ナチス第三の男HHhH

『ナチス第三の男』金髪の野獣が完成するまでと暗殺作戦の裏側…映画2本分の緊迫 1/25(金)~公開

英題:The Man with the Iron Heart(原題:HHhH) ★★★★☆

『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』でも描かれた、「金髪の野獣」「プラハの屠殺者」「鉄の心臓を持つ男」などと呼ばれたラインハルト・ハイドリヒ。

ヒトラー、ヒムラーに次ぐ第三の男にまで上りつめ、ナチス高官の中で唯一、暗殺された彼がその異名のごとく“完成していく”まで

そして

その非道ゆえに実行された、1942年の暗殺作戦「エンスラポイド作戦」の裏側をこの映画では描きます。

『ダンケルク』の民も必見!

暗殺実行部隊ヤンとヨゼフのバディ感はこちらの方が若く、情熱的で、それぞれ演じるのは

ジャック・オコンネルとジャック・レイナーというWジャックコンビ。

『アンブロークン 不屈の男』でMIYAVIから生き残った捕虜と、『ローズの秘密の頁』のRAF(英国空軍)に入ったアイルランド人です。

できるなら『ダンケルク』関連で盛り上がっていた去年の今頃に見たかった1本です。ワインスタイン・カンパニーだからかしら…。


原作はベストセラー「HHhH プラハ、1942年」、HHhHとはドイツ語の「ヒムラーの頭脳をハイドリヒと呼ぶ」の頭文字をとったもの。

海軍を女性問題で不名誉除隊したラインハルト・ハイドリヒはその野心と才覚からヒムラーに買われて出世、国家保安本部の長となり、チェコ保護領を実質統治した人物、何より

ユダヤ人虐殺の首謀者・発案者となった男。

ヴァイオリンを奏で、フェンシングの素養があり、軍人をクビになった者が自身を誇示するかのように権力を増していく。ジェイソン・クラークはこの辺りが大変に上手い。

ハイドリヒの狂気は、いわば妄信的ともいえるもので、異様さを纏います。挫折したエリートほど道を誤ると、その堕ち方がすさまじいものです。でも決して、「彼もひとりの人間だったのだ」といった同情はいたしません。


その妻役ロザムンド・パイクは今回も狂妻にして極妻。彼女がハイドリヒをナチ党に導いたのです。


作戦決行の当日、その瞬間までの盛り上げ方、若い2人の恋を通じた心理描写、群衆の中のWジャックの視線のやりとりなどは、こちらの方が好みでなかなかの緊迫感。

とりわけバディ感が素晴らしく、ラストシーンは涙にくれることに。

暗殺作戦によって交錯したハイドリヒの人生とヤンとヨゼフの人生。悪夢のような時代を生きた3人の男たちを、両者の極点から描き出しています。



ちなみに、『ハイドリヒを撃て!』ではビル・ミルナーだった重要なキャラクター、アタ少年を演じるのは『ワンダー 君は太陽』『クワイエット・プレイス』の名子役ノア・ジュプで、「あっ」と気づいたその時点で心臓ばくばく

少々正気が飛んだかもしれません。


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