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【短編小説】私が文字を書く理由

何で文書なんて書いてるんだろう?

さっきまで小説を書いてて、気分転換の風呂上がり、この時この瞬間、何故なんだろう、理屈抜きに

疑問に感じてしまった

だってそうだ、私の夢は作家の先生でも無ければ、誰かに向けて、伝えたい何かを訴える為に書いてる訳でも無い、おまけに文書の勉強だって取り組んだ事なんて全く無い、人生の畑が違うのだ

それでも、頭の中で身勝手に語り部を演じる、もう一人の私の、言葉にすらならない

妄想? 想像? 欲望? 願望?

それらを誰でも無い誰かに聞いて欲しくて

誰にも向けてないのに、聞いてくれる誰かを望んで、文字って形に納める作業を繰り返す

「そんな言葉じゃ無いの、そこは△が○の様に綺麗な夜なのよ?」

「そんな言葉は、この世に存在しないわよ」

「本当に? 貴方は全ての言葉を知ってるの、日本語だけじゃないのよ、英語は? 中国語は? ドイツ語は?」

「そんなの知らないわよ、だって私は日本人で、きっとコレを読んでくれる人だって日本人なのよ」

「本当に?」

「知らないわよ」

「昔からそう、貴方は自分の知ってる世界だけで満足して、新しい何かを知ろうともしない」

「五月蠅いわね、私だって毎日必死で生きてるのよ」

「そんなの知ってるわよ、だって私は私はなんだもの」

「だったら少し」

「だから書いてよ、私が私で有るって、その何かを誰かに残すために」

そんな自分との言葉のやり取り

何時だって喧嘩腰な自問自答

とっても不思議、喧嘩の内容を文字で書きなぐると、そこには私だけの物語が書き込まれてる

何で書くのかな?

毎晩尋ねても、その疑問に私は答えてくれない

それにムシャクシャして、ペンを手に取ると語り掛けてくれる、もう一人の私

貴方が何を伝えたいのか私は解るよ? だから怒らないでよ、私は解ってるんだからさ

誰でも無い、誰かに届けたい?

安心して、大丈夫、だって私と私で書いてるんだから、難しい表現だって適当にお茶を濁して文書にするわ

それに夜は長いんだから

物語でも語らないと寂しくなるのよ

物語でも語らないと安心して眠れないの

月が眠って太陽が起きて

物語を語りながら私は寝たいの

明日も明後日も、物語を語って

物語の中で夢を語って

夜はとっても長いんだもの、何から語ろうかしら?

そうね、王子様が魔女に恋して

魔女が素敵な黒猫を産むの

不吉って言われる黒猫も

醜い老婆で書かれる事の多い魔女だって

きっと魔法で美人になるのよ

そして、王子様に守ってもらえば安心ね

そんな幸せな物語を語りながら夢を見たいの


私が文字を書く理由

長い夜に

素敵な夢を見たいから。

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