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GOING STEADYと銀杏BOYZとはなんだったのか。

 昨日の夜、洗濯機を廻している間に好きなバンドのMVを流して観ていた。FINLANDSの「UTOPIA」だったり、フォーリミの「Milestone」だったり、バニラズの「青いの。」だったり。自動再生にしていたから、今まで聴いていた曲が流れてたわけだけど。選ばずに次に何が来るかなって考えながら酒を飲んで楽しみにする時間は、平日の頭の夜に心地よかった。

 そうしたら、唐突に銀杏BOYZの「援助交際」が流れてきた。峯田さんの1,2,3,4の掛け声で掻き鳴らすギター。めちゃめちゃに暴れ回るライブの映像。叫び散らす声。当たり前だけど、何も変わってない。聴いてたら自分の中学時代がフラッシュバックした。

 JPOP全盛期、HIPHOPも台頭してきて、僕らは流行りに酔っていた。部活動の練習前には先輩が競ってかける音楽を口ずさみ、カウントダウンTVで情報収集する。そうやって毎日音楽を消費していた。
 
 そんなある時、同級生が焼いたCDを持って来て、先輩がかける前にその曲をかけた。爆音にラジカセの音が割れて、歌詞も聞き取れない演奏と叫ぶ声が流れてきた。それがゴイステと銀杏との出会い。

 音楽?今まで僕が聴いていたものとは質も熱量もまったく違った。荒ぶるもの、心、魂、叫び。CD音源ならまだよい。ライブならあってないようなもの。誰かの世界観に飲み込まれていったんだ。

 汚いものを汚いというのは難しい。

 別に良いとか悪いとかではなく、日本では奥ゆかしく、綺麗なものをもっと綺麗だというのが美徳のように捉えられている。日本らしさは歓迎される傾向にあって、椎名林檎さん、事変、アジカン、ヨルシカはそうだ。
 青春と愛を唄うサンボマスターもモンパチも、鬱屈した思いを正直に表現できない僕らの代わりに、爽やかでストレートに直接愛を歌ってくれる。175R、19、ゆず。それは歌謡曲にも似ている。フォークが流行った時期もあった。ハイスタ、細見さんなんかもそうだった。今なら10-FEETとか。
 少し捻くれているように見えるものにも惹かれる。ラッド、バンプは少し違ったアプローチだった。内面の吐露。全く天才だと思った。気怠そうにも見えて、他の何かを気にするわけではなく、ただ心の内側を紡ぎ出そうとする。それは米津さんにも通ずる。サカナクションや絵音さんみたいに、自分たちの世界観を以てこちらを引っ張ってくるバンドもあった。
 
 ゴイステ、銀杏はそれらとは違ってた。甲本ヒロトさんのストレートな歌詞とはまた違う性質。カラッとしてない、ぐちゃぐちゃしたものを全て詰め込んでごちゃ混ぜにして、まとまらなくても出来るだけ忠実にキャンバスにぶちまけるようにして僕らに届けてくれた。

 僕がね、これから歌う歌はね、幸せな人は聴いていけねんだよ!
毎日楽しくて幸せいっぱいで、そんなヤツはね、聴いて欲しくないんすよ俺は!
そんなヤツはね、今から背中向いて出でってくれよ!
あんたが寂しい時、あんたの心の中に、何かぽっかりと穴が空いてる時、そんな時、そんな時、あなたの枕元まで、届け!僕の声!!
そして、あんたが、幸せを掴んだ時、やっとあなたが幸せを掴んだ時、そん時、こんな歌なんて忘れて下さい。

 そんな唄を聴いた。苦しいことや欲望を抑圧しなくていい、もっと簡単に言うと我慢しなくてもいい、俺らが唄ってやっから。せめて自分だけは分かっといてくれよ。誰にでもあるからな。

 マイクを咥え、骨折するほど暴れ、非難されてもそれでもゴイステと銀杏は走り続けた。青春を、いや僕らの代わりに人生を、人間を歌ってくれた。「吐くまで踊る 悪魔と踊る」「もがき苦しんでるだけの人間様さ」

 それが僕らが隠している本質。絶対みんな持ってると思う。嬉しいし、幸せだし、悲しいし、怒る。当たり前だけどさ。みんな言えないこともあるよね。そんな感情の全てを揺さぶられていた。
 好きな子が援助交際していたら、とは極端だけど、他の誰かと付き合ってるとしたら、嫌な気持ちになるでしょう。「あの子の幸せの為に僕は泣く」これは簡単だけど、本音はそうはいかないんだよ。そいつをぶん殴って、何とかしてやりたい、いやヤりたい。けどそんな度胸も力もないから僕はしょうもなくて一人でオナニーして欲望を満たして寝るんだ。そんな青春時代があった。

 嘘つくなよ。どうせ人なんて薄っぺらい皮をはげば皆タンパク質の塊だろうよ。上手くいかない時、そんな本音を持ってるんだ。だからこそ人間なんです。

 そんな思いを持ちつつ、僕はゴイステ銀杏を聴かなくなっていった。DOOR、第三次の後のアルバムを楽しみに、恋と退屈と銀杏SHOCK!!を読んでいた気がする。気付いたら一人ぼっちだった。勝手に置いていかれたのかもしれないけど、峯田さんはそんなこと思ってない。だってたまたま聴いた援助交際の1回だけで僕はまた思い出せるからね。

 

 

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