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【映画感想文】ヴィム・ヴェンダース/PERFECT DAYS

ひとり、動けなくなったわたしにその「理由」を問うてくる人と、感覚的な部分で分かり合えることは、この先もずっとないだろうな。
そう思ったあの日、わたしは自分の感受性の豊かさを知った。むろん、その時点でそれが"豊かさ"だとは、気づいていなかったのだけれど。

淡々と過ごしているように見えるヒラヤマの毎日は、彼にとっては全然淡々としたものではないのだろう。彼の目に映る世界がどれほど鮮やかなのか、わたしに彼とまったく同じ景色を見ることはできない。

けれど彼の、繊細で、優しくて、気高い、透き通るほど美しい心と、そんな彼の目で見る世界の輝きを思うと、なんだか胸がきゅーっと締めつけられるのだった。

だからいつも夜は何も考えず、体と心をゆるめ、ただぐっすりと眠ろう。そのままの営みを紡いでいこう。そう思った。

彼にとって(そして紛れもなくわたしにとっても!)、音楽が生きるために絶対に必要なもの、として存在していたことが、なによりもうれしかった。

音楽はいつでもそこにある、のだと思う。
わたしがほんとうの自分を抱きしめたいと願うとき、わたしはただ、音楽を抱きしめればいいのだと思う。
抱きしめて、あふれる感情をとことん味わったら、ゆっくりと眠りにつこう。

そして夜は明け、あたらしい朝が、明日もかならずやってくるのだ。

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