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勝って兜の緒を締めよ、手堅い任天堂

昨年度大ブレイクしたといえば、「あつ森」こと、「あつまれ動物の森」ですね。

コロナ禍の巣ごもり需要を取り込む形になったとはいえ、このヒットは任天堂を再度飛躍させるきっかけになりました。

任天堂は元々カード、花札を取り扱っていた会社です。


私の世代としてはファミリーコンピューターをリリース(販売)したということで任天堂は一躍有名になりました。

その後、セガサターン、PS(プレステーション)の参入で、ゲーム機は群雄割拠の時代でした。

そうした中においてもしぶとく生き残り、成長し続けている任天堂、ですね。任天堂は京都の会社です。それだけに会社運営の仕方が巧みで、上手いというのが私の印象です。任天堂と同じ京都の会社としては、京セラ、日本電産、村田製作所など名だたる企業がありますね。

これらの企業も今や日本を代表する企業ですね!

さて、そんな任天堂ですが、昨年度、2021年3月期決算はどうだったのでしょうか?①全体の業績推移、②今年度以降の事業計画、③株価(市場)の反応、の順に見ていきましょう。

①全体の業績推移(収益、利益、資本(純資産)

任天堂1

まず前年同期比でみて、売上高(収益)34.4%、営業収益81.8%、当期純利益85.7%とどれも驚異的な伸びでした。この結果は第3四半期時点で予想されたことなので、サプライズな結果ではありません。

ゲームソフトウェアの売上は、リリースするまでに多額の費用が掛かりますが、リリース後にはそれほど多くの費用は発生しません(アップデートなどにお金はかかりますが)。そのため売り上げれば売り上げるほど、収益性は向上することになります。逆にいえば、ソフトウェアの売上が振るわなければ収益性は悪化し、これまで投資していた費用を回収できなくなります。

ゲームビジネスの難しさはここにありますね。

とはいえ、世界的なヒットになったあつ森効果で驚異的な利益をたたき出しました。

この効果は利益だけではありません。営業キャッシュフローは612,106百万円と2020年3月期の347,753百万円と比べて2倍近く跳ね上がっています。

つまり、実際に得た現金がとても多かったということです。

この結果として、現金及び現金同等物も932,0798百万円と2020年3月期と比べて300,000百万円(3千億円)ほど積み増しています。

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こちら、決算発表資料より引用したものです。任天堂の2021年3月期の決算がいかによかったかが分かります。

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連結の売上かの内訳を見てみると、ゲーム専用機(ソフトフェアも含まれています)がほとんどを占めることは分かるとして、売り上げの41.6%がアメリカ(米大陸)となっていることが分かります。

バイデン大統領があつ森で選挙広報したということでも話題になりましたが、アメリカの需要を取り込んだことが売り上げの飛躍の要因だったようです。また欧州も25.1%と日本国内よりも大きく海外比率は77.4%と海外で稼いでいる企業であることが分かります。

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ソフトウェアの内訳をみてみると「あつ森」だけでなく、その他のソフトウェアについても比較的顕著に販売していることが分かります。そう簡単にヒット作を生み出すことは容易ではありませんが、ある程度手堅くソフトウェアを販売していく体制がありそうです。*マリオ関係はある程度売り上げを見込めるコンテンツですね。恐るべし、です。

魅力的なゲームソフトをそろえることで、ハードの売上も見込めるという相乗効果があることもあります。ただ、ハードの売上も一巡すれば一服してくるでしょうから、今年度以降は爆発的な伸びは期待できそうにありません。

②今年度以降の事業計画

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こちら今年度の予想になります。やはり昨年度のような売り上げの伸びないという予想をしてます。2021年3月期はいわゆる「出来すぎ」な業績であったことは任天堂自体も理解していて、減収減益となる見込みです。

ある程度持続的な売り上げは期待できるでしょうが、北米エリアにおいてコロナの脅威から脱しつつあることを考えれば、売り上げはもう少し下がる、かもしれません。

とはいえ、コロナ禍においてハードの売上も伸ばし、新しい顧客を取り込んだはずなので、今後リリースするソフトウェアをどれだけ購入して持続的に楽しんでもらえるかが鍵でしょう。それにより収益と利益は上ぶれするか、下ぶれするか、が決まります。どのゲームが売れるか、ということは非常に予想が難しいですね(手堅いラインナップはもっているでしょうが)。この辺りはゲーム会社の予想の難しさ、がありますね。

③株価(市場)の反応

あつ森効果もあり任天堂の株価が上がったということは周知のことです。一方で注目すべきはある程度の波はあるものの、持続的に、少しずつ株価を伸ばしてきた、というのもまた任天堂の強み、でしょう。

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この5年間の推移をみると任天堂の底堅さ、強さが分かります。さて決算発表をうけてどのように市場は反応したでしょうか。

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任天堂の決算発表は5月6日でした。まず市場関係者は既にあつ森効果により、任天堂が大幅な増収増益であるということは予想していたでしょうから、この効果は決算発表前に既に織り込まれています。市場が注目したのは今後の業績予想でしょう。ここは減収減益の予想を出したことから一時売られていることが分かります。ただ、その後は持ち直してまた上昇気配です。

ある程度、方向性が定まった段階において株を手放す層もいれば、今後の持続的な成長も期待して株を購入している層もいるということがうかがえます。配当金得る権利も確定している投資家(2021年3月末まで保有していれば、配当を得る権利が確定される)にとっては、ある程度方向性が見えた段階において、株を売って利確をしよう、とする動きが出るのも決算発表後の動きですね。

ともあれ、決算発表の資料をみても淡々という色彩が強く、勝って兜の緒を締めよ、と考えて浮かれている様子が全くないのが同社の決算発表ですね。この辺り、エンタメ要素が強いソフトバンクグループとは一線を画す感じで面白いです。

決算発表は企業の性格が出ますね。

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