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アルコール飲料の未来

ひと昔前までお酒は「百薬の長」などと言われ、「アルコールは飲みすぎなければむしろ健康にいい」とされてきたが、近年この論調に逆風が吹きまくっている。

それを感じた本日のこのニュース。

アルコールの含有量を「g」で表示する動きが出はじめた。おそらく、昨今の「がんのリスクを高めないアルコール量は週に100gまで」の研究結果を受けての動きだろう。アルコール度数はお酒によってまちまちなので、100gを把握するためには「えーと、7%だからこれを一本飲むとアルコール量としては…」とめんどくさい計算をする必要があったが、それをもっと分かりやすくしようという動きだ。

こんなめんどくさいことをメーカーが自らするメリットはないので、おそらく国から記載するように言われたのだろう。キリンが2024年までに缶に表示するということなので、2025年あたりに表示が義務付けられ、厚生労働省から国民に対して正式に「お酒は週に100gまでにしましょう」というお達しが出るのではないだろうか。

酒造メーカーとしてはめっちゃキツいが、セルフメディケーションを推進し医療費の削減をするために、国民に余計なアルコールを飲ませないことはもはや国策と呼べる。なんせ、「お酒は少量でも健康に良くない」という内容の研究結果がバンバン出てきているから。

上記の論文は有名だが、お酒に弱い人種と言われている日本人を対象にした研究結果も東大から発表されている。

この研究結果、あまり話題にならなかったが今改めて読み返すとそれなりにショッキングな内容である。

1日に日本酒1合、ワイン1杯(180ミリリットル)、ビール中瓶1本、ウイスキー1杯(60ミリリットル)のいずれかに相当するアルコールを10年間飲み続けた場合、食道がんになるリスクが45%、喉頭がんは22%、大腸がんは8%、胃がんは6%上昇。がん全体では5%上がるとしている。

僕も去年までそうだったが、お酒好きの人にとっては「毎日1杯のワイン」なんて当たり前というか、むしろもっと飲んでる。これぐらいでは二日酔いにはならないし、そんなに酔っ払うこともないので気をつけなければ余裕で10年以上飲み続けるだろう。で、食道がんのリスクが45%アップと来た。

まあでも、普通に考えてお酒は「合法ドラッグ」だ。飲むと気分が高揚し感情が増幅され自制心を失い、思考力と記憶力と判断力が著しく低下し、異常行動が引き起こされる。シラフの人がその様子を見ると確実にラリってる。そしてその反動で体調をわかりやすく壊す。場合によっては翌日丸1日寝込み、場合によっては急性アルコール中毒で命を落とす。こんなものが「健康に良い」はずがない。

しかし、日本においてアルコール飲料は数百円で24時間いつでも買えて、道端で歩きながら飲んでも、その辺に酔いつぶれてぶっ倒れていても誰にも咎められない。これは国際的に見ると異常な状態というか、野蛮な国だ。5年前ぐらいに台湾に旅行したときに、ファミリーマートがたくさんあって普通に台湾でもお酒が買えたので歩きながら飲んでいたら、台湾人に「道ばたでお酒飲んでるのは日本人しかいないのですぐわかる」と言われて恥ずかしかった記憶がある。

で、めちゃくちゃ中毒性が高い。僕は35歳を過ぎてからワインにハマってしまったため、単純に「ワインの味」が好きになってしまった。このアルコール愛が脳裏にねっとりとこびりついていて、癒着を剥がすのになかなか苦労している。

例えば、自炊しようとスーパーに行くと、惣菜の揚げ物が目に入り、気がつくとそれに合いそうな白ワインもカゴに入れてしまっている。健康的な自炊どこいった。また、閉店ギリギリ(緊急事態宣言中につき20時に閉店する)の富士そばに駆け込み、肉富士と一緒にビールを買おうとして「アルコールはやってません」と言われクソっと思う。

これがお酒好きの思考回路だ。しかも、「お酒を辞めよう」と結構強めに思っているやつでもこの始末だ。もちろん健康に良くないという意識はあるのだが「ま、今日、一杯ぐらいいいだろ」と瞬時に正当化してアルコールを流し込もうとしてしまう。脳が理性を操って強烈にアルコールを摂取しようとしているのが手にとるようにわかる。

これは結構恐怖だ。

「お酒好き」というなんかカワイイ表現も良くない!1日1杯以上を我慢できずに飲んでしまう人は実際のところ「ヘビードランカー」の部類であり「軽度のアルコール依存症」であることを自覚すべきだ。

お酒のCMの表現も、年々厳しくなってきている。これはずいぶん前の記事だが、「グビグビ」という音や、喉が動く様子を流さないように自主規制されている。

しかし今でも、元乃木坂46の白石麻衣や西野七瀬などの著名タレントがビールのCMに出演し「ビール離れが進む若年層の需要を喚起する」というマーケティングが堂々と展開されている。

そもそも新成人となったアイドルやタレントに、「もうお酒が飲めるね!」「メンバーと飲んだりするの?」という質問をすかさずぶつけるバラエティ番組も非常に下品だ。まるでお酒を飲むことを当然の、良いことのように演出している。本当にみんな毎回聞かれているので、台本があるのだろう。当然、タレントも「がんのリスクが上がるので私はお酒を飲みません」なんて言わない。「こないだ初めてシャンパンをいただきました!」「ビールの美味しさが少しわかりはじめました」などとアルコールに肯定的なコメントをする。

これを見た未成年の視聴者やファンはどう思うだろうか?おそらく「自分も20歳を過ぎたらお酒を飲んでみたい!」と思うことだろう。マーケティングとしてはもちろん正しいやり方なのだが、いかんせん健康に確実に悪いことがわかってきてしまっているので具合が悪い。

今後のアルコール飲料を取り巻く環境としては、タバコと同じ道を辿っていくだろう。もっとたくさんの信頼できる研究結果で「本当に、1gでも健康に悪い」ということがバンバン明かされていき、マーケティングに規制が入り、パッケージには30%以上の面積で「お酒はがんのリスクを高めます」と書くことが義務付けられ、コンビニでは24時間販売ができなくなり、路上の飲酒も禁止されていく。

元お酒好きとしては寂しい未来だが、膨張する医療費を考えると仕方がないストーリーだと思う。当然、その分お酒の値段(税金)もどんどん上がり、特別な日だけ飲む高価な嗜好品となり「お酒が好き」と言うと依存者扱いをされるようになってしまうのだろう。

僕ももう40代なので「今後どう生きるか」と同時に「どう死んでいくか」を考えるフェーズに突入している。食生活や運動の選択で防げる病気はなるべく避け、ピンピンコロリで極力他人に迷惑をかけずに死にたい。

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