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スタートアップが見落としがちな穴とは? 初期に行っておくべきバックオフィス構築のポイント

スタートアップのような短期で急成長する企業において、経理や人事などに代表されるバックオフィスは効率的に構築することが重要です。
しかし、バックオフィスは大手企業においても人材不足の傾向にあり、スタートアップ企業で簡単に採用することは困難であることが現状です。

そこで、近年ではバックオフィス業務を効率的に運用するための便利なツールなどを導入することで、これらの問題を解消している企業が増加しています。

この記事では、バックオフィスを整えるメリットや業務を円滑にするポイント、導入すべきツールについて紹介し、バックオフィスをバランス良く構築するポイントを解説します。

スタートアップ企業にバックオフィスは必要?

なぜスタートアップ企業にこそバックオフィスが必要なのでしょうか。ここでは、スタートアップ企業にバックオフィスが必要な理由を解説します。

第三者からの評価が高くなる

バックオフィスは、大手企業のように事務処理が山積し、部門分けして業務に当たらなければ処理が追いつかないから必要というわけではありません。スタートアップ企業でもバックオフィスを構えることは重要です。

それは、バックオフィスを構築することで、投資家や経営者などの第三者から会社の運営としての評価を得ることができるからです。

これは、バックオフィス業務において一定の法令遵守を担保することに繋がるため、健全な運営環境を行っている企業に投資したいと思ってもらえるためです。

会社の状況を把握できる

バックオフィスが構築できると、事業方針や業績の管理を健全に実施できるため、必要に応じて会社の状況を瞬時に開示することが可能です。

そのため、常に最新の経営状況を第三者に知らせることができるため、投資家や経営者たちも円滑に状況把握できるようになります。

結果的に、第三者が適切な投資や助言をすることが可能となり、スタートアップ企業が急速に成長していくことに繋がります。

初期フェーズにバックオフィスを整えるメリット

バックオフィスを構築することによって、経営者や投資家などからの評価が得られやすくなり、健全な運営を示すことができるようになります。

特に、スタートアップ企業の立ち上げ初期段階でバックオフィスを整えるとより効果的です。ここでは、初期段階にバックオフィスを整えるメリットを紹介します。

生産性の向上

バックオフィスを立ち上げの初期フェーズで整えることができると、出だしの業務遂行が円滑となり、生産性を向上させることに繋がります。

経営に必要な経理や財務管理、人事に宛がう人員やツールの導入などを最初の段階で滞りなく整備することによって、効率的に事業を推進することが可能になります。

また、数値入力や出力など定型的な作業は、ツールなどを活用した自動化を取り入れることによって、生産性を格段に向上させることができるようになります。

BCP対策

BCP(Business Continuity Plan)は事業継続計画のことで、自然災害や火災、テロ攻撃などの緊急事態を企業が被った場合にも、事業試算の損害を最小限に留めつつ事業の継続をしていくために計画を練っておくことです。

このような事態を想定し、スタートアップ立ち上げ段階で、バックオフィスを適切に整備することによって、いつ起こるかわからない不測の事態に備えることができ、事業の撤退から免れることが可能になります。

残業時間の削減・対策

バックオフィスを整えることは、労務管理や給与管理なども適正化されることから、従業員の残業時間の削減や対策としても効果を発揮します。

スタートアップ企業やベンチャー企業などは、少数精鋭で一人あたりの業務に負担がかかりがちになることもあるため、勤怠を適切に管理することによって、残業過多の従業員にたいして抑制勧告でき、健全な企業運営を行うことができるようになります。

ヒューマンエラーの防止

スタートアップ企業で初期段階にバックオフィスを整えることによって、煩雑になりがちなバックオフィス業務のヒューマンエラー防止に繋がります。

バックオフィス業務では、データの入力や集計作業が多いです。そのため、普段バックオフィスを専門にしていない従業員が急遽掛け持ち業務をすると、入力ミスなどのヒューマンエラーが起こりやすくなってしまいます。

これを防止するために、バックオフィスを適切に分配して業務にあたらせることが重要です。さらに、できる限りヒューマンエラーを防ぐため、定型的な作業は自動化を導入するなどの効率化を図ると良いです。

スタートアップ企業が抱える課題

多くの企業が抱える課題として、バックオフィスの整備は簡単に行えるわけではないということがあります。

特にスタートアップ企業ならではの課題もあることから、これらと向き合った上でバックオフィスを整備していく必要があります。

ここからは、スタートアップ企業が抱える課題について解説します。

バックオフィス経験者が少ない

スタートアップ企業が抱える課題として、バックオフィスの経験者が少ないということが挙げられます。

バックオフィスでは、勤怠管理や経理、人事などの総称を指しますが、それら一つひとつの教務に特化した専門職を経験している人は少ないため、採用活動が難航する傾向にあります。

