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あんときのデジカメ  讃岐の梅のにおい with CASIO EXILIM EX-Z300

(はじめに)梅の木に登る猫がいて鶯と戯れる光景を見てみたいものですが、そういえば梅の木に登る人間を見たこともありません。まあ、そういうどうでもいいことを考えながら近所の紅梅を2008年製のカシオのコンデジで撮影してみました。一足早い春の訪れです。


梅のにおい

 怪奇と幻想に満ち溢れた作風で知られる作家・夢野久作は、短編の名手であることでも有名です。そんな夢野の作品のひとつが「梅の匂い」で、梅の木をめぐる猫とうぐいすのちょっとしたコメディとなっている。ホラー的な作品などアクの強い作品が多いなかでは、コミカルな「梅のにおい」はちょっと異色な作品かも知れません。

 一匹の斑猫が人間の真似をして梅の木にのぼって花を嗅いでみました。あの枝からこの枝、花から蕾といくつもいくつも嗅いでみましたが、
「ナアーンダ、人間がいいにおいだ、いいにおいだと言うから本当にして嗅いでみたら、つまらないにおいじゃないか。馬鹿馬鹿しい、帰ろう帰ろう」
 と樹から降りかかりました。
「ホーホケキョ、ホーホケキョ」
「オヤ、鶯がやって来たな。おれは一度あいつをたべてみたいと思っていたが、ちょうどいい。ここに隠れてまっていてやろう」
「ホーホケキョ、ホーホケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ」
 と言ううちに鶯は、斑のいる梅の木のすぐそばにある梅の花のたくさん開いたほそい枝の処へ、ヒョイととまりました。
(出典)夢野久作「梅のにおい」青空文庫

 「梅のにおいをかぐとおなかが急にすく」という斑に対して、「梅のにおいを嗅ぐと何とも言えないいい心持ちになって、歌がうたいたくなる」という鶯。では一緒に踊りましょうと誘うものの、はなからその意図を見抜かれていた斑は、鶯にかわされて地面へと真っ逆さまに落ちてしまいます。

 原稿用紙にして5枚にもみたいない作品ですが、日常生活のなんでもないことを描写することの難しさと面白さを僕はこの作品を読みながら考えてしまいます


梅の木学問

 それにしても「梅のにおい」に出てくる斑は、「人間の真似をして梅の木にのぼって」といいますが、果たして、梅の木に登る人間がいるのかどうかと問われると、疑問に抱いてしまいます。なぜならば、梅の木は生育ははやいものの大木にはなりにくい樹木だからです。

 「梅の木学問」という言葉がありますが、その消息を物語ったものではないでしょうか。対義語として「楠学問」という言葉も象徴的です。


《梅の木は、生長は早いが、大木にならないところから》進み方は速いが、大成しない学問。⇔楠(くすのき)学問。
(出典)「梅の木学問」コトバンク

 しかし、人間が梅の木に登ってはいけないという理由があるわけはありませんので、登る人間もいれば、それを真似る猫が存在してもちっともおかしなことではありません

 ということで、2月の初めから近所の紅梅が蕾を膨らませてきましたので、その様子を撮影してみました。もっとも寒いこの時期に、徐々に開花していくその経過を見るにつけ、一足早い春の訪れを感じるのは僕だけではないのかも知れません。

 試みに、日の出日の入りの時間を調べたところ、今年の元旦(香川県善通寺市)は、7:10~17:05でしたが、この原稿を書いている2月12日は、6:52~17:44です。日没時間はひと月で40分近く伸びたことになります。


マクロ撮影がちょっと苦手な入門機

 さて、日没時間も伸びては来たのですが、夕方の訪れは早く、……そして仕事の都合上、どうしても夕方に撮影する機会が多いのですが……、コンパクトデジタルカメラにとっては決して撮影条件は良くはないのですが、今回は2008年発売のカシオのEXILIM EX-Z300を機材として選んでみました。

 2000年代の後半からデジタルカメラの潮流として浮かび上がってくるのが女性向け入門機というジャンルです。いわゆる当時のガラケーよりもよく写り、かといってデジタル一眼レフカメラを持つには気おくれてしまうカメラ受容層をターゲットにしたもので、使いやすさや美肌効果など、僕としてはあまりつかうことがない機能の充実したモデルが多いのですが、あえて手にとってみました。

 では、簡単にスペックを紹介します。撮像素子は1010万画素1/2.3型正方画素CCDで、レンズは広角28mmからの112mmまでの4倍ズームで、動画撮影が当時としては少し強力目に作られています(1280×720HD/24fps)。動画撮影は今回使用しませんでしたが、当時の流行はしっかり押さえられたモデルで、ユーザーインターフェースも使いやすいカメラという印象です。

 開放f値が2.6と明るいのは魅力的なのですが、唯一の欠点とも言える点は、最短撮影距離の物足りなさでしょうか。ちょうど、今回はテーマを梅の花にしたので、やはりマクロ撮影が多くなったのですが、ちょっとこれが撮影のハードルになったのは事実です。

 とはいえ、全体としてバランスのよいカメラで、そして当時としてはということになりますが、最初の1台には悪くはないカメラという使用感です。

 ということで、以下、作例です。最初に言及した通りコンディションが悪いなかでは、入門機ながら随分「がんばっている」ことは事実です。拙い写真ですがご笑覧下さればと思います。

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 ということで撮影データ。ベストショットモードで撮影、ISO100、ホワイトバランスオート、露出補正なし。画像は3648×2736(10M)で保存。撮影は2020年2月2日~2月10日。撮影場所は香川県善通寺市。


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氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。