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『JOKER』

ー本当の悪は、笑顔の中にある。

アメコミファンではない私は、バッドマンにジョーカーという悪役が出てくるぐらいの知識しかなかったので、もちろんジョーカーがどんなキャラクター設定で、どんな残虐な悪役なのかも良く知らない。

ただ現代社会においてジョーカーになってしまった人間は少なからずいるのではないのだろうかと、先週末この映画を観たときに思った。

そもそも本邦公開前からアメリカではこの映画が物議を醸していた。
社会に虐げられた白人男性が、犯罪者に変貌していく。
これはまるで、アメリカで昨今起こっている、世間から孤立した白人男性の銃乱射事件などを著しているようだと。
映画は混沌としたゴッサムの街でジョーカーが称えられて終わるため、見方によっては犯罪者を肯定しているようにも見える。
只不快な映画と言ってしまえばそれまでかもしれない。でも私は、今の社会について深く考えさせられる映画だと感じた。
もちろん犯罪者を肯定はしないし、いくら孤独だからといって周囲を巻き込むようなことがあってはならない。
では見放した世間に罪がないのだろうか。

アーサーに手を差し伸べる人が、社会があったなら、彼はジョーカーにならなかったかもしれない。
自身の内に眠る悪に気づかずに一生を終えたのかもしれない。
ピエロの笑顔の下で泣くこともなかったかもしれない。

現実社会においても、誰かが手を差し伸べたら救えた人がいたのかもしれない。
実際、銃を持ち込んだ学生にハグをし、受け入れたことで乱射事件を防いだケースもニュースで見た。
動画の中の生徒は抱きしめられて涙を流していた。行き場のない感情を受け止めてもらったことで、その生徒は現実社会のジョーカーにならずに済んだのだろう。

世界に必要なのはおそらく、バッドマンのような悪役を倒すヒーローではなく、助けの手を差し伸べてくれる人や社会に違いない。
ジョーカーはきっと、誰の心の中にも潜んでいて、何かのきっかけで簡単にその闇を露わにするのだ。


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