『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』出ずっぱりのニコラス・ホルトを愛でる 1/18(金)~公開中
原題:Rebel in the Rye ★★★★☆
ニコラス・ホルトが「ライ麦畑でつかまえて」の原作者J・D・サリンジャーを演じた伝記映画。才能と自信(と皮肉)に満ち溢れた青年が、戦争によってまるで変わってしまうところは本当に悲しいものです。
原作となった伝記本「サリンジャー 生涯91年の真実」は新事実が満載で、専門家からも太鼓判を押されているようです。2010年1月27日にサリンジャーが死去してから、初めての伝記なのだそう。
著者のケネス・スラウェンスキーはサリンジャーに関するウェブサイトDeadCaulfields.comの創設者でもあります。
さらに、その映画化を熱望したダニー・ストロングが映画初監督を務めました。彼は『ハンガー・ゲーム』や『大統領の執事の涙』の脚本ほか、海ドラ「Empire 成功の代償」のクリエイターの1人でもあります。
いうなれば、熱心なサリンジャーファンが追い直した伝記を、同じくサリンジャーファンの監督が映画化した、というところでしょうか。
どおりで、出ずっぱりのニコラス・ホルトの繊細な感情表現も相まって全体的にエモーショナル。ついつい彼の人生に没入しておりました。
「インチキ」という言葉や、マッチ、アヒルなど、彼の小説に登場するいくつかのモチーフが盛り込まれ、
ノルマンディー上陸作戦や強制収容所の解放などに立ち会った戦争体験や、もう一人の父ともいえる恩師の励ましと断絶、そして愛したウーナの裏切りなどの出来事もまた「ライ麦畑でつかまえて」の主人公ホールデンを肉付けしていくことに。
恩師である編集者のウィル・バーネット役ケヴィン・スペイシーもすばらしいのですが、どうも最近の私生活がチラついちゃって…もったいない。
ただ、今旬な女性陣がいいのです。
サリンジャーが戦地にかり出された後、かのチャールズ・チャップリンと電撃婚してしまうウーナ・オニール役ゾーイ・ドゥイッチは、彼女自身も時代を象徴する二世だけにピッタリ(母はリー・トンプソン、父は映画監督のハワード・ドゥイッチ)。実にキュート。
また、『ボヘミアン・ラプソディ』で話題のルーシー・ボイントンも出演。「ライ麦~」がベストセラーとなると、「我こそがホールデン」というファンが続出、田舎で隠遁生活を送るようになったサリンジャーにつき添うも、2児をもうけた後に離婚する2番目の妻クレア役を演じています。
本作は2017年の映画なので『ボラプ』以前の彼女ですね。
そして出版エージェント役のサラ・ポールソンさんがしっかりと締めてくれます。登場する出版界の人物の中で女性は彼女だけ。作家の著作権を守るエージェント、日本にもいたらいいのに。
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