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自然栽培とOODAループと人生と


畑で野菜やハーブを育てていると、「これって〝畑〟という世界で起きていることだけれど、そのまま私たちの人生にも当てはまるなぁ」と感じることが、しばしばあります。
また、その逆で、「日常の出来事がそのまま畑の世界でも起きているんだな」と感じることも。

畑からは、野菜やハーブといった恵みを日々たくさんもらっていますが、それ以上に、目には見えない人生の学びをもらっている。

今回はそんなお話です。


「PDCA」と「OODA」


「PDCA(ピーディーシーエー)サイクル」という言葉を聞いたことがあると思います。

計画(P:plan)を立てて、それを実行(D:Do)し、結果を評価(C:check)し、改善(A:action)する。
このサイクルを繰り返していくことで、プロジェクトの精度やマネジメントの質を上げていこうという考え方ですね。

このPDCAサイクル、最近では「ちょっと古い考え方だよね」と言われているそうです。

で、PDCAサイクルに代わる概念として脚光を浴び始めているのは何かというと、「OODA(ウーダ)ループ」。

それぞれの頭文字を説明しますね。

O = observe(観察)
O = orient(状況判断)
D = decide(意思決定)
A = act(行動)

こちらは、観察して状況を判断し、その判断のもとに行動内容を決めて実行するというサイクル。

両者の大きな違いは、スタートが「計画」から入るのか「観察」から入るのかという点です。

なんだか経済のお話みたいになってきましたが、この話を聞いて、「まんま農業と同じだなぁ」と思ったんです。

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自然栽培はまず「観察」から


一般的な農業は、肥料を土に混ぜ込み、決められた時期に合わせて計画的に農薬などを使って野菜を育てていきます。

そこにあるのは、日当たりや土質などにあまり関係なく、比較的条件の悪い場所でも一定の質の野菜を一定量以上収穫できるようにする技術。
ビシッと時期をそろえ、形をそろえて市場に作物をお届けするのですから、計画第一なのは当然です。

その恩恵にあずかって私たちは、季節を問わずいつでも安定した質の野菜を手に入れることができるわけです。

つまり、一般的な農業ではスタートにあたっての「計画」がとても重要ですから、PDCAサイクルはしっくりくるのではないかと思います。

一方の自然栽培は、たとえ綿密に計画を立てても、思った通りにコトが運んでくれないことが多々あります。

例えば、「この場所で玉ねぎを育てたい」と思った場合。

一般的な農業であれば、はじめに肥料をほどこし、玉ねぎの苗を植え付けるという〝計画〟を立てます。

自然栽培の場合は肥料はほどこさないので、まず、「この場所が、玉ねぎを育てるのに適した土かどうか」を観察します。ここが大きな違いです。

玉ねぎは肥沃な土を好みます。

土の状態を観察して、玉ねぎ栽培に充分な状態であれば Go!ですが、もし不足を感じるようであれば、「この状態の土でも大丈夫な野菜を育てるところから始めよう」となります。
(厳密に言えば、自然栽培でももっと能動的な栽培の仕方もできます。受け身すぎては〝業〟として成り立ちませんからね)

これって、観察(土の状態を見極める)→状況判断(玉ねぎに向いている/いない)→意思決定(玉ねぎGo!/他の野菜を育てよう)→行動(植え付け)そのもの。

自然栽培は〝観察〟ありき。「まさにOODAループだ!」と感じた理由です。


先の見えない時代だからこそ
「自然栽培的な考え方」を


このOODAループ、どこから出てきた概念なんでしょうか。

元アメリカ空軍で戦闘機パイロットだったジョン・ボイド氏が考案した理論だそうで、戦場という先の読めない状況下で最適解を出すために導き出されたものみたいです。

刻々と変化する状況を観察して、判断し、行動に移す。
出た結果をまた観察して判断し、次の行動に移す。

自然栽培のみならず、今のこの時代にもとてもマッチした考え方ですよね。

この、OODAループにも似た「自然栽培的なものの見方・考え方」が身につくと、日々の暮らしで起きるものごとに対しても、それに付随する自分の感情の動きについても、客観的な観察と判断が少しずつできるようになっていきます。

さらに。

それが癖付いてしまうと、他をコントロールしようという気持ちが減っていき、起こるすべての出来事には理由があることを理解できるようになり、出来事自体を信頼できるようになる。そんな感覚があります。

これって、とってもラクな生き方でもあるなぁと思います。

目標をもって計画を立てることはとても尊いことです。
でも、計画どおりに進まない場合、ヒトは大きなストレスを抱えます。
失敗したらまた計画を立て直せばいいだけですが、これだけスピードの速い時代にあっては、ちょっと非効率な場面も出てきてしまいます。

それならば最初から計画は立てず、状況を観察して即判断・決定を下し、行動してしまうほうが、速いし、ストレスも少ない。おまけに、直感力も鍛えられます。

畑から学ぶことは本当にたくさんです。

日々のこうした気づきのシェアなどもまじえながら、畑で野菜のお世話をする「自然栽培教室」や、畑の野菜ランチを食べてのんびり過ごす畑サロン「Farm Day」など、畑を感じていただく機会も春から再開したいと思っています。

また近々ご案内させていただきますので、暖かくなったら、ぜひいらしてくださいね。

※ 2021年度限りで、5月から1年間、自然栽培のセット野菜農家向け養成講座も開講します。ご興味のある方は、オンラインショップの詳細をご確認ください。












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