近年では、大手企業におけるバックオフィス人材も獲得に苦労を要することもあり、スタートアップ企業ではバックオフィスの経験者をすぐに採用できる可能性は高くないということが現状です。

人材が定着しない

バックオフィスに配属された人材が定着しにくいということも、スタートアップ企業の課題として挙げられます。

バックオフィス人材として採用しても、定型的な作業が主体だったり、事務処理が山積して残業が多くなりがちといった問題があると、なかなか定着せずにすぐに辞めてしまうことに繋がり、安定した企業運営が行えないということが考えられます。

スタートアップ企業だからこそ、迎え入れたバックオフィス人材は手厚いケアを行い、業務を無事に定着させて経営を安定させる工夫が求められます。

バックオフィスの業務を行える人材が少ない

バックオフィスの経験者が少ないことと同様に、バックオフィス業務を行える人材が少ないと言うことも、スタートアップ企業がバックオフィス人材を採用しにくい課題となっています。

業種にもよりますが、技術職などの専門職を目指す人材が増えている中、単純作業に落ち着きがちなバックオフィスを行える人材はそもそも少ないです。

そのため、バックオフィス未経験者でも安心して取り組める社内体制の構築や、手厚い福利厚生など、人材を逃さない工夫が必要です。

業務の属人化

バックオフィス業務では、専門的な知識、経験を必要とする場面もあることから、業務の内容によっては担当しているその人に依存せざるを得ない属人化を生じてしまうことも問題となっています。

特に、法令遵守に関連する業務では、度々改正される法律情報を常にアップデートできる人材が求められます。そのような人材をすぐに見つけることは簡単ではなく、特にスタートアップ企業では専門知識をもつ希少な人材を獲得することは難しい傾向にあります。

バックオフィスは何から始める?

スタートアップ企業はバックオフィスを構築することが簡単ではありませんが、それでも健全に経営していくためには必ず整備する必要があります。

では、バックオフィスを構築するときに何から始めれば良いのでしょうか。ここでは、バックオフィスを整えるSTEPを順に解説していきます。

STEP1:部署の選定

バックオフィスを整えるSTEP1は、部署の選定です。法令を遵守し、企業運営も適切に回すために必要な部署を選定します。最低限必要とする部署は以下の通りです。

労務

労務は従業員の給与管理や入社手続きなどを滞りなく行う上で最優先に設置すべき部署です。また、スタートアップ企業ではCEOなど経営者を中心に、創業時点で就業規則を明確に定めておくことが労務部として肝要です。

これは、社員が10名以上になると労働基準監督署に届け出ることが義務づけられているため、外部であっても社労士や労務経験者と協力しながら労務として就業規則を早期に作成していきましょう。

経理

経理に関しても優先的に構築する必要があります。経理は会社の根幹とも言うべき「お金」の管理を主体に行います。そのため、管理は滞りなく行わなければなりません。また、お金の管理にヒューマンエラーをできる限り引き起こさないよう、会計ツールなどをバランス良く導入することも検討する必要があります。

人事・広報

採用を行う人事や広報活動の部署も、スタートアップ企業としては早急に設置することが重要です。

スタートアップ企業では、創業と同時に人材の確保についても積極的に取り組む必要があります。また、投資家たちから円滑に資金調達を行うため、広報によって会社をPRする必要もあります。

採用や広報活動は、創業初期段階ではCEOや経営者に積極的に参加してもらい、人材繰りや資金調達に弾みをつけると良いでしょう。

STEP2:人材の確保

バックオフィスに必要な部署の選定が決まったら、人材の確保に取りかかりましょう。

初めのうちは自社で採用するバックオフィスの適切な人材確保が難航する場合があるため、バックオフィス業務自体を外部に委託したり、パートを雇い入れることによって当座の業務に当たってもらうのも手段の一つです。

会社が成長してくるにつれ、バックオフィス業務はどれも内容が濃くなっていくため、STEP1の部署を明確に担当分けし、経験者を自社で採用できるように取り組んでいきましょう。

バックオフィス経験者は労務や経理などに特化した業務をこなしてきた人が多いですが、採用後しばらくの間は業種にとらわれずにバックオフィス業務全体を少しずつ担当してもらうようにすれば、業務の幅が広がり、後々の適切な配属に繋がります。

会社の成長を加速し、安定した経営をもたらすために、バックオフィス人材は会社設立時に速やかに採用活動を行うことが重要です。

STEP3:教育

STEP3として、バックオフィス人材として受け入れた従業員には、手厚い教育でサポートしてあげることが重要です。

特に、人手を賄うために経験の無い人材を採用した場合には、バックオフィス業務の内容についてや、入社後のキャリアビジョンなどについてCEOを中心に手厚い教育を実施することが必要です。

そうすることによって、バックオフィス人材の離職率を低下させ、安定した企業運営を実施できるようになっていくでしょう。

バックオフィス業務を円滑にするポイント

バックオフィスを適切に整備できたら、実際にバックオフィス業務を遂行していきます。

このときに、バックオフィス業務をできる限り円滑に行っていく手段はあるのでしょうか。

ここでは、バックオフィス業務を円滑に実施する上でのポイントをみていきましょう。

外部委託先への依頼

バックオフィス業務を円滑に進める上で、人材不足や知識や経験不足を防止するためにも、バックオフィス業務に特化した外部委託先へ業務を委託すると良いでしょう。

特に、スタートアップ企業では、バックオフィスを即戦力として外部に委託することによって、すばやく事業を軌道に乗せることが可能となります。

また、自社で社員を教育する手間も省くことができるため、立ち上げ初期段階では外部委託の割合を多くすることによって、本来行うべき事業に力を集中させることができるでしょう。

業務のマニュアル・社内FAQの構築

バックオフィス業務では、専門的な知識や経験を必要とする業務もありますが、定型的な作業やパターンとなっている問題点なども存在します。

そのような作業において業務が滞ってしまうことを防ぐために、マニュアルやFAQを作成しておくと良いでしょう。

スタートアップ企業では、創業後のできるだけ早い段階で、あらゆる問題に対応できるマニュアルを作成しましょう。

そうすることによって、バックオフィス業務の負担が軽減されるだけでなく、業務の標準化や後々の従業員教育でも活用できるものとなっていきます。

ITツールの積極的導入

バックオフィス業務幅は広いため、事業が拡大したり、業績が良くなって行くにつれて業務の内容も煩雑になっていきます。

その結果、処理すべきデータや情報全てを手入力しているようでは極めて効率が悪いため、昨今配信されている数多くのITツールを積極的に取り入れることによって、作業量の縮小やヒューマンエラーの抑制に繋がります。

代表的なバックオフィス業務効率化ツールは以下の通りです。

  • 勤怠管理ツール

  • 請求書発行ツール

  • 給与計算ツール

  • 採用管理ツール

  • ワークフローシステム

  • 電子契約・帳票システム

  • OCR/ AI OCR

最初に導入するべきツール

スタートアップ企業がバックオフィスを構築した際、最初に導入すべきツールはどれでしょうか。ここでは、優先的に導入すべきツールを紹介します。

会計ソフト

バックオフィスの経理において、会計作業ではミスがあってはなりません。お金を管理する上で、金額などのデータを手入力することによって、ご入力などのミスを引き起こす可能性は高くなります。これを防ぐために、会計ソフトの導入は必要不可欠です。

会計ソフトでは、経理に関わるあらゆる数字を一元管理することが可能で、経営に関するお金の情報をすばやく取り出すことも可能です。また、近年ではペーパーレス化が推進されているため、会計の承認作業なども印刷せずにPCネットワーク内で経営者と共有することも容易なため、作業効率を進める上で重要です。

給与計算システム

バックオフィスの労務管理において、給与計算システムの導入は重要です。従業員一人ひとりの給与情報を計算することは、従業員の数が多いほど業務量が多くなり、ミスも併発しやすくなります。

それを人力で計算していると、計算に時間を要するのみならず、精神的な負担もかかってしまいます。それを防止するために、給与計算システムは必ず導入しましょう。これらの導入によって、従業員の給与管理を正確かつ短時間で行うことができます。

また、給与計算システムの中には、税理士や社労士とのメールのやりとりなどもサポートしてくれる機能付きのものもあるため、税務等での重大なミスを防ぐ上でも、有効活用すると良いでしょう。

電子契約システム

電子契約システムを導入することによって、利用頻度の高い文書の準備や、契約管理にかかる時間を大幅に短縮することができます。

昨今では契約に関わる文書に関しても電子化が進められており、紙媒体を出力せずに、ネットワーク上で文書の作成や署名、送信作業や追跡などを一元管理することができるシステムが多く存在します。

特に、国内に留まらず海外の企業との契約締結などには郵送などでの無駄な時間を費やす必要が無く、円滑に契約を締結することが可能なため、必ず導入しましょう。

まとめ

この記事では、スタートアップ企業にバックオフィスを整えるメリットや業務を円滑にするポイント、導入すべきツールについて解説してきました。

創業からすばやく軌道に乗る必要のあるスタートアップ企業にとって、経営の安定性や業績の開示を速やかに行うためにもバックオフィスを適切に配置することがとても重要です。

また、バックオフィス業務をより効率的に遂行するためには、ITツールの導入やマニュアルの作成といったことが、後々の企業成長や人材育成にも役立つものとなります。

スタートアップ企業を円滑に成長させるため、バックオフィスは初期段階で必ず設置しましょう。