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『パラサイト』

おそらくこの映画は観る人によって受け取り方が違うのだろう。
今まで挫折を経験した事がなく、映画に出てくるような裕福な家庭であるパク一家の側にいた人は、この映画のエンディングが理解できないのではないだろうか。
そして半地下の家族であるキム一家の行動や感情に共感できた人は、どこかで彼らが裕福な家族に抱いた感情と同じものを感じた経験がある人だろう。

坂の上と下で世界は異なり、パク一家の庭には陽の光が降り注ぎ、キム一家の家には酔っ払いが用を足す。
しかし物語序盤はキム一家は貧困から職を得たいという考えが強く、パク一家への妬みのようなものは感じられない。自分たちとは別階層の住人であるパク一家を寄生する対象としと利用し、騙しているのである。それは虫が巣食うようにも思えるし、家の壁を少しずつ浸食していく蔦のようにも思える。
一方パク一家、特にパク夫妻にはキム一家への無意識の差別がある。自分たちは選ばれた人間である自覚と共に、自分たちとその他を明確に区別しているように感じた。

2つの家族は富の面でも対照的だが、家族や夫婦の関係性においても対照的である。貧しくとも家族を愛するキム・ギテク、「愛していますか?」という問いに真っ直ぐ返答しないパク・ドンイク。
自分の力でメダルを勝ち取ったキム・チュンスクと、ただ若く美しく『お飾り』に見えるパク・ヨンギョ。家族の繋がりが強いキム一家に対して、表面上の関係にしかみえないパク一家。
お金があるからといって愛され幸せになるとは限らないが、お金があれば心穏やかでいられるという現実もまた対照的なものとしてこの映画には存在する。

物語はキム一家がパク一家に寄生しはじめ、両者の物理的な距離が近づくと一気に歪んだ空気に呑まれていく。元いた家政婦を追い出し、パク一家を完全に自分たちの『巣』にしたものの、パク一家に徐々に劣等感を抱きはじめるキム・ギテク。そしてある出来事をキッカケに『巣』は崩壊していく。

物語は非現実的な結末を迎える。ただ人の奥にある無意識の差別や、言葉で説明し難い歪んだ感情描写により、どこかリアルを感じる映画だったと思う。


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