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『斬、』真剣で人を斬ることに、真正面から向き合う。池松×蒼井×塚本の共鳴 公開中

英題:Zan, ★★★★☆4.5

塚本晋也監督による『野火』から地続きの“反戦”へのメッセージを込めた時代劇。

真剣を打つキン、キンという鋭い音が響くオープニングからして、チャンバラ活劇とは一線を画すつくり。

『斬る、』の「斬」とは、残酷や無惨の「ざん」という気がします。

役者たちが学ぶ斬るための「殺陣」とは、殺りくのための備えとも書きます。あるいは、ひとしきりの殺し合い。

斬るとは殺すためのもの。その世界を描いています。

観ている間はしんどい部分もありましたが、これはとても響きました。

格好だけの時代劇に警鐘を鳴らしているかのよう。

江戸の世が250年にもわたって平安が続いたのは、もういい加減、血生臭かったからなのだろうな、と思いを馳せずにはいられません。そんな平和な時代がこの今、終わることを示唆しているような気さえします。


真剣が交わるとあれほどに鋭い音が響き、文字どおり必死で柄を握る手の内がギリギリと苦しみの声を上げるのです。

はた目には優雅に見えるその所作も、自分自身や近くにいる誰かを傷つけないため、刀そのものを傷つけないための必要性から生まれたのです。


とりわけ激しいカット割りのため、目と心が追いつかないシーンも。やがて迎える展開に心が追いつかないのは、池松壮亮演じる杢之進も同じ。

塚本監督は反戦映画といい、池松くんは自身のちっぽけな正義感を込めたと語ります。

蒼井優の慟哭のような叫びは、私自身ももう二度と聞きたくはありません。



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