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【ご恵贈御礼】『ハレム:女官と宦官たちの世界』(小笠原弘幸著;新潮選書、2022年)

ご献本を賜る機会がここ2週間くらいで突然連続したのはどういうことでしょう。3月末、京都から長崎に帰ってきたら、九州大学の小笠原弘幸先生からこちらの新刊本をご恵贈で送っていただいておりました。

トルコについての本ですし、その意味での関連性はあるとして、歴史学と無縁(のはず)な私がなぜ?と訝る方もいらっしゃるでしょうが、それはまあ最後のほうに言及するとしまして、とにかくこの本ですよ奥さま方。

一言、メチャ面白かったです。面白いし勉強になることが多すぎて、1回読んだだけでは頭の整理が追い付かないほどというべきでしょうか。

私の場合歴史はほぼ知識ゼロというか、なんなら高校時代も世界史の成績が壊滅的だった身です(それくらい、トルコの歴史それ自体に関心を示していなかったまま最近に至るのでした)。さすがに「ハレム」というとき、帯にも書かれているような、俗にいう「酒池肉林」的なものとは程遠いものということくらいは知っていましたが。まあその程度の知識です。

そんな自分だからということはあるかもしれませんが、書いてあることすべてが知らないことばかりで、ただただ勉強になった…という感想です。私自身、「ハレム」と言われるとすぐさま、現在イスタンブルにあるトプカプ宮殿内のハレムのエリアを思い浮かべていたのですが、そこだけがハレムのすべてではないということもちょっと驚きの話。

本当に恥ずかしい話を書きますが、今のイスタンブル大学がある場所、かつてオスマン帝国の旧宮殿があった場所ということすら知らなかったのです。知らなかったというか、興味がなかったともいうべきか。

とりわけ、イスタンブルのヨーロッパ側旧市街エリアは観光スポットが密集するエリアでもあって、なんなら行くのすら避けていたのですが…この本を読んでしまうと、多少の現地で味わうであろうストレスは覚悟のうえでちゃんといろいろと見ておきたくなるなと思わせられます。

その他、同書ではオスマン帝国以前のイスラーム世界の後宮制度についても説明があって、こちらも勉強になりました。トルコ系のイスラーム王朝ですから、オスマン帝国もこの本でいう「トルコ・モンゴル型」の王族女性の待遇(相対的に女性王族が隔離される割合が少ない)を継承したのかと思いきや、実際には「アッバース朝型」の後宮制度が採用されている…というのもうならされる話でした。たしかにそうなんですよね。なるほど。

あとは女性だけでなく、宦官や王子たちなどについても詳しい説明が各章ごとに書かれてあります。宦官の説明に至っては、どうやって男性器を切除していたかまで詳細に説明があったものですから、読みながらヒュッ…となりました。宦官スゲー、という小学生並みの感想も抱きつつ。

全体の感想を一言でまとめると、なるほどハレム自体がかなり王朝の心臓部のようなことになっていたのだなというところでしょうか。とにかく自分にとって情報がすべて新鮮すぎて、何度も読み返す必要があるようです。

トプカプ宮殿から見えるボスポラス。ここに数多のハレム関係者が放り込まれていたのか…と思うと、何も考えずにフェリーに乗ってアジア側とヨーロッパ側を移動していた自分が今まであまりにのんきすぎたのではないか?とすら思うようになってしまいました!小笠原先生どうしてくれるんですか!(イスタンブル;2019年3月撮影)

ここ数年日本でもBSやCSなどで、トルコの地上波で放送されていたオスマン帝国期の長編ドラマが輸入されて放送されていたりしますが、そのシリーズにはまっている人にとっても必読の書でしょう。

また、私自身今までイスタンブルやトルコ国内のオスマン帝国期の歴史的建造物にあまりにも無頓着すぎたなと反省することしきりでした。次にトルコに行くまでにはちゃんと情報を整理しておきたいなとも思います。

みなさんもこれからトルコに実際に行かれる機会があれば、渡航前にぜひこの本を読んでおきましょう。とりわけ、イスタンブル観光のときに見えてくる景色がまったく変わったものにになってくること間違いなさそうです。

またこの本を読んだら、オスマン帝国期の人傑を列伝形式で著したこの本や…

中公新書のこの本も読んでおきたいところですね。

ところで、最後に余談を一つ。著者の小笠原先生とは実は面識があります。アンカラ滞在していた時期に、先生もアンカラにしばらくご研究のために滞在されていたことがあり、その時に知り合う機会があったのでした。

トルコ・中東界隈、専門分野を横断しながら意外に狭い世界だったりするのですよね…。ともあれ、小笠原先生に改めてこの場をお借りしてご恵贈の御礼を申し上げます。

小笠原先生にはアンカラの繁華街クズライ地区のとある場所で、楽しいお話をたくさん伺ったこともあるくらいその節はお世話になったものでした(ご著書をご恵贈くださったのもその縁かと)が、こちらが歴史に関係することについては無知だったことをいち早く察して、自分にもわかる範囲でいろいろ教えてくださっていたのだなと。本を読み終えて、「あの時こういう話のうち何割してくださったっけ…」と改めて自分の不明を恥じた次第です(あるいはこちらが酔っぱらってしまっていて、話を覚えていない可能性もワンチャンあるなこれは)。まあしかし、おかげで次にどこかでお会いした際にはこちらも多少はお話についていけるようになっているでしょう…İnşallah.

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