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比べてみましょう:似ている、似ていないのあれこれ

トルコ語学習の最初の段階では、当然のことながら基礎的な単語がたくさん出てきます。先日は講座で、「リンゴジュース」という表現が出てきました(賢明なる読者諸氏におかれては、あの教科書のあのあたりか…というのがわかる方も多いでしょう)。

そう、トルコ語ではリンゴは…

elma

ですね。で、「ジュース」というのはsuという語を使って表します。suはもちろん「水」を表す語ですが、この「リンゴ」と「水」を組み合わせて、いわば熟語というか、複合名詞を作るわけです。

(1) elma su-yu
リンゴ 水-所属3単
「リンゴジュース」

(1)のような例では最後の名詞suに、3人称の所属接辞がくっつくというのがポイントでして、この語尾はいったいなんじゃろか、というところから日本語とトルコ語の「似ていないところ」に学習の関心が向いていく、ということはございますね。

さて、この「リンゴ」が出てきたとき、ほかの果物はトルコ語でなんというのだろうか?と思うのが人情というものでしょう。ということで、リンゴのついでに、いくつか単語をピックアップして紹介することになります。

(2)(トルコ語)
çilek いちご
portakal オレンジ
limon レモン
kiraz さくらんぼ
nar ざくろ 
muz バナナ
üzüm ぶどう
(参考) meyve くだもの 

ただ、講座中にこのあたりを一つ一つ紹介していくと、脱線もはなはだしくなるよな…ということで、簡単にあとでリストにして、資料としてPDFで配布したりすることになっていくわけです。

さてトルコ語を始めて目にするみなさま、上の各語をご覧になってみてのご感想はいかがでしょうか?少なくともレモン以外は、知らないと想像できないような綴りになっているような気がしますね。あるいは、なにか外国語を勉強されている方なら、あっこの語はX語のこれと同じだ、とかそういうこともあるかもしれませんが。

ということで、一部外来語をのぞいてトルコ語はトルコ語として、単語を一つ一つ覚えていくということになるわけです。これ、現地にいれば、習得するスピードはたしかに早いのですよね。

スーパーに入れば、すぐこの果物はトルコ語でなんというのかが表示されていますから。その点で、現地で暮らすということは買い物一つが即勉強になるという強みはありますねえ…。

おっと、話が少しそれました。で、せっかくなので…とテュル活民は思うわけです。例のトルコ語とよく似ていると評されるアゼルバイジャン語ではどうでしょうか。

(3) (アゼルバイジャン語)
alma リンゴ
çiyələk いちご
portağal オレンジ
limon レモン
gilas さくらんぼ
nar ざくろ
banan バナナ
üzüm ぶどう
(参考) meyvə くだもの

いかがでしょう。たしかに似ているものも少なくありません。トルコ語のリンゴ、elmaはアゼルバイジャン語だとalmaで、むしろアゼルバイジャン語のほうが母音調和(1語内が同じグループの母音になるという例のあれですね)に忠実だと思ってしまいますね。ほか、「レモン」と「ざくろ」、「ぶどう」あたりは同じ綴りになっていて、発音も同じでよさそうです。

微妙に違うのは「いちご」と「さくらんぼ」、「オレンジ」あたりでしょうか。アゼルバイジャン語だとportağalで、gに記号がついた文字になっています。これはガ行のときの舌の位置で、口蓋の後ろのほうの柔らかい粘膜あたりに舌を近づけてガ行の子音のように発音する音と考えていただくとよいでしょう。トルコ語ではこの部分がportakalですから、そのままカ行の子音のように発音します。調音位置は同じですが有声・無声の違い、あと閉鎖音・摩擦音の違いがあるというわけです。

音声学では、いわゆる「有声軟口蓋摩擦音」と言われる音です。実際の音もリンク先で聴くことができますので、ご参考までに。

で、個人的にウソやんと思うのがサクランボですね。アゼルバイジャン語はgilas, トルコ語がkirazですか。似てるっちゃ似てるといえますが、語中のlとrの違いはこれはどうしたことでしょうか。ここが違うというのは個人的に大変興味深いところです。

辞書を引くと、トルコ語のkirazはギリシア語から来た外来語とのこと。ではアゼルバイジャン語のほうは…?ひょっとして、ペルシア語でしょうか。ということでググったら、こんなページを見つけました。

ほへー。面白い。
あとは、「バナナ」もそれぞれの全然借用した先が違うように思いますね。muzとbanan.なるほど…

とやっていると、あっという間に時間が過ぎていくわけですよ(ここが言いたい!)。たかだか「リンゴ」という単語に出くわしただけだというのに、です。トルコ語の辞書は引くわ、ググって外来語のあたりをつけるわ…気が付けば夢中になって調べてしまっているというですね。

まあそんなこんなで、リンゴ一つでも話は無限に広がっていくということですね。一つ見たら、ほかのものも見たくなってしまう。人間の抗えぬ性というべきなのかどうなのか。かくして、テュル活民は時間を過ごしていくというわけです。

最近することがないとお嘆きのみなさん、ぜひ身近なものをほかの言語でどういうのか、どう書くのかなど比べてみましょう。時間があっという間にすぎていきます。オススメです。

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