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学生からの質問に答える「なぜマニュアルを作ってくれないんですか?」VUCA時代に必要な「想像力×創造力」

会計学総論の講義の中では、業界地図を使いながら自分たちで好きな業界を選び、その中で、3社の国内上場企業を調べるワークをやっています。

ワークを行うだけでなく、会計の教科書的な内容や個別のケースの話もしながら、分析を少しずつ進めるやり方です。

基本的に分析のやり方のフレームワークは示していきますが、細かいことは指示しません。

どうやればいいのか?

良い企業とはどう判断すればいいのか?

こうしたことも自分なりに考えていくワークです。

すると学生さんたちから、

「もっと明確にやり方を教えて欲しい」というコメントが寄せられます。

私自身としてはやり方を教えているつもりですが、なかなか難しいところがあるようです。

例えば、プログラミングの授業や、PCの操作系の授業ではいわゆるハウツー的にやり方を教えているケースもあります。

これは操作方法に慣れる、ことが重要だからです。

つまり、車の運転と似ていますね。

車の運転に慣れるためには、乗ってみることが大事です。

自転車も同じですね。

こうした操作系のスキルは「やってみる」ことで脳と身体が繋がります。

不思議ですよね。

自転車に一回乗れるようになるともうずっと乗れるようになります(特別な事情や老化による身体の衰えがない限りは)。

だから、

「習うより慣れろ!」

なんですよね。

会計も似た要素があることは否定できません。

たとえば、簿記の仕訳。

割と機械的にやらせてしまうところあります。

とりあえずやってみて、答え合わせしてみな。

そのうち慣れてくるから、という感じです。

ですが、このやり方は実は限界があります。

自分たちがやっていることが、何に結びついているのか?

それを全く考えずにワークをやってしまう。

つまり勉強のための勉強をしてしまうことになります。

勉強すること自体が目的化しているということです。

勉強は何のためにするのでしょうか?

「人生を豊かに生きるため」です。

多くのことを学ぶことでその知識・技術が貴方たちにとって豊かに生きるための手助けになるはずです。

豊かさは二つあります。

一つはお金、もう一つは心の豊かさ、です。どちらとも大事です。

知識・技能を通じてお金を稼げるようにならなければ(言い換えれば投資した分をキャッシュに変えることが出来なければ)、全くのムダ金に終わってしまいます。

これは資格試験でも同じです。

資格試験をとって、自分としての価値は向上させる、市場においてより役立つ!と思ってもらえるような証明書を獲得する。

そのために資格はあります。

たとえば、「日商簿記2級程度の知識を求む」

会計事務所で求人に書かれていることは結構あります。

となると、やはり日商簿記2級を取っておかないと!

となるわけです。

また税理士試験における、簿記論、財務諸表論も同じですね。税理士事務所の要件である程度専門性を求める場合は、どちらかを合格している事、などを課しているところもあります(大手はそうですね)。

また給料の面でも科目合格者とそうでない人に差をつけるケースもあります。

このようにその職業の入り口に立つために資格は手段として必要です。

さて、入り口はいいのですが、では中に入ってからどのように働くのか?

これもまた大事です。といますか、この方が大事です。

チケットを買って、大会にエントリーしたけどそこで待ち受けているのは、実務の壁です。

ここではマニュアルはありません。マニュアルがあるケースもあるかもしれませんが、「入力だけしておいてください」という仕事はデジタル化で全てなくなるか、一部要件をチェックしておいてもらえればよいです、となりと減っていく可能性が高いです。

つまり、機械入力を流し込む以外の人材以外はいらなくなります。極端にいえば、数人でよい、となるでしょう。

となると必然的に、マニュアルのない状態、限られた情報の中で判断しなければならなくなります。

でこの判断、

Google先生(もしくは質問掲示板など)で教えてもらおう!という人もいるかもしれませんが、そこには書いていないことが多くあります。

また仕事は守秘義務がありますからそうしたところに書き込むのは大変危険です!

この状況の中で、社会に入った学生の中には、突然の変化に戸惑い、辞めたくなる人も多くなるのではないか、ということを懸念しています。

というのも大学は何とか卒業して欲しい、就職して欲しいといって社会に送り出します。

企業側も人手不足だから取り合えず人欲しいといって雇ってくれます。

なので、あまり良く考えずに人を取ってしまう傾向が強くなるでしょう。その結果起きるのは入社してからのギャップです。

親切に教えてくれない。自分で考えろと言われる・・・・大学から社会に入った時のギャップに戸惑う人が多くなるのではないか、と考えています。

私は、皆さんが社会に入ってからのこのギャップに苦しまずに豊かに生きれる育てたいと思っています。

VUCAという言葉ご存知でしょうか?

VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われています。

不確実性の時代。

これは今に限ったことではありません。昔からそうだったともいえます。

有名な書、ガルブレイスの不確実性の時代、ですね。

要するに社会は不安定、不確実であり、安定などない、といえます。そうした中でも豊かに生きるためにはどうしたらよいのか?

そのカギは想像力×創造力にあると感じています。

こちらの本もおススメです。もっとアートに芸術に触れて感性、想像力、創造力を培わないと、と思う日々です。

私の講義で全てフォローできるわけはありません。私が出来るのは、皆さんに「こうした考え方、マインドがあるよ!」と伝えるだけです。

そして私の講義の中という限定された時間と課題で、想像力×創造力を活かすような課題や講義を心がける、

ということです。

「想像力×創造力」

物事を想像をし、新しいものを創る力である、と私なりに定義しています。

つまり、会計という情報を通じて企業、事業の状態を想像し(分かりやすく言えば推測し)、そして今後の事業展開、将来像などを自分なりに創造してみる。

それだけの材料が企業の有価証券報告書、IR情報にはあります。

今、楽な思いをしてもらうことは簡単です。

分かりやすい、単純化された綺麗なお話、手順が分かりやすい(考えなくてもできる)課題をして、社会に入ってから苦しむ、というよりは、今、想像力×創造力が試される、鍛えられる課題に取り組むことが何よりも大事と思っています。

先行苦楽という言葉があります。

先に苦労をした方が後に楽が出来るということです。

最初は苦しいかもしれません。

課題をこなしているうちにある時期になると楽になってくるはずです。

楽になってくれば、おのずと楽しくなってきます。もっとやってみよう!という気持ちになります。

そうなると思うあなたは学習を自律的に行っている状態です。

もう誰の手を借りる必要はありません。あなた自身でドンドン学びを進めていけばいいのです。

もし迷ったり、間違えた道に行ってしまったと思ったら、引き返せばよいだけです。やり直せばよいだけです。


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