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目の奥の、前向きな意志の煌めき

こんばんは。
ゆです。

以前一度読んだことがあったけど、何度も読み返したかった村上春樹が書いた『騎士団長殺し』をもう一度読み返しています。

https://www.amazon.co.jp/%E9%A8%8E%E5%A3%AB%E5%9B%A3%E9%95%B7%E6%AE%BA%E3%81%97-%E7%AC%AC1%E9%83%A8-%E9%A1%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A2%E7%B7%A8-%E6%9D%91%E4%B8%8A-%E6%98%A5%E6%A8%B9/dp/410353432X#

村上春樹作品の好きな所は、ストーリーそれ自体よりも、ストーリーを語る言葉、文章の流れみたいなものです。独特のリズムや言葉選びが癖になって、かなり長いのになぜかもう一度読み返したくなるんです。

序盤の中で好きな箇所をピックアップしていきます。

固い大地、無限の空、無数の星

雪はまだ固く残っていたし、夜は冷え込んだが、それまで息苦しいビジネスホテルの部屋で眠ってきたせいで、テントの内部は清々しく自由に感じられた。テントの下には固い大地があり、テントの上には無限の空があった。空には無数の星が光っていた。他には何もない

p51

離婚を切り出された主人公は、なにとはなしに放浪の旅に出る。行き先は決めず、北へ北へと進んでいく。そんな旅の中で、主人公は自由を感じる。この「自由を感じる」描写がイイ。

テントの下には固い大地があり、テントの上には無限の空があった。空には無数の星が光っていた。他には何もない。

「固い大地」から「無限の空」と「無数の星」へとベクトルが向いている。「固い大地」という不動の足場から、「無限の空」「無数の星」へと目線が変わるその動きが、読み手の中の自由をより一層かき立てる。

好き。


目の奥にある、前向きな意志の煌めき

その後、主人公は自分が元妻との馴れ初めを語る。一目惚れだったそうだ。彼女の何に惹かれたんだろうか?

私が妻に惹かれたのもまさにその目だった。目の奥にうかがえる何かだった。その一対の瞳を最初に目にした時から、私の心は激しく揺さぶられた。(中略)私が求めたのは、あるいは必要としたのは、そこにある前向きな意志の煌めきだった。生きるための確かな熱源のようなものだった。それは私にとってお馴染みのものだったし、またたぶん私に不足していたものだった。

p56

「目の奥にうかがえる何か」に心惹かれたらしい。安易に表現するなら、「目の輝き」だけで充分だ。そこを、「前向きな意志の煌めき」と「生きるための確かな熱源」と二度言い換える。「煌めき」と「熱源」。ほんと、グッとくる表現だ。

ところで、「輝き」と「煌めき」のそれぞれから受ける言葉の印象は少し違う。何が違うんだろう。辞書を調べたらほとんど同じ意味だったので、言葉の響きと字面から受ける印象だけで考えたい。

「輝き」と「煌めき」

まず、「煌めき(きらめき)」の方がませていて、オシャレな気がする。日常を振り返ると「輝き(かがやき)」「輝く(かがやく)」の方が、普通に会話で使っていてもおかしくない。

また、「輝き」には動きがないと思う。「煌めき」は「火」を含んでいるからか、「炎がゆらゆら燃えている」イメージを連想させ、動きがあるように思う。

細かいところだが、「煌めき」と「熱源」のワードチョイスは流石だ。


終わり。
早く続く読もう。
じゃあまたねー!

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