいろいろな方が掲げているテーマですが、読者の皆さまに特に身近に感じていただきたいと考えています。

それでは、またお会いしましょう。ごきげんよう!

キャリアアドバイザーA

よろしければサポートを是非お願いします。現在医療介護系の人材会社に所属しつつ、これまで経験してきたことを「転職しようと思ったこともないひとたち」「転職活動したことがないひとたち」が「転職せざるを得なくなってしまった」ひとに還元できるようにしたいと思い活動を始めました。