「2067」を見て

アマプラ映画感想日記第6弾。
今回見たのはこちら。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08X3XZ9RJ/ref=atv_hm_wat_7_c_7de9kC_1_6

2020年に公開された、セス・ラー二ー監督によるオーストラリア映画。
「2067年」と「2474年」という2つの時代を舞台にしたタイムトラベルもの。

2067年の地球は深刻な酸素不足に陥っており、人工酸素呼吸器なしでは外を出歩くこともできない。
また、人工酸素にも強い拒絶反応を起こす人もいて、人類の健康が大きく脅かされている。
人工酸素呼吸器は「クロニコープ社」が寡占状態となっている。

この映画はレビューを見ると評価が悪く、少々不安を持ちながら見始めた。
実際、序盤の2067年での展開は「大丈夫かこれ?」と先行き不安に駆られる内容だったが、舞台を2474年に移してからの展開は面白かった。
荒廃した何もない場所から手掛かりを探して、試行錯誤して切り開いていく感じはよくある展開ながらワクワクして良かった。
正直ぶっ飛んだ設定だったので不安だったが、「ヒッグス粒子の特異点」とか「荷電粒子による核爆発」とかちゃんとサイエンスフィクションしていて良かった。

主な登場人物はイーサン・ホワイト(コディ・スミット=マクフィー)とジュード・マザーズ(ライアン・クワンテン)の2人。
基本的にはこの2人のやり取りにより2474年での展開がされていくので、この2人の人間模様の機微に注目してみると面白い。
2067年にいたときはイーサンは「妻を見捨てて未来に行くわけにはいかない」という立場で、ジュードは「妻を救いたいんだろ?治療薬を見つけてくるんだ」と背中を押す立場。
一方、2474年に来て衝撃の事実を知らされてからは、ジュードの方が「早くこんなところから帰ろう」、イーサンは「いやこのままじゃ未来は変わらない、まだやるべきことがある」と完全に立場が逆転している。
次々と明らかになる事実にイーサンがだんだんと錯乱していく様子がリアルで、コディ・スミット=マクフィーの演技は鬼気迫るものがあった。
イーサンはだんだんとジュードに対して疑心暗鬼になっていき、衝突していくが、どんな状況になってもジュードの信念は変わらず、イーサンに対する同胞愛が感じられてすごく良かった。
でも、それがわかるのはジュードが自ら命を絶った後だった…。
もう少しどうにかならなかったのか、イーサンの気持ちを考えると辛い。

登場人物は2人を中心としていて少ないのでそこはわかりやすいが、時系列が複雑でここは少し混乱する。
色々細かいところを気にするとタイムパラドックスもあるのかもしれないが、ジュードのイーサンに対する同胞愛が主題となっていると思うので、あまり色々と考えすぎない方が良い映画なのかもしれない。

結局人工酸素呼吸器の「クロニコープ社」が悪の組織で黒幕だったことがわかるわけだが、この組織の魂胆が興味深い。
クロニコープ社は、酸素を手に入れるためなら人を殺すような人類なんて滅べばいいという考えを持っていた。
そして自分たち以外の人類をすべて滅ぼし、荒廃した地球をリセットして新しい理想郷を作るというもの。
いわゆる優生思想である。
最近アニメの「Dr.STONE」を見ている。
この作品も荒廃した世界から新しい文明を築いていく作品なのだが、ここでも「年寄りは自分の利益しか考えなくて未来がなくて醜いだけだから、若者だけを復活させて理想郷を作ろう」と主張するキャラが現れて主人公と激しく対立する。
このような思想を持っていると最終的に自分の首を絞めることになる。
清濁併せ呑む度量の大きさ、失敗や欠けているところを認め愛せる人になりたいと思った。

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