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推しに恋するアラサー

「恋愛にまったく興味がない」

彼氏が欲しくないという時期は過ぎた。
諦めたのだ。
推し以上の男に出会ったことはない。
推しほど顔が綺麗な男はこの街にいない。

私はアイドルの熱烈なファンだ。

デビューする前に見つけて、舞台やライブに足を運んで、うちわを作って応援し続けている。
高校生だった彼も今や立派な男性になった。
色気も出てきている。
それなりに女性経験があるかもしれないが、そんなこと知りたくないし、恋愛の話なんてしなくていいとも思う。

「アイドルとだったら結婚したい?」

恋愛に興味がないということをアイドルとリンクさせて聞いてくる人がいる。
推しは尊い存在なのだ。簡単に結婚とか言わないでほしい。

推しにそっくりで性格も良い一般人がいても恋愛感情に発展するかどうかは疑問だ。アイドルは王子様であって、どこまでいっても一般人とは違う生き物だ。

私のような女に対して世間では「こじらせてる」とか「悟っている」など適当な言葉で片付けられる。
本音はもっと根深いものがある。

女子会での恋バナに辟易していた。
男に振り回されて一喜一憂して報告する子を冷めた目で見ていた。
平凡なスペックの男を選ぶ美人に対して勿体ないと思った。
衝動的な感情にほだされてて、妥協して成立するのが恋愛だ。

気になる人がいたこともある。
しかし、自分よりもいい人がいるよな〜っと予防線を張っていたら何も起きなかった。何も残らなかった私が今ここにいる。

カッコつけてスカしていたらアラサーになっていた。

恋をすること美しいというのは知っている。
少女漫画を読むのは好きだし、映画もドラマもたくさん観た。

私は主人公にはなれない。
正面から戦うのがこわい。自分はきっと負ける。
だったら最初から参加せずにプライドを守りたい。戦わないまま安全な位置で勝った気になっていたかった。

シンデレラみたいにいつか王子様が迎えにくることに憧れていた。

告白されたこともある。
白米をよく食べるやさしそうな人、ごはんが進むくん。
日焼けした活発的な人、ごてあらポー。
切り傷みたいな細さの目の丁寧な年下、ジムリーダータケシ。

自分に好意を持つ男性に変なあだ名をつけた。
やがて彼らはどこかに消えた。

いつでも推しは私の中にいてくれた。
推しだけはずっと美しい。

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