『天才作家の妻-40年目の真実-』グレン・クローズ演じる妻が堪えてきたもの…公開中
オスカーに、いつもあと一歩で手が届かないグレン・クローズ。でも今回こそは間違いないと思う。妻を、なめんなよ。
原題:The Wife ★★★★★
偉大なる世界的な作家と、それを支えてきた完璧な妻の関係が、夫がノーベル文学賞を受賞したことでゆらぎ始める…という物語。
人生最高の瞬間であるはずの授賞式が一転して、悪夢へ。
夫婦とは何か? 創作とは? 生きがいとは? さまざまな人間の根源的命題を突きつけつつ、グレン・クローズが天才的な表現力で魅せます。
冒頭から、ノーベル賞受賞の電話を受け、「妻も一緒に聞いていいかな」と夫婦2人でそれぞれ受話器をとるシーン。事務局と直接話をしているのは夫の“天才作家”なのですが、それを別の部屋で聞いている妻グレン・クローズの表情!
クローズアップされる瞳に、ほんのわずかな心の揺れが映ります。
その時点からもう、これはやばいぞ、やばい映画が始まるぞ、そんな予感がヒシヒシ。
確かに彼女の表情、目線、仕草、知的な言動1つ1つから、さまざまな感情が読み取れるのですが、どこか引っかかっていたんです。
あなたは何を隠しているの? 何を抑え込んでいるの?
その堪えに堪えてきた感情がついに授賞式を前後にして溢れ出します。
沸点に達する、ともいうべきか。
そしてラストの顔が本当に素晴らしい、グレン・クローズ
今、109シネマやTOHOシネマズなどでは夫婦どちらか50歳以上ならペアで割引になったり、60歳以上はシニア割引となるので、平日の昼間などはご夫婦で観られる方が多いもの。
妻につれて来られたのか、次第にいびきが聞こえる夫、という光景も幾度か目にしたことがあります。
この映画はちょっとリトマス紙的な危険性(!?)をはらんでいるかもしれません。いや、むしろ見てもらったほうが、いいのかも。
もちろん他のキャストも素晴らしく
いわゆる“大きな子ども”のような夫の、“天才作家”を演じるのは、英国の名優ジョナサン・プライス。
私のような「ゲーム・オブ・スローンズ」ファンにとっては、第五~六章でキングスランディングを引っかき回したハイスパロー(雀聖下)としておなじみです。
劇中では七神正教の妄信者にしてリーダーあり、たとえ相手が王家であろうとも不貞の愛や同性愛を厳しく糾弾してきた彼の今回の役回りに、“SHAME,SHAME”と鐘を鳴らしたくなったのは、どうやら私だけではなかったようで、同じご意見をツイッターでお見かけしたりも。
気になる方はどうぞ「ゲーム・オブ・スローンズ」をご覧になってみてください(宣伝)。
この“天才作家”夫婦に不穏な空気を持ち込む記者役には、ラミ・マレック主演「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」でも知られるクリスチャン・スレイター。スクリーンでは久しぶり、という方も多いかもしれませんが、彼の醸し出す胡散臭さが最高なのです。
また、「うぬぼれやの夫と、怒りに堪える妻」をテーマに短編を書くも父・“天才作家”にこき下ろされる息子には、英国の名優ジェレミー・アイアンズ氏を父に持つマックス・アイアンズ。著名な父を脅威に感じ、くすぶる息子役はぴったり!?(いや、彼はくすぶってはいないか)
若き日の妻を演じているのは、グレン・クローズの実の娘であるアニー・スターク。さすがに凜とした美しさが、よく似ておりました。
“天才作家”の若き日を演じるのは、未成熟で粘着質なプレイボーイ役がいつもハマりすぎるハリー・ロイド。
彼もまた「ゲーム・オブ・スローンズ」の出演者で、王座を手にするために妹デナーリス(エミリア・クラーク)を騎馬民族の王(ジェイソン・モモアだよ)と政略結婚させるヴィセーリス・ターガリエンとして知られます。『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』や『ジェーン・エア』などにも出演しています。
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