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ベンチャー企業が早期に行っておくべきバックオフィス構築のポイントとは?

ufuの大橋です。
IPOを目標とするベンチャー企業にとって、避けて通ることのできない課題がバックオフィス体制の構築です。ただ、バックオフィス体制の構築は、避けて通ることができない一方で、重要度の認識の違いから後回しにされてしまいがちとなることも事実です。本格的にバックオフィス体制の構築準備に取り掛かった際に、「もっと早くから行なっていれば工数の大幅な削減にも繋がったのに」と後悔するケースも少なくはありません。

本記事では、シード・アーリー期のベンチャー企業において、これだけは実施しておくべきバックオフィス体制構築のポイントや工数を最小化するための具体的なオペレーションフローについて紹介します。

経験者が教える創業期にやっておくべき事

創業期のベンチャー企業がバックオフィス構築の際にやっておくべき事はどういったものなのでしょうか。
まず知っておいて欲しいことは、『経営活動を前進させる強く効率的なバックオフィス構築は、「システム選定」ではなく「業務やデータフローの設計」により実現することができる』ということです。

多くの企業のバックオフィス構築を支援してきた中で、「しくじりを招く考え方」だと感じたものが2点挙げられます。

1つ目が「決算さえ締まれば大丈夫」といった考え方です。シード・アーリー期ですと、どうしても開発や顧客開発に重きを置いてしまう企業が多く、バックオフィスに関しては期末決算の際に締まっていれば問題ないという考え方を持つ企業があります。しかし、これは少し危険な考え方と言えます。

ベンチャー企業の事業成長において、営業やマーケティング活動、プロダクト開発や採用強化の前進は欠かすことのできない要素です。バックオフィスの価値とは、これらの事業成長に欠かすことのできない活動をサポートする機能にあるのです。
ただ、技術の進歩によりサービスの成長や外部環境の変化の速度は、バックオフィスが管理できる速度を得てして上回ってしまう場合が多いです。実際に「バックオフィスの管理体制が追いつかない」といった相談も増加しています。
全体の業務フローを設計することなく個別業務をこなすことを優先してしまうと、後から修復を行うことが困難となる点は、バックオフィスも他の領域の業務も同様です。そのため、いかに初期の段階でバックオフィス領域において柔軟性を高めることができるかが大切です。

2つ目が「有能なSaaSが利用できていれば問題ない」といった考え方です。
一例として、様々なバックオフィス業務の内、支払い管理業務のプロセスについてペーパーレス化を進めていったとしましょう。
個別業務のプロセスを最適化することは、それ単独の視点では効率化を図ることができますが、業務全体の視点から設計することを欠かすことはできません。負荷の高い再計算などの業務をエクセルを活用していかにゼロに近づけることができるのか。
データフローの整備を推進することで、スケールを行うための活動に資源投資を可能にするために、早期の段階でバックオフィス構築の仕組みを取り入れることが大切なのです。

効率的なバックオフィスの構築

では、シード・アーリー期におけるベンチャー企業の効率的なバックオフィスの構築とはどのようなものなのでしょうか。具体的な事例を交えて紹介します。

シード・アーリー期のベンチャー企業の効率的なバックオフィス構築におけるポイントは、大きく分けて2つに集約されます。

1つ目が、現状をすぐに把握することができるための仕組みの構築です。例えば、予算実績管理体制を構築することで、経営目標の進捗チェックをリアルタイムで行うことができるようにするということです。
2つ目が、資金をショートさせることなく、かつキャッシュをどのように使用していき、実際にどの程度使用しているのかを把握することが可能となる仕組みの構築です。これはつまり資金管理体制を確立するということです。

数字の見える化を行い把握することによって、経営判断の速度の向上に繋がります。従業員が少ない小規模組織ほど、実績数値集約を早期化ができているか否かの要素は後々の差に繋がるのです。

具体的な事例

シード・アーリー期のベンチャー企業において特に大切なのは、何をおいてもお金です。
売上や如何にして資金調達をするかといった点がどんな組織だとしても最重要課題としてあげられる要素でしょう。
この前提に基づき、「余計なことに手を出さない」ことをスタンスとして行動しました。

IPOを前提として動く場合、以下のことを実行します。

  • CFOが合流するまで、実績を持つコンサルタントなどの外部人材から相談役を手配し、管理コストの低減を図ること

  • IPOの日程を具体的に定めて、そこまでに行うべきタスクを逆算してスケジューリングすること

  • 財務・総務・広報全般を任せることができる人材を採用すること

マルチに活躍できる人材がいれば、小規模な組織ではCFOと2人体制でバックオフィス業務をこなすことが可能となりました。
また、具体的にIPOの過程で実施した内容として、「やっておいてよかった」と感じたものは以下の内容です。

  • 代表印捺印簿

  • 議事録・稟議資料のPDF化

  • 稟議台帳の整理

  • クラウド会計の導入

  • 社内ミーティングを効率化

  • リモートワーク実施に備えた打刻システムの導入

  • 商標権を獲得

  • ストックオプションをオープン化、資本政策

定期的な社内ミーティングを廃止して、議論が必要となればSlackを活用して解決するように変更しました。ミーティング廃止により定期的に集まる機会がなくなるため、代替として週一回の恒例行事を作成し、コミュニケーションの活性化を図りました。その場でファイナンスや事業進捗の状況の共有も行えたため、社内ミーティング時間の削減に繋がりました。

IPO前はメンバー数が5人だったため、オープンにストックオプションを配分していました。これによって、全社員一貫で自社のバリューの向上の意識を共有することができたのです。また、IPO後はどのようなバリエーションとなるのかを常にコミュニケーションをとって、インセンティブプランを出しておくことによって、持続的な組織成長が可能になると考えています。

・仕組み化
企業の本音として、バックオフィス業務ではできるだけ無駄を省きたいと考えています。これまでの内容で、最低限これだけはバックオフィスとしてやっておくべきであるといったポイントについては理解できたかと思います。
では、シード・アーリー期のベンチャー企業において、どういったオペレーションを組み、どういったシステムを活用していくべきなのか、具体的に考えていきましょう。

まず知っておくべきポイントは以下の2つです。

  • ツール活用によりちょっとした仕組みを作ることで、人月工数やコストをかけることなく構築することができる

  • 仕組み化を途中から行うよりも、できるだけ早い段階で行う方が少ない工数で仕組み化することができる

IPOに向けた準備の中で、有価証券報告書の作成はとても重いタスクとして挙げられます。したがって、本格的な準備を始める前から月次決算を効率的に自社で締めることができる仕組みを作成しておくことが大切です。
月次決算を自社で締めるとはどういった意味かというと、一言で言うと「売上の把握を行い、コストを把握する」ということです。収益費用をリアルタイムで把握することのできる仕組みづくりを早期の段階から行なっていれば、後の工数を大幅に削減することに繋がるのです。

将来的に使用が想定されるツールに関しては、早期の段階で導入の検討・実施を行うべきだと考えます。
例えば、クラウドサービスに関して、このサービスは比較的安価な金額で利用することができ、従量課金制を採用しているサービスが多いため、小規模な組織にとって導入のハードルは低くなります。しかし、所属人数が増えてから導入する場合だと、今までのデータをクラウドに移行するだけでも多大な労力を要します。

社内コンセンサスを取る意味でも仕組み化のタイミングは重要です。勤怠システムや経費精算のフローは、所属が5人の企業に導入する場合と、50人の企業に導入する場合では関係者の人数が異なります。そうすると、その分だけ説明コストも大きくなってくるのです。仕組み化は、なるべく早い段階で導入し、人数が増えてきたら必要に応じて適宜チューニングを施す、変更を加えるといった考え方で運用していく方が合っているといえるでしょう。

まとめ

本記事では、シード・アーリー期のベンチャー企業において、これだけは実施しておくべきバックオフィス体制構築の秘訣について紹介しました。

バックオフィス体制の構築はできるかぎり早い段階から行うことが、後々のコストを削減する上でも重要な要素となります。
必ず必要となる以上、少ないコストで行えるタイミングで実施すると良いでしょう